2020年度の医療情報システム市場規模は、前年度比4.3%減の2,665億2百万円になると予測
~新型コロナウイルスの影響で、システムベンダーの営業機会損失や、院内での導入検討会議や導入作業などの遅延が多発~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の医療情報システム市場を調査し、セグメント別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
医療情報システム(EMR・EHR)市場規模予測
1.市場概況
医療情報システム(EMR:Electronic Medical Record、EHR:Electronic Health Record)は、業務効率化や情報連携を図るシステムとして、医療施設(病院や一般診療所など)に導入されている。
市場は、電子カルテを中核に形成されており、今後も地域医療連携・地域包括ケアにおいて医療情報の電子化が重要視されるだけでなく、院内においてもチーム医療・クリティカルパスなど、医療における大きな変革にIT化は不可欠なツールとなっている。
2.注目トピック
新型コロナウイルス感染症の影響で、市場は一時的に縮小の見込
医療情報システム市場規模は、近年、概ね前年度比1~2%増の推移となっていた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年3月頃よりシステムベンダーの営業機会の損失や、院内での導入検討会議や導入作業などの遅延といった事態が顕在化し始めた。2020年を通じてこのような事態は解消されてはおらず、2020年度の医療情報システム市場規模は、前年度比4.3%減の2,665億2百万円になると予測する。
市場の内訳をみると、2020年度はほぼ全てのシステムで前年度比マイナスの見込みだが、一般診療所向け電子カルテシステムについては、2020年度は前年度比プラスを維持し、2021年度に前年度比マイナスになる見通しである。同市場では、新規開業診療所への導入が中心となるため、新型コロナウイルス感染症の影響による開業件数の減少が、2020年度ではなく2021年度に表れると予測するためである。
3.将来展望
医療情報システム市場規模は、2020年度は前年度比4.3%減、その反動により2021年度は同2.0%増になると予測する。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の再拡大により、2020年度と同様に2021年度も予算執行が延期となるケースが続出してしまうことを懸念するシステムベンダーも多く、2021年度も前年度比横ばいからマイナスとなる可能性も考えられる。
なお、2021年度以降はプラス成長で推移したとしても、2022年度の医療情報システム市場規模予測は2,777億34百万円となり、2019年度の同2,784億36百万円に及ばず、コロナ禍以前の水準への回帰は2023年度以降になる見通しである。
調査要綱
1.調査期間: 2020年9月~12月 2.調査対象: 国内の医療情報システムベンダー 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(リモート含む)、ならびに電話取材調査併用 |
<医療情報システムとは> 医療情報システム(EMR:Electronic Medical Record、EHR:Electronic Health Record)は、医療施設(病院や一般診療所など)における業務効率化や情報連携を図るシステム全般を指し、電子カルテ(オーダリングシステム含む)や医事会計などの基幹システム、及び放射線部門、臨床検査など部門システムより構成され、施設規模やニーズに応じて様々なレベルのシステムが構築されている。 <医療情報システム(EMR・EHR)市場とは> 本調査における医療情報システム市場とは、パッケージソフトウェアやシステムインテグレーション(構築・他システム接続)、クラウド(ASP)等を対象として、事業者売上高ベースで算出した。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 電子カルテシステム、部門向け電子カルテシステム(精神科、産婦人科)、医事会計システム、医用画像システム(PACS)、放射線情報システム(RIS)、臨床検査システム、生理検査システム、手術情報管理システム、調剤支援システム、栄養管理システム、診療情報管理システム、地域医療連携システム、リハビリ支援システム他 |
出典資料について
資料名 | 2020年版 医療情報システム(EMR・EHR)市場の将来展望 |
発刊日 | 2020年12月28日 |
体裁 | A4 340ページ |
定価 | 150,000円(税別) |
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