自分で決める、自分で選ぶ―これからのキャリアデザイン―
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(本記事は、岡田 康子氏の著書『自分で決める、自分で選ぶ―これからのキャリアデザイン―』=東峰書房、2016年1月13日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

あなたは生涯あと何回海外旅行に行けますか?

●人生の残り時間は意外と少ない

社会に出て二〇年もたってくるといろいろなことができるようになり、視界も少し開けてきます。

そうすると、やるべきことや、やりたいことも増えてくることでしょう。責任も重くなってきます。「いろいろなことをやってみたい。やらなければ……」と思っても、残念なことに人生も後半になってくると時間がありません。

このことに早く気がついて自分自身の人生を生きなければ、後はあっという間に過ぎてしまいます。

四〇歳くらいまでは成長していく自分があり、やりたいことをできる体力がある自分が普通に感じられますが、だんだんと体が思うように動かなくなり、体力の回復は遅くなります。また覚える力、新しいことを体得する力は衰えていきます。

ですから、本当に自分がやりたいことを選ぶ、やらなくてもいいことをやらずに済むような工夫が必要になってきます。人の為に尽くしてばかりでは自分の人生を生きることはできません。

後になって「子供のために◯◯ができなかった」とか「会社のために生きてきた」と言っても、「だから?」とそっけなく言われてしまうことでしょう。また、「あなたのために我慢してきた……」という気持ちが、相手には重荷になってしまう可能性だってあります。

自分が自分のために後悔しない生き方をするのが、人生の後半戦です。いつかできると思っていることでも、よく考えてみると時間は本当にないものです。

例えば、海外旅行で考えてみましょう。

私は余裕ができたら世界中のあちこちに行きたいと思っていますが、いつか時間ができたらと思いつつ、仕事や日常の雑務に忙殺されて、気がついたら六〇歳になってしまいました。あと何年元気で歩き回れるのだろうか、あと何回行けるのだろうかと思ってしまいます。

今の時代であっても、プライベートな海外旅行はそう頻繁に行けるものではありません。

年に一回も行ければ幸運な方でしょう。私は今、六一歳ですが、元気で楽しめるのはあと一〇回程度ではないかと思います。そう考えると「いつか、暇になったら」なんて言っていられません。

そればかりではなく、仮にあと二〇年生きるとして、それを日数にすると七三〇〇日です。

そうたくさんはありません。それも二〇年生きるとして、です。人によって違いはありますが、一般的に六〇歳を過ぎると「いつ死んでもおかしくない」ともいえます。「あれができなくて悔しかった」と言わずに往生できるようにしたいものですね。

そう考えると、自分がこの人生で何を得たいのか?あとどのくらいの時間があるのか?を今一度じっくり考える必要がありそうです。

だまされたと思って、ここで一度、次の質問に答えて、ご自分の年齢で計算してみてください。まだ若い人であっても考え方が変わるはずです。

・あなたは何歳まで生きますか?
・残された年数は?
・残された日にちは(年数×三六五日)?
・あなたが好きなことは何ですか?
・それはあと何回くらいできますか?
・他にやりたいことはありますか?
・それはあと何回くらいできますか?
・あなたの愛する人、大切な人は誰ですか?
・その人と共に生きる時間はどれくらいありますか?
・その人とあと何回食事ができますか?

●キャリア・ビジョンは「旅行の計画」と考えるとわかりやすい

キャリア・ビジョンを先ほどの海外旅行にたとえてみましょう。限られた時間の中で、闇雲にどこへでも行くというわけにはいきません。自然が好きな人、文化芸術が好きな人、ショッピングが好きな人――。それぞれに自分の気持ちが動く、感動するイメージを持っています。

キャリア・ビジョンをイメージするのも、行きたいところをイメージするのと同じようなものです。そこに立ったときの自分の感覚、自分の気持ち、周囲の景色、人々をイメージしてみるのです。

旅行では、ふつう、仕事との調整で日程を決め、予算を決め、目的地を決め、現地での楽しみ方を決め、交通手段などを決めますよね。ハワイに行きたければハワイ用の、南極に行きたければ南極用の計画と準備をします。

また、「どうしても見ておきたい場所が世界中にたくさんある」という人は、そのために計画的にお金の工面や仕事の調整をして、その目標をどんどん実現しようとするはずです。

人生のビジョンについても、旅行準備のようなレベルで具体的にイメージしたときに、実現したい欲求が高まってくるでしょう。そして実現には困難も伴うことがわかってきます。それを克服するためにはどうすればよいか?というアイデアが育ち、背中を押されるように一歩行動に踏み出すことができます。

自分で決める、自分で選ぶ―これからのキャリアデザイン―
(画像=『自分で決める、自分で選ぶ―これからのキャリアデザイン―』より)

〇〇になって何をしたいのですか?

