食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈輸入品は需要回復見えず厳しい状況、一部で現物を抑える動きも〉
2月の鶏肉需給は緊急事態宣言下において、内食需要に支えられ一定の量販店需要が続いた。それでも相場は年末年始の相場水準からは弱まった。中旬以降は朝晩こそ冷え込むものの、日中最高気温が4月並の温かさを記録するなど、比較的温暖な気候となった。そのため生鮮モモは需要が弱まり、ジリ下げ展開に。

一部産地では高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の影響が懸念されたが、産地を挙げて不足分を補てんする動きも見られ、供給量全体に与える影響は最小限に抑えられたようだ。

一方で輸入品は、宣言下では外食需要の回復が進まず、厳しい状況は変わらない。しかし、中旬以降は現地で先々のコスト高が見えているため、安価な現物を抑える動きから多少は荷動きが改善したが、相場を押し上げるほどではなかった。また下旬には宣言の解除を見据え、外食向けに一定の引き合いがあったようだ。

2月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが701円(前年596円)、ムネが305円(252円)と依然として前年同月を大きく上回り、正肉合計1,000円超えの相場を維持し、昨対比では158円高となった。前月比ではモモは10円安、ムネは9円安となった。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、2月の生体処理羽数は前年同月比2.9%減、処理重量は3.1%減と、ともに減少見通し。3月は羽数が4.6%増、重量も3.9%増と増加に転じる見通し。4月の予測も羽数・重量ともに昨対増を見込んでいる。地区別の2月の処理羽数・重量では、北海道・東北は2.7%減・2.6%減、南九州(宮崎、鹿児島、沖縄)も2.1%減・2.1%減と主要産地で減少見込み。一方で3月の北海道・東北は羽数が5.2%増、重量は3.2%増、南九州も羽数6.5%増、重量6.8%増と大幅に増加する見通し。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、3月の国産生産量は14.3万tと前年同月比3.3%増を見込む。前月比では1.1万t増を予測している。1~3月の3カ月平均では、1~2月が昨対を下回っていたため、0.5%減の13.7万tとわずかに昨対を下回る見込み。

輸入品は、2月はブラジルなどの主要輸入先国からの輸入量が増加すると見込まれ、3月は前年同月の輸入量が多かった反動から、4.5%減の4.5万tと予測している。1~2月は昨対を上回る4.6万t前後と見込まれている。そのため3カ月平均では4.1%増の4.6万tを見込む。

〈需要見通し〉
国産生鮮は引き続き内食需要の高まりから、量販店消費に支えられる。春先は例年弱含む時期であり、今春も弱含むと見られるが、コロナ禍での高水準は維持されると見られる。副産物ではコロナ禍で手羽元需要が堅調で、調味料メーカーのCM効果もあり引き合いが増えている。一方で砂肝は居酒屋需要などの減少で余剰感が解消されていない。

また、HPAIの発生はまだまだ予断の許さない状況で、今後の発生次第では供給体制への警戒も必要だ。輸入品は厳しい状況に変わりはないが、3月に入り引き合いが増え、一定の荷動きを見せている。相場は底値から反転の兆しを見せており、今後は外食需要の回復にも期待したい。

〈価格見通し〉
国産生鮮はまだしばらくは、高水準を維持すると見られるが、モモは鍋需要が弱まることなどからジリ下げ展開が予測されるため、700円の大台は割り込むものの、内食需要に支えられ大幅な下落は考えにくい。ムネも需要は落ち着きを見せているが、一定の需要に支えられることで、2月末の水準を維持するものとみられる。そのため、日経加重平均でモモは680円前後、ムネは300円前後と予測する。農水省市況ではモモが700円前後、ムネが320円前後と見込まれる。

〈畜産日報2021年3月5日付〉