今すぐ使える「伝える技術」
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(本記事は、及川 幸久氏の著書『伝え方の魔術 集める・見抜く・表現する』=かんき出版、2021年2月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

話すときも、書くときも、短いほど伝わる

話し言葉でも書き言葉でも、接続詞でつないで延々と長い文章を使う人は多く見かけます。この長い文章を短くするだけでも、聞き手にグッと伝わる内容に変わります。

たとえば、次の一文を読んで、皆さんはどう思われるでしょうか。

「最近マスコミの報道で、長い文章を理解できないという人が増えているといわれていますが、その原因は日本語力の低下であったり、SNSばかりでまともな文章を自分で書く機会がなくなってしまったことにあるので、長い文章ではなく短い文章で伝えるノウハウを学ぶ必要があるでしょう」

文字数は131字もあります。

そして、たったひとつの文章の中に、

① 長い文章を理解できない人が増えたというマスコミ報道
② そうなった原因
③ まともな文章を書く機会がなくなったこと
④ 短い文章にするノウハウの必要性

という4つのトピックが含まれています。

この文章は、書き言葉としても話し言葉としても、わかりにくいです。

わかりやすくするには、ひとつの文章を「1トピックにする」ことです。

先ほどの文章なら、

「最近マスコミでは長い文章を理解できない人が増えているといわれています」
「その原因は日本語力の低下とSNSの影響です」
「さらには、まともな文章を書く機会がなくなったことです」
「そこで、短い文章で伝えるノウハウを学ぶ必要があるでしょう」

これなら、一番長い文章でも、文字数は34字です。

ポイントは、一文を40字以内に収めること

短い言葉なので、その分、情報量は少なくなります。

しかし肝心なのは「相手の記憶に残ること」です。10分間話を聞いても、実際に覚えていることは片手で数えられる程度でしょう。話し手が価値のあることを喋っているつもりでも、聞き手の心に届いていなければ意味がありません。

第6章で解説しているスライドや動画と同様、情報をダラダラ伝えるよりも、インパクトのある言葉を数少なく使ったほうがはるかに効果があります。

曖昧な言葉ではなく、短くてインパクトのある言葉を

日本人はよく曖昧な表現が多いといわれます。これは私が国際政治コメンテーターとして日米のメディアに出演したとき、実際に感じることでもあります。

以前、日本のあるネットニュース番組に出演したとき、司会者からアメリカ大統領選挙について次の質問をされました。

「アメリカの大統領選挙ですが、民主党の候補は●●で、共和党候補のトランプ大統領はこんな感じで、最終的にどうなりそうか、そのあたりについてどう思われますか?」

私は思わず「すみません。そのあたりって、どのあたりのことか、ご質問の意味がわかりません」と言ってしまいました。

一方、アメリカのメディアに出演したときは、逆に私の曖昧な答えが突っ込まれました。

2016年のアメリカ大統領選挙についての、アメリカ人の司会者の質問は、「トランプ候補に対して、日本人はどんな見方をしていますか?」というものでした。

私の答えは、「日本では、トランプ政権になったら日米関係は悪くなるとか、むしろ良くなるとか、いろいろな見方がある」というものでした。

この発言をした瞬間、司会者が苛立った感じがわかりました。そこで私はとっさに「トランプ候補は日本にとってBombshell(爆弾)です」と答えました。すると、司会者が興奮し、話が大いに盛り上がりました。

「Bombshell」という言葉は、アメリカのメディアで「衝撃的なニュース」という意味で使われます。

このインパクトがある言葉は、私の答えの「結論」でした。まず結論を一言で伝え、聞き手のハートを揺さぶる。そのうえで、トランプは日本にとってどんな爆弾なのかを話すようにしたのです。

この経験から私が学んだのは、「最初に強い言葉で結論を言う」ことでした。

このケースでは「強い言葉」とは「Bombshell(爆弾)」ですので、文字どおり強いのですが、必ずしも「強さ」「激しさ」「インパクト」のある言葉とは限りません。

たとえば、社内で新企画のプレゼンをしているとします。

話し手: 業績が行き詰まった我が社に必要なものは何でしょうか?それはレモンです。
聞き手:???
話し手: 「運命があなたにレモンを与えたなら、それでレモネードをつくりなさい」。これは自己啓発の大家であるデール・カーネギーの名言です。個人の人生に使われる言葉ですが、我が社にも当てはまります。

ここでの「強い言葉」であり「結論」は、「レモン」です。

強い言葉とは、別の言い方をすると、「意外性のある言葉」「サプライズ」です。「サプライズ」によって、聞く気のない人たちが耳を傾けます。

プレゼンやスピーチをするとき、「今日言いたいことを1語で表すとしたら何か」を考える習慣をつけましょう。これは想像力が求められます。想像力は、訓練によって身につけることができます。

その訓練とはシンプルです。「この話の結論を象徴するものは何か」を常に考えることです。

伝え方の魔術 集める・見抜く・表現する
及川 幸久
YouTubeチャンネル登録者数約45万人、総再生回数1億2000万回超(いずれも2021年1月20日時点)のカリスマ国際情勢YouTuber。ほぼ毎日、日本の大手マスコミが報道しない国際政治経済の最新情報を配信しており、小学生から80代まで幅広い人気を誇る。
1960年、神奈川県出身。上智大学文学部卒業、国際基督教大学大学院行政学研究科修了。その後、メリルリンチ社、インベスコ・アセット・マネジメントといった大手金融機関に勤務した後、幸福の科学に出家、宗教家となる。
現在は幸福の科学役員、幸福実現党外務局長を務めながら、国際政治コメンテーターとしてアメリカのラジオ・テレビ番組などにも出演。国内ではYouTuber、作家として言論活動中。


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