(本記事は、岡田 康子氏の著書『自分で決める、自分で選ぶ―これからのキャリアデザイン―』=東峰書房、2016年1月13日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
アイデアを「コンセプト」に育てる
●その商品を買う(使う)お客様を知る
さて、ここからは、アイデアを新商品や新事業として提案するためのスキルを解説していきます。稼げる社員、イノベーションを起こせる社員を目指していきましょう。
まず大切なのは、思いついたアイデアをそのままにせず、コンセプトにまとめていく習慣を付けることです。
良いアイデアを出しても、それが「思いつき」のレベルで終わっているうちは、結局のところ何も考えていないのと同じです。
ただし、思い付きをビジネスコンセプトまでにつくり上げるのはなかなか難しいことですので、アイデアが浮かんだら、まずはその利用シーンを考えてみるところから始めてみましょう。
あなたが思いついたその商品やサービスは、主にどのような人が買い、使うのでしょうか?
例えば、こんな問いを立てて、その商品を買う人、使う人をイメージしていきます。
・その商品を使う(買う)人の年齢は何歳か?どんな生活環境で、どんな仕事をしているのか?(その人の属性など基本的な情報)
・その人がよく口にする言葉は何か?
・その人の好きなものは何か?
・その人はどんなふうに一日を過ごしているか?
・その人が解決したいと思っている課題やチャレンジは何か?
・その人は、さまざまな情報(メディア)とどう接しているか?
・その人が、製品やサービスを購入する理由
・目的は何か?
・その人は、製品やサービスの購入に、どんな関与の仕方をしているか?
BtoC(business to consumer)ビジネス――企業が消費者向けに最終製品をつくるビジネス――では、いったいどんな人がその商品を買ってくれるのかわからないので、この時点で代表的なお客様をイメージしてみるわけです。
とはいえ、何か事例がないとわかりにくいでしょうから、ここでは、実際に販売されている商品、パナソニック社の『ドアモニ』を例に説明していきます。
一緒に企画を考えているつもりで読んでみてください。
●想定顧客をセグメント(グループ)化する
パナソニック社の『ドアモニ』というのは、配線工事が要らないワイヤレス・ドアモニターです。ユーザーは来訪者があった場合に、室内モニターのボタンを押すと、玄関ドアの前の様子を確認することができます。
最大の特徴は、カメラを玄関のドアに掛けるだけで簡単に設置可能である点です。そのため、追加的な造作が難しい賃貸住宅でも使いやすいのです。
では、この商品は誰が欲しがるのでしょうか。
想定している顧客は、パナソニック社の商品サイトを見ると窺い知ることができます。
これを参考にして、次の五つの顧客セグメント(グループ)を想定してみました(次頁参照)。
(1)「インターフォンのない賃貸住宅に住む女性単身世帯」
(2)「子供だけで留守番させることのある共働き世帯」
(3)「高齢者世帯」
(4)「防犯対策をしたい専業主婦のいる世帯」
(5)「一人暮らしを始めた娘を心配する親」
ここから、具体的にイメージできる人物像をつくり上げることで、よりリアルにその人の立場に立って好みや購買行動を考えることができるわけです。
●購入単価を計る
次に、各セグメントの購入単価を考えてみます。
この商品に一番多くのお金を払いそうなのは、「一人暮らしを始めた娘を心配する親」であり、逆に、一番お金を払わなさそうなのが「防犯対策をしたい専業主婦のいる世帯」としました。
その他は、その中間的な金額をかける、という仮説です。
購入単価については、わかる範囲で「○○○円」と具体的に金額を入れてみると、よりハッキリしてきます。
もし、あなたの身の周りにこのセグメントに属する人がいて、この商品にいくらまで出す気があるかヒアリングできるのであれば、非常にリアリティある数字を把握することができます。
●ボリューム(市場規模)を計る
続いて、各セグメントのボリュームがどの程度あるのかを検討します。
明確な数がわからない場合には、ここに挙げてあるセグメント同士を比較して、相対的に多いのか少ないかを比較するだけでも十分です。
単価×ボリュームが市場規模ですから、単価が伸びるのか否か、セグメントのボリュームが増加傾向にあるのか否か、ということを加味して、市場規模の動向を検討します。
●どんな商品がライバルになるのかを知る
各顧客セグメントが、何と比較して購買を検討するのかを見ていきます。
これを行うことで、どの顧客セグメントが自社にとって魅力的か、攻めやすいかが、おぼろげながらも見えてきます。
●さらに細かくニーズ分析する
次頁の図の縦軸は、この商品が満たすであろうニーズを網羅的に書き出したものです。
そして、横軸では、そのニーズが、それぞれの顧客セグメントにとって《どのぐらい重要視されるものであるか》という仮説です。(「とても重視する」が◎、「重視する」が○、「あまり重視しない」が△、「まったく重視しない」が×)
より詳細にニーズを分析していくにあたって、五つ全ての顧客セグメントに対して解説していくのは煩雑になりますから、ここからは便宜的に(2)の「子供だけで留守番させることのある共働き世帯」にしぼって話を進めます。
「子供だけで留守番させることのある共働き世帯」の心配事は、子供の留守番中の時間帯でしょう。親御さんは、その間に誰が訪問しているのかを、できればリアルタイムで把握したいという思いが強いと思われます。
これを踏まえて、次は商品の差異化を検討する「アトリビュート分析」に進みます。
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