矢野経済研究所
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2020年度のPOCT市場は前年度比1.7%増の1,107億円

~一般的な検査全般は低調も、新型コロナウイルス関連検査で押し上げの構図~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内POCT(point of care testing:臨床現場即時検査)市場を調査し、市場規模、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

国内POCT市場規模推移

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1.市場概況

2020年度の国内POCT市場規模(10分野計)は、事業者売上高ベースで前年度比1.7%増の1,107億円となった。
2020年度は、インフルエンザ迅速検査キットをはじめとした感染症関連の検査キット市場が前年度比で大幅に縮小した。一方で、イムノクロマト法の新型コロナウイルス抗原検査キットが、複数企業から発売され売上を大きく伸ばしている。また、新型コロナウイルス検出を目的とした小型の遺伝子検査装置・試薬の需要も顕在化し、新たに遺伝子POCTというカテゴリーを形成する状況となった。
2020年度の市場は従来から行われている一般的なPOCT市場は全般的に低調に推移するも、新型コロナウイルス関連の検査が突出して、全体市場を押し上げる結果となった。

2.注目トピック

新型コロナウイルス抗原検査キット市場への参入相次ぐ

新型コロナウイルス抗原検査キットは2020年5月に初めて登場、次いで8月、さらに10月に発売された。2020年度は同先行3製品が主体となり市場を分けあう形となった。
2021年以降は、同年8月までに新たに10社以上が参入、インフルエンザ検査キットなどの展開企業はほぼ全社が新型コロナウイルス抗原検査キットの製造販売を行う状況となっている。同キットは簡便・迅速に結果判定が出ることを背景に、スクリーニング的な要素を含め利用頻度は高まっている。ただし最近では、参入企業間の過当競争も認められ、販売単価は下落傾向にあると考えられる。

3.将来展望

POCT市場は引き続き新型コロナウイルス関連の検査が牽引する構図とみる。

イムノクロマト法の新型コロナウイルス抗原検査キットは、PCR検査などと比べ一般に感度不足が指摘されている。すでに一部企業では高感度検出製品を上市しており今後の動向が注目される。また、インフルエンザとの同時検出などにも需要があるとされ、高付加価値製品で差別化を図る傾向が強まるものと予測する。
また、遺伝子検査分野でも、新型コロナウイルス検出を目的とした小型POCT検査試薬・機器市場が誕生している。今後、遺伝子POCT製品は一般開業医などにも浸透する可能性があり、臨床検査薬・機器業界の成長ドライバーに位置づけられるものと考える。

調査要綱

1.調査期間: 2021年6月~8月
2.調査対象: 国内の臨床検査薬・機器展開企業(日本企業および海外企業日本法人)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに電話・eメールによるヒアリング調査
<POCT市場とは>
POCT(point of care testing:臨床現場即時検査)とは、医療機関等で行う検体検査(血液、尿、便、組織など)のうち、病院の中央検査室や外部の検査センターではなく、診療・看護などの医療現場のスタッフが患者の傍らで迅速に実施する検査である。

本調査におけるPOCT市場規模とは、①グルコース分析装置、②HbA1c分析装置、③生化学分析装置、④血液ガス分析装置、⑤血球計数装置、⑥血液凝固測定装置、⑦イムノクロマト法臨床検査キット、⑧免疫測定装置、⑨尿試験紙、⑩遺伝子検査装置などの10分野の臨床検査薬・機器を対象として、事業者売上高ベースで算出した。
今回より新たに⑩遺伝子検査装置を追加した。また、グルコース分析装置には血糖自己測定器製品を含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
①グルコース分析装置、②HbA1c分析装置、③生化学分析装置、④血液ガス分析装置、⑤血球計数装置、⑥血液凝固測定装置、⑦イムノクロマト法臨床検査キット、⑧免疫測定装置、⑨尿試験紙、⑩遺伝子検査装置 などの臨床検査薬・機器

出典資料について

資料名2021年版 POCT市場の展望
発刊日2021年08月30日
体裁A4 194ページ
定価143,000円 (本体価格 130,000円)

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