矢野経済研究所
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国内の診断・診療支援AIシステム市場は2020年以降に拡大予測

~AI等を搭載した診断支援システム・診療支援システム、XRを使った医療機器は、国内医療機関での利用が浸透する見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のMedTech動向を調査し、関連する各医療機器の普及動向、参入企業の事業展開、今後の方向性などを明らかにした。
ここでは、診断・診療支援AIシステムの市場予測について、公表する。

診断・診療支援AIシステム市場規模予測

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米国FDAで認証された主なAI 搭載型の医療機器ソフトウェアにおける専門分野の内訳

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1.市場概況

 MedTech(Medical×Technology・メドテック)とは、診療・診断・治療支援領域などの医療分野に対して、AI、IoT、XR(VR:Virtual Reality/仮想現実、AR:Augmented Reality/拡張現実、MR:Mixed Reality/複合現実)、5G、4K/8Kなどの最新技術を取り込み、新たな価値を提供する製品やサービス、またはその取り組みである。

医療分野では、診療・診断・治療支援領域に最新のICT技術を活用した新たな価値を提供する製品やサービス、およびその取り組みが進められている。近年では、AI等を搭載した診断支援システム、8K内視鏡手術システム、XRを活用した手術支援サービス等の技術を活用した製品の上市がみられる。
なかでもAI技術は国策としても重点領域とされ、複数の企業よりAI搭載型医療機器の上市が進められ、一部の医療機関では実際の診療・診断場面で利用されるなど、医療分野におけるAIの利活用・社会実装が進みつつある。

また近年では、VR、AR、MRなどの現実世界において実際には存在しないものを表現・体験できる「XR技術」を、医療分野に活用する動きがみられている。XRを使った医療機器は、医学教育やトレーニング、診療支援、手術支援、リハビリテーションなど、活用の領域が拡大している。教育の質および効率の向上、精度の高い手術シミュレーション、診断および治療に際してこれまで定性的であった評価を “見える化”し、定量化することなどが期待されている。

2.注目トピック

医療分野におけるデジタル技術の活用は不可欠であり、医療の在り方の変革が期待される

 今後、医療分野においてもAIをはじめとするデジタル技術の活用は不可欠であり、これまでの医療の在り方から大きく変革することが期待されている。AI技術の活用・社会実装については、政府方針でも重点戦略として掲げられており、AI開発を推進するためのデータ基盤の整備やデータの利活用に向けた取り組みが進められている。医療分野のAI技術の活用として、特に医用画像を用いた診断支援が注目されている。

日本では、2018年まで研究や実証実験が行われており、2018年12月にAIを搭載した医療機器として、初めて内視鏡画像診断支援AIシステムが薬事承認を取得した。2019年には脳動脈瘤診断支援AIシステムが薬事承認を取得し、2020年には新型コロナウイルス感染症への対策として、厚生労働省が必要な薬事手続きを優先的かつ最速で進めると発表し、新型コロナウイルス肺炎の2つの診断支援AIシステムが上市された。

また、AI製品・サービスを取りまとめる医療プラットフォームを構築する企業も増加しており、社会実装に向けた取り組みが加速している。デジタル技術を活用した医療機器には、データが必要不可欠であり、国策として医療公的データベースの構築などデジタル基盤の整備も同時に進められている。

一方で、米国においても、AIの開発・実用化に向けた動きは年々活発化しており、2018年以降にその動きはより加速している。2020年9月時点で、FDA(アメリカ食品医薬品局)が認証しているAI等を搭載した医療機器としては、59品目の製品が確認された。専門分野別に内訳をみると、放射線科における製品が38品目で全体の64.4%を占め、次いで心血管領域が11品目で18.6%、眼科が3品目で5.1%となっている。AI等を搭載した診断支援システムは従来の検出支援や診断支援機能に留まらず、トリアージや臨床意思決定支援など、機能の多様化がみられる。

3.将来展望

 診断支援AIシステムや診療支援AIシステム市場は黎明期であるとみられ、AI技術は政府の未来投資戦略や人工知能技術戦略会議などで、医療分野におけるAI開発・利活用が推進されている。厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」において、画像診断や診療支援など重点6領域が選定されており、AI開発・実用化に向けた動きが加速している。2018年以前の研究および実証実験のような ”検証” から、2020年にはAI製品の ”利用” に段階がシフトしつつある。

新型コロナウイルス感染拡大による影響により、社会的にも非接触をキーワードとして、オンライン診療および新型コロナウイルス肺炎の診断支援AIシステムの早期承認などが社会的にも大きく注目されており、今後の医療分野におけるAI技術を活用した製品およびサービスは、これまで以上に医療機関の課題解決型AIシステムとしての利用が進むとみられる。

政府は、AI開発を加速するための医療データベースの構築や診療データ活用に向けた取り組みを進めている。参入企業は、2022~2024年頃の上市を見据えた研究開発を推進しており、将来的なAI搭載型の医療機器製品数の増加とともに、AIアプリケーションの多様化が見込まれる。さらに、多様化を見据えたAIアプリケーションの利用を促進するため医療プラットフォームの構築が大手モダリティメーカーを中心に進められている。AI等を搭載した診断支援システム・診療支援システムは医療機関での利用が浸透していき、2025年の診断・診療支援AIシステム市場規模は、事業者売上高ベースで100億円に拡大すると予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2020年7月~10月
2.調査対象: 医療機器メーカー、医療IT関連企業、製薬企業、その他関連企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接、電話・eメールによるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
<MedTechとは>
MedTech(Medical×Technology・メドテック)とは、診療・診断・治療支援領域などの医療分野に対して、AI(人工知能)、IoT、XR(VR、AR、MR)、5G(第5世代移動通信システム)、4K/8Kなどの最新技術を取り込み、新たな価値を提供する製品やサービス、またはその取り組みである。今後、医療分野においてもAIをはじめとするデジタル技術の活用は不可欠であり、これまでの医療の在り方から大きく変革することが期待されている。

本調査では、特に近年社会実装が進みつつある、AI等を搭載した診断支援システムと診療支援システムのソフトウェアを対象として、市場規模を算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
AI等を搭載した診断支援システム、AI等を搭載した診療支援システム、XR(VR、AR、MR)を使った医療機器、医療プラットフォーム

出典資料について

資料名2020年版 MedTech市場調査レポート ~ 診断・診療支援AI/VR・AR・MRを中心に ~
発刊日2020年10月30日
体裁A4 153ページ
定価150,000円(税別)

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