●単なる地位や職業や数字を自分の目標としない

ところで、キャリア・ビジョンをイメージする際に、勘違いしてはいけない大事なことがあります。

それは、「単なる地位や職業や数字を自分の目標としない」ということです。

・あなたは何のためにその立場(仕事・職業)になりたいのですか?
・そうなってから自分は何をしたいのですか?
・自分はどうありたいのですか?

こういったことを明確にしていくのが本当のビジョンです。

わかりやすい例を出すと、プロスポーツ選手の中には、「プロになる」「○○というチームに入る」という目標が叶ったことで満足してしまい、高い素質を認められながらも活躍できずに終わる選手が多いそうです。

自分がどうなりたいかによって、その後の自分の行動が違ってくるのですから、“そうなってからの明確なビジョン”がない人は、キャリアの途中で行き詰ってしまうのも当然です。

逆に、自分がどんな環境にあろうと、自分が理想とするプレー(自分がどうなりたいか)に近づくための努力を欠かさない人もいます。

イチロー選手などはその典型でしょう。彼は、どのチームに入ろうが、どこの国でプレーしようが、それで満足したり、やる気がなくなったりすることはなく、ただ自分が理想とする野球を追求しています。

身近な例として「カウンセラー」のケースをお話ししましょう。

当社は電話相談を一つの事業としていますので、たくさんのカウンセラーの方に出会い、働いていただきました。カウンセラーという職業に就く方は、比較的このビジョンが明確な方が多いと思います。

一口に「カウンセラー」といってもいろいろな領域がありますが、「誰かの役に立ちたい」という思いは共通していると思います。例えば、「子育てをするお母さんの気持ちを軽くしてあげたい」、あるいは、「ハラスメントで苦しむ人の問題解決に役立ちたい」といったことです。

ですから、見方を変えれば、それはカウンセラーという形でなくてもいいのかもしれません。悩みを抱える人への予防的関わりとして、ハラスメント相談のカウンセラーとして入社した人が、ハラスメント防止の講師をすることも、大枠では自分のビジョンには沿っています。

むしろ、その方が自由に行動することができるし、社会の要請に合わせて柔軟に生きていくことができます。

とにかく「部長になりたい」とか「役員になりたい」という人もいますが、それはビジョンではなく、何かを実現するための手段にすぎません。そのことを忘れてしまったとき、役職にこだわり、メンツにこだわって無駄な軋轢を生んでしまうことがあります。

本来、役職とは“何かを実行するために組織から与えられた仮のパワー”に過ぎないことを忘れないようにしたいものです。

女性に「管理職にならないか?」と打診しても断る人が多いのも、男性は地位をインセンティブにすることができても、女性は地位だけに魅力を感じないからです。女性の場合は、こうした役職を得ること自体の意味をきちんと理解しないと、管理職にはなりたがらないのではないかと思います。

自分で決める、自分で選ぶ―これからのキャリアデザイン―
(画像=『自分で決める、自分で選ぶ―これからのキャリアデザイン―』より)
自分で決める、自分で選ぶ―これからのキャリアデザイン―
岡田 康子
1954年生まれ。中央大学文学部卒業後、社会福祉法人や民間企業での勤務を経て、1988年企業の新事業コンサルティングを行う株式会社総合コンサルティングオアシスを設立。1990年東京中小企業投資育成株式会社から投資を受けて働く女性を支援する株式会社クオレ・シー・キューブを設立するなど自ら事業推進の経験を持つ。また1988年から社内起業研究会を主催し新事業やベンチャーの研究を行う。2001年にパワーハラスメントという言葉を生み出し、その後一貫してハラスメント防止対策に取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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『自分で決める、自分で選ぶ―これからのキャリアデザイン―』シリーズ
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