新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言が1月8日に発出されて2週間が経った。前回(2020年4~5月)の緊急事態宣言では、すでに学校の一斉休校が続くなかで、外出自粛、飲食店の休業・時短要請などの影響で食肉の末端需要は量販店など小売需要に流れ、食肉の販売は大幅に伸長した。今回の場合、折からの景気悪化と正月休み明けの節約志向の強まり、さらに前回よりも人出が多いと言われるなかで、食肉販売への影響が注目されていたが、やはり巣ごもり需要の高まりから好調に推移しているもようだ。
首都圏のある総合スーパーよると、「成人の日」を含む3連休以降の畜産全体の販売数量は直近でも昨対で110%を維持しているという。国産・輸入を問わずに牛肉・豚肉・鶏肉・ミンチともに好調な売れ行きが続いており、畜産担当者は「食肉は保存が利くことから、豚肉と鶏肉はもちろん牛肉も引続き好調」としている。
別の関東の私鉄系スーパーの畜産担当者も、「1月24日までの段階で107%。このうち牛肉が103%、豚肉109%、鶏肉114%、ひき肉110%の状況だ。ただ、当社の場合、駅前店が多いため、郊外店などと比べると客数が伸び悩んでおり、販売の伸び率は小さい」という。
別の大手スーパーの担当者は、「前回の緊急事態宣言の時もそうだったが、家庭で調理する頻度が高まり、畜産のカテゴリーのなかでもミンチを含めた素材関係に需要がシフトしており、カレーなど煮込み用やスライス関係の売行きは好調。その半面、味付けキットなど簡便商材がやや伸び悩んでいる。ほかにも今期から冷凍肉の取り扱いも強化しており、2倍以上に伸びている」という。
このほか、遠出を控えるためか、週末の近所のショッピングモールへの人出が多い半面、地方では大雪の影響で外出がままならなかったなど地域や出店エリアで温度差があるものの、前回の緊急事態宣言と同様、概ね精肉関係の伸びが堅調なようだ。
とくに和牛・国産牛については、多くの量販店が販売を強化するなかで、一部企業は値入を変更して売価を上げたものの、連休明け以降も巣ごもり需要の高まりで結果的にプラスに作用したようだ。
さらに各社共通しているのが焼肉関係だ。外出を控える動きと飲食店自体が営業時間を短縮しているため、家でちょっと贅沢しようと内臓を含む焼肉類の動きが非常に良いと各社が口をそろえる。
その半面、前回の緊急事態宣言と異なる点が客数と売上げの時間帯で、前述の私鉄系スーパーは「通常は夕方の午後6時をピークに落ちる傾向にあるのだが、飲食店の営業時間短縮の影響からか、午後8時まで売上・客数が伸びている」としている。
農水省の食品価格動向調査によると、1月第2週(11~13日)の全国の量販店(470店舗を訪問調査)の食肉の小売価格は、国産牛肉(冷蔵ロース)が前月から6円値下がりして100g当たり827円(税込み、前年同月比3円安)、輸入牛肉(冷蔵ロース)が1円値下がりの285円(税込み、前年同月比5円安)、豚肉(ロース)は3円値上がりして263円(1円高)、鶏肉(もも)が1円値上がりして129円(3円高)となっている。今後の動向については、緊急事態宣言の解除の方向性など不透明感が強い。2020年は2月から5月にかけて販売が大幅に伸びたものの、前年実績を維持するため、各社どのように販売点数、売価を上げていくかが問われている。
〈畜産日報2021年1月26日付〉