令和上司のすすめ ―「部下の力を引き出す
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(本記事は、飯田 剛弘氏の著書『令和上司のすすめ ―「部下の力を引き出す」は最高の仕事』=日刊工業新聞社、2020年9月19日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「なぜ?」は使い方次第で最高の問いになる

多くの人がオープンクエスチョンは大事だとわかっていても、やってしまうミスがあります。それは、トラブルやミスがあったときに、最初から「なぜ?」「どうして?」と聞いてしまうことです。相手は責められている、怒られていると感じるため、あまり効果的な質問ではありません。

しかし、「なぜ?」の問いは使わない方がいいというわけではありません。特に多様性のある職場においては、相手の意思決定の基準や行動理由を把握するために、「なぜ」で質問することはとても重要です。

「どのように対応したのか」「何を対応したのか?」と質問すれば、相手の行動や姿勢などの事実を確認することはできます。しかし、「なぜそうしたのか?」「なぜそういう判断をしたのか?」という価値観や判断基準などの部分が見えません。ここの部分の共通認識がないと、みんながバラバラな行動をしてしまいます。

多様なメンバーと仕事をすると、さまざまな考え方や価値観があります。違った考え方を受け入れることは大事なことですが、チームとして意思決定をする際には、共通の価値観や判断基準を持つことはチームで成果を出す上で重要です。「なぜ?」を使って問うことで、相手がどのように考えて決めたのかを理解できるようになってきます。

例えば、インドネシアのジャカルタで一日セミナーを企画したときの話です。現地のチームメンバーからイベントの開始時間を遅めにしたいと提案がありました。そこで、「〝なぜ〟開始時間を午前9時からではなく、10時半からにする方がいいのですか?」と聞くと、「8時から10時の時間帯は渋滞が激しいため、ほとんどの参加者は9時には来れないから」と答えてくれました。「開始時間が遅い方が申込者が増えると思う」と意見を言ってくれたりもしました。現地のニーズに合わせ調整することで、100人近くの方に参加していただき、無事に終了しました。

海外の人と仕事をすれば、日本人の仕事の進め方について質問されることもあります。例えば、「なぜ日本人は結論を先に言わないのか」「なぜ日本人は議論して、その場で結論を出さないのか?」などです。多様なメンバーと仕事をすれば、価値観や判断基準は違います。相手の意思決定の基準や行動理由がわかってくると、それに合わせた対応ができます。自分の判断基準に照らして、他人を間違って評価することも避けられます。

また、部下と一緒に他のことに対して「なぜ?」と考えるのも有効です。例えば「なぜ、私たちはあのときに、○○の選択をしたのだろう?」「なぜ、別の選択肢をしなかったのだろう?」のように原因を掘り下げたり、分析したり、視点を広げたりするときに「なぜ?」は有効です。「なぜ?」「どうして?」をうまく使っていきましょう。

令和上司のすすめ ―「部下の力を引き出す
飯田 剛弘(いいだ よしひろ)
愛知県生まれ。2001年、南オレゴン大学卒業(全米大学優等生協会: Phi Kappa Phi 所属)後、インサイトテクノロジー入社。2004年よりインド企業とのソフトウェア共同開発プロジェクトに従事。その傍ら、プロジェクトマネジメント協会(PMI)の標準本の出版翻訳に携わる。マーケティングに特化後は、データベース監査市場にて2年連続シェア1位獲得に貢献。市場シェアを25.6%から47.9%に伸ばす (ミック経済研究所)。

製造業の外資系企業FAROでは、日本、韓国、東南アジア、オセアニアのマーケティング責任者として、日本から海外にいるリモートチームをマネジメント。アジア太平洋地域でのマーケティングやプロジェクトに取り組む。人材育成や多様性のあるチーム作りにも力を入れ、1on1ミーティングは1,000回を超える。

2020年、ビジネスファイターズ合同会社を設立。現在、多様なメンバーと協働し、グローバルビジネスで結果を出してきた経験を基に、経営やマーケティングの支援、グローバル人材の育成やリモートチームのマネジメント支援(研修・講習・執筆)など多方面で活動中。

著書に『童話でわかるプロジェクトマネジメント』(秀和システム)、『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!』(明日香出版社)、『こじらせ仕事のトリセツ』(技術評論社)がある。

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