バンクシーって誰?
バンクシーは世界的なアーティストでありながら、その正体を明らかにしていないことでも有名だ。ストリートアーティストとして活動するバンクシーは、身元を公開せず、神出鬼没に制作活動を行うというスタイルを貫いている。そのため作品は落書きとみなされて消されてしまうこともあるが、彼のSNSやWebサイト上で制作過程の動画などが公開され、「本物のバンクシーの作品」と判明すると瞬く間に世界中で話題になり、観光名所となったり、悪意ある者に盗まれたり汚されたりもする。新作が発見されるたびに大騒ぎとなる、まさに正体不明の「芸術テロリスト」だ。
彼の作品は世界中の芸術愛好家に認められ、2021年にはコロナ禍の医療従事者に焦点を当てた作品《Game Changer》が約25億円で落札されるなど、彼の作品は高い価値がつけられてる。バンクシーの正体について取り巻く謎は彼の評価の大きな要因となっているのだろう。
今までバンクシーの素性についてさまざまな憶測をよんできたが、アーティストの特定に至ったことはない。正確な出身地や年齢、性別までも明らかにされておらず、バンクシーは実は複数人いるのではないかという仮説まである。バンクシーとはいったい誰なのか。世界中で議論されている大きな謎である。
これまで囁かれた、バンクシーの正体に関する噂を見ていこう。
噂1(ロバート・デル・ナジャ説)
画像引用:https://www.dailymail.co.uk/
バンクシーはイギリス出身の美術家、ミュージシャン、そして音楽ユニット、マッシヴ・アタック(Massive Attack)のメンバーである3D(Robert Del Naja)なのではないかという説がある。2017年にストリートアートの前でスプレー缶とステンシルを持った男性が写真に撮られ、後にバンクシーのインスタグラムに全く同じストリートアートが投稿されたことから、写真の男性がこのアートの作者であり、バンクシーなのではないかと推測された。さらにその男性の背格好が、かねてからバンクシーの正体なのではないかと噂されていたロバート・デル・ナジャに似ていたことから、バンクシーはロバート・デル・ナジャであるという説が濃厚であると囁かれている。
バンクシーのインスタグラムより
さらに彼の所属する音楽ユニット・マッシヴアタックのツアー開催とバンクシーの作品発表の場所や期間が類似していたり、グラフィティアーティストのGoldieが、ポッドキャストでバンクシーのことをうっかり「ロブ(ロバートの愛称)」と呼んでしまったことも、この説の裏付けとして有名なエピソードだ。
ロバート・デル・ナジャ本人はバンクシーであることを否定しているが、バンクシー本人と親しい友人であるとコメントしている。
噂2(ロビン・ガニンガム説)
バンクシーの正体はイギリス・ブリストルを拠点に活動するイラストレーターのロビン・ガニンガムなのではないかという説がある。ロンドン大学クイーン・メアリーの研究者たちによる「ジオグラフィック・プロファイリング」という捜査によると、ロンドンに点在するバンクシーの作品と、ロビン・ガニンガムの行動範囲が重なったという結果が出ている。また、バンクシーのものと思われる作品を描いていた怪しい人物を追跡した結果、ロビン・ガニンガムに似た人物だったという話もある。
噂3(ジェイミー・ヒューレット説)
バンクシーはイギリス出身のイラストレーターであるジェイミー・ヒューレットであるという説がある。 ジェイミー・ヒューレットはロックバンド・ゴリラズの創設者であり、バンドのキャラクターデザインも手がける。 バンクシーが関係している会社の多くにジェイミー・ヒューレットが関わっていることを証明する書類もあるという。また、バンクシーは過去にイギリスのロックバンド・ブラーのジャケットで使用されている絵をたびたび制作しており、このバンドのメンバーがゴリラズに関わっている。商業的な政策を行わないバンクシーにとって、バンドのジャケットを手がけることは珍しいので、何か特別な関係があるのではないかと噂されているのだ。しかし、バンクシーの広報担当者はこれらの説を否定している。
バンクシーの映像や写真
以上のように、バンクシーの正体については様々な噂が囁かれている。さらに、バンクシーとされる人物の映像や写真も様々存在する。
2003年にイギリスのメディア「ITV London Tonight」で放映されたインタビューでは、バンクシーとされる男性が目元だけを出した状態で話をしている映像が残されている。
バンクシーの元エージェントでありフォトグラファーのスティーブ・ラザリディスが出版したバンクシーの写真集「Banksy Captured」では、バンクシーの顔写真が掲載されている。本中の写真では顔部分が修正されて見えないようになっているが、過去にスティーブ・ラザリディスが出版した写真集にそのオリジナル写真が掲載されており、そこにはバンクシーとされる男性の目元がしっかりと写っている。
また、バンクシーの正体を知り、彼のポートレート写真を撮影しているスコットランド生まれの写真家のジェームズ・パフの作品には、バンクシーとされる人物が覆面姿で堂々と写真に写っている。彼は2000年代前半にロンドンでバンクシーと出会い、スナップ写真的な作品から正式なポートレートまで撮り続けていた。ここで言う正式なポートレートとはバンクシー唯一の公式作品集「Wall and Piece」に作家近影として登場した「Canvas Session」と英国国立肖像画美術館にもバンクシーのポートレートとして認められた「Mask Session Tag」等を指す。
バンクシーの正体が誰なのか。真実は、バンクシーが自分の意思で表舞台に出ない限り、特定される可能性は低い。バンクシーがストリートアーティストである以上、路上に無断でグラフィティアートを残したりする行為は犯罪になり得るので、残念ながら正体を明かすことは難しいのだ。
あるひとは「議論を生むことはアートである」と言った。バンクシーの正体について世界中で議論がされている、このこと自体も彼が生み出したアートなのだろう。
バンクシーって誰?展
画像引用:https://eplus.jp/
謎に包まれたバンクシーの正体に迫る国内2つ目の大型展覧会「バンクシーって誰?展」が、東京都・天王洲の寺田倉庫G1ビルで20201年8月21日~12月5日の期間に開催される。この記事を読んでバンクシーの謎が気になった方、バンクシーの作品を見たくなった方はぜひ足を運び、ぜひご自身の目で確かめて欲しい。
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参考
https://www.therichest.com/rich-powerful/banksy-identity/
https://paris-diary.com/banksy-most-wanted/
https://dotolove.com/banksy-shotai/
https://media.thisisgallery.com/20189285
文:ANDART編集部