大塚家具
(画像=Photographee.eu/stock.adobe.com)

大塚家具の大塚久美子社長が、2020年12月1日付で社長を辞任する。初めて社長に就任してから実の父との「お家騒動」を繰り広げ、経営権争いに勝ったものの、その後の業績は低迷。赤字の責任をとって辞任するようだ。しかし、社長が辞任したからといって、大塚家具の業績が改善するとも限らない。大塚家具の未来はどうなる?

大塚家具が発表している最新決算と業績予想

まず大塚家具の業績から見ていこう。9月に発表された2021年4月期第1四半期(2020年5~7月)の業績は、売上高が58億2,100万円、営業利益が9億4,600万円の赤字、経常利益が10億200万円の赤字、そして最終損益も10億2,000万円の赤字となっている。

大塚家具は決算期を変えたため、前年同期比の増減については発表されていないが、あえて前期の第1四半期(2019年1~3月)と比較するのであれば、数字は以下のようになる。

<2020年5~7月期と2019年1〜3月期の比較>

2020年5~7月期2019年1~3月期
売上高58億2,100万円68億3,000万円
営業利益△9億4,600万円△14億3,000万円
経常利益△10億200万円△14億4,600万円
四半期純利益△10億2,000万円△14億5,600万円

赤字額こそ縮小しているものの、売上高も落ち込んでおり、先行きは厳しく見える。10月28日には、「未定」としていた通期(2020年5月~2021年4月)の業績予想も発表しており、最終損益は28億9,000万円の赤字となる見通しだという。

久美子氏単独政権と大塚家具の業績悪化

大塚家具の業績はこのように真っ赤っかの状態だが、これは去年や今年に始まったことではない。2016年以降、最終損益のマイナスが続いており、2016年は45億6,700万円の赤字、2017年は72億5,900万円の赤字、2018年は32億4,000万円の赤字、2019年は77億1,800万円の赤字となっている。

実父との経営権争いに勝利し、大塚久美子氏の単独政権が始まったのは、2015年のことだった。つまり、単独政権の最初の年は黒字を計上できていたものの、その後は現在に至るまで赤字の状況が続いていることになる。この責任をとって大塚久美子氏が社長を辞任するわけだ。

報道などによると、大塚久美子氏は自ら取締役会に辞任を申し入れ、受理されたとのことだ。週刊誌などが伝えたところによると、今後はコンサルタントの道などを模索しているようだ。やや突拍子もないが、父・勝久氏が2015年に立ち上げたインテリアの総合プロデュース企業「匠大塚」に入るしか道はないのでは、とも言われている。

経営方針を巡って泥沼の争いとなった父と娘だけに、また再び同じ会社で事業に取り組むことも考えにくい。父・勝久氏は富裕層などをターゲットに「会員制」をコンセプトに掲げて会社を成長させたが、娘・久美子氏はそれとは真逆に、ニトリやイケアのようなカジュアル路線に走った。いまもこの考え方の違いにはしこりが残っている可能性が高い。

大塚家具の復活の鍵を握るのは?

久美子氏が去ったあとの大塚家具は、今後どのようになっていくのだろうか。復活はあり得るのか。鍵を握るのが、2019年12月に親会社となった家電量販店大手ヤマダホールディングスとの連携だと言われている。2021年4月期第1四半期の決算発表の際には、ヤマダホールディングスと連携について、以下のように説明した。

「ヤマダ電機での家具の販売や法人部門との協業による法人案件の獲得、株式会社ヤマダホームズとの顧客の相互紹介等に取り組み、家具・インテリアと家電を合わせた『暮らしまるごと』提案の一層の向上を図っています」

すでに、ヤマダ電機36店舗で家具の販売を開始しており、今後さらに家具の取扱店を増やしていく方針のようだ。ちなみに、大塚家具の直営店で家電を販売する取り組みも始まっており、すでに7店舗で取り扱われているという。

そのほか、「リアルからバーチャルへの領域拡大の取り組み」と「BtoCからBtoBへの領域拡大の取り組み」も進めている。前者に関しては、店舗を疑似体験できるウェブコンテンツとして「バーチャルショールーム」の展開などに力を入れている。後者に関しては、設計事務所へのラグジュアリーブランド家具の営業活動などを強化していくという。

このように、複数の新たな取り組みへ同時並行的に取り組んでいくことで、大塚家具は赤字からの脱却を狙っていく。新型コロナウイルスの影響で客足にも影響が出ている中での再建は非常に厳しいものとなるが、それでも地道にこのようなサービス拡大への取り組みを前に進めていくしかない。

新体制で復活に向けて動き出す大塚家具

父・勝久氏、そして娘・久美子氏がいない大塚家具の新体制が、2021年に本格的に始まる。後任の社長には、ヤマダホールディングスの社長で大塚家具の現会長である三嶋恒夫氏が就く。心機一転、大塚家具が復活に向けた階段を上っていけるのか、注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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