2020年度のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場規模は前年度比99.2%の6,577億円を予測
~新型コロナウイルスの影響により、緊急性の低い手術延期や外来受診控え、健康診断の先送りなどが起きており、一部領域に関してはプラスに働いた製品群もあったが大半の領域ではマイナスの見通し~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場について調査を実施し、製品別市場規模推移、今後の成長要因、市場特性などを明らかにした。
メディカルバイオニクス(人工臓器)市場規模推移・予測
1.市場概況
メディカルバイオニクス(人工臓器)製品とは、病院、クリニック、検査センター等で使用される体内埋込み型及び関連装置の医療機器(デバイス)である。2020年4月の診療報酬改定では、技術料に当たる本体部分については0.55%増、薬価は市場拡大再算定の見直し等を含め0.99%減、医療材料価格が0.02%減となり、その上で、診療報酬本体部分の引き上げ0.55%のうち0.08%を「救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」に充て、残りの0.47%を各科に配分し、医科が0.53%、歯科が0.59%、調剤が0.16%となった。また、今回の改定は急性期一般入院基本料の要件の厳格化や、地域包括ケア病棟入院料の届け出の制限などを図る等、前回診療報酬改定を踏襲する内容となっている。
体外循環を除いた人工臓器の市場では、ここ数年、より低侵襲な手術手技の発展、新たなデバイスの上市は市場の趨勢と言え、適用基準はあるものの経皮的手術用デバイスが臨床で採用されている。こうした流れが、Open surgery(直視下手術)用デバイスに影響を与えている症例や製品群は増えている。
また、骨粗鬆症やリウマチなどの慢性疾患においては、治療薬投与患者が増加しており、一部ではあるが手術件数の変動要因になっている。このような状況の中で、2019年度のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場規模は、前年度比1.9%増の6,630億33百万円となった。
2020年度は、年初から新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、緊急性の低い手術の延期をはじめ、外来受診控えや健診の未受診などが発生している。コロナ禍は、医療機器やデバイス市場に大きな影響を与えており、一部領域に関してはプラスに働いた製品群もあったが大半の領域ではマイナスになるなど厳しい市場環境となっている。
2.注目トピック
胸部・心臓血管外科・循環器系19製品の動向
胸部・心臓血管外科・循環器系19製品の2019年度市場規模は、前年度比0.9%減の1,966億12百万円となった。TAVI・TAVR(経カテーテル大動脈弁植え込み術)症例数が高い成長率を維持しているものの、人工弁、人工血管等がマイナス成長になっている。
2020年度は新型コロナウイルスによる待機症例を中心とした手術延期や、企業の病院訪問規制等による営業活動が制限されたことで、TAVI・TAVRはプラスとなるものの伸び率は下がり、その他製品の多くがマイナス見込みとなる中で、2020年度市場規模は前年度比2.6%減の1,915億24百万円を予測する。
3.将来展望
メディカルバイオニクス(人工臓器)の動向を診療科目別にみると、胸部・血管外科分野では人工弁がTAVI・TAVRや経皮的僧帽弁接合不全修復術の症例数増、人工血管は腹部・末梢血管領域でのDCB(薬剤コーテッドバルーン)症例増の影響があった。弊社区分では最大規模となる整形外科領域では、膝や股関節などの人工関節(THAやTKA)や、REVERSE型の症例が増加している人工肩関節、変形性膝関節におけるHTOプレートシステムや脊椎固定システムなどの市場拡大が見込まれ、2019年度で最も高い成長率となった。人工腎臓関連では、慢性透析患者数の伸び率は減少しているものの、HDF(血液濾過透析)の続伸もあって前年度比プラス成長となった。
2020年度のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場は、新型コロナウイルスの影響で特需的にプラスとなった製品もあったものの、多くの領域ではマイナスが見込まれ、前年度比0.8%減の6,577億15百万円になると予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2020年4月~2021年1月 2.調査対象: 国内メーカー及び輸入製品総発売元 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに電話取材調査併用 |
<メディカルバイオニクス(人工臓器)市場とは> 本調査におけるメディカルバイオニクス(人工臓器)市場とは、病院やクリニック、検査センター等で使用される体内植込み型及び関連装置の医療機器(デバイス)を指し、インプラント材や体外循環関連装置・製品(主要34項目、68製品)によって構成される。 主に、循環器分野では人工心肺や人工血管、ペースメーカー、人工弁等、整形外科分野では人工関節や人工骨、人工靭帯、各種プレート、その他分野では人工腎臓(透析)、皮膚欠損用創傷被覆材、人工肛門・膀胱(ストーマ)、各種ステント製品等が該当する。 |
出典資料について
資料名 | 2020年版 メディカルバイオニクス(人工臓器)市場の中期予測と参入企業の徹底分析 |
発刊日 | 2021年01月20日 |
体裁 | A4 796ページ |
定価 | 120,000円(税別) |
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