令和上司のすすめ ―「部下の力を引き出す
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(本記事は、飯田 剛弘氏の著書『令和上司のすすめ ―「部下の力を引き出す」は最高の仕事』=日刊工業新聞社、2020年9月19日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

熱意を持って教えることが相手にいいとは限らない

上司が部下にアドバイスや指導をするとき、相手のことを思ってやっていることでしょう。良かれと思って教えているため、話していることに疑問を持つことはないと思います。

ところが、相手の受け止め方は、私たちの期待とは違うことがあります。私たちが正しいと思うこと、例えば「〜するべき」「〜しないといけない」みたいなことを熱意を持って言えば言うほど、それを聞いている部下は「説教されている」「叱られている」と感じてしまうことがあります。そうなると、なかなか素直に聞いてもらえなくなります。

では、説教っぽくならないよう伝えるにはどうすればいいでしょうか?

伝え方をちょっと工夫するだけで、相手は意外に素直に聞いてくれるものです。

ここでは3つの方法を紹介します。

① 失敗談を語る

部下からナメられるので、失敗を話したくない人もいるかもしれません。ですが、「失敗を避けたい」という部下のニーズにマッチしているため、興味を持って聞いてもらえます。失敗談を聞いてから、アドバイスを聞くと「確かにそうかも」と納得してもらいやすいです。単純に「上司がどういう失敗をしたのか気になる」という興味本位から聞いてくれる部下もいます。大事なことは、相手本位で考えて伝えることです。あと、失敗談を披露してスキを見せることで「上司もそうだったんだ」と安心感を与え、親しみを持ってもらえるメリットもあります。また、「失敗や挫折により傷ついた経験があるから、それを部下にはしてほしくない」という思いを伝えることができれば、部下との関係もよくなるでしょう。

② 部下自身に導き出してもらう

最初に部下に質問して、部下自身に考えてもらい、答えを導き出してもらいます。すると、部下も能動的に話を聞いてくれるようになります。私たちは、つい「どうすればいい?」「で、今何をすればいいと思う?」と質問攻めしてしまい、威圧的な態度をとりがちです。これではうまくいきません。

質問する際は、余裕を持って優しく部下に問い、考える時間をタップリ与えることが大切です。例えば、「〜したら、どうなると思う?」「〜したら、〇〇はどう感じると思う?」「〜だったら、あなたはどうする?」のように質問し、相手が考えて、答えを出すまで待ちましょう

③ 他の人の言葉を引用する

私たち自身の言葉で直接伝えるよりも、権威のある人や著名人の話、専門家の意見などを引用する方が話を聞いてもらえます。説得力も増し、信じてもらいやすくなります。

また、伝えたいことが独善的なものではなく、他の人の意見や考えを踏まえているため、素直に聞いてもらえます。さらに、目の前にいる人から直接言われていない感じが、話を聞きやすい雰囲気にしてくれます。

「教えたい」と思ったときこそ、相手本位で考え、相手の受け取り方に応じて、ここで紹介したテクニックを使ってみてください。

令和上司のすすめ ―「部下の力を引き出す
飯田 剛弘(いいだ よしひろ)
愛知県生まれ。2001年、南オレゴン大学卒業(全米大学優等生協会: Phi Kappa Phi 所属)後、インサイトテクノロジー入社。2004年よりインド企業とのソフトウェア共同開発プロジェクトに従事。その傍ら、プロジェクトマネジメント協会(PMI)の標準本の出版翻訳に携わる。マーケティングに特化後は、データベース監査市場にて2年連続シェア1位獲得に貢献。市場シェアを25.6%から47.9%に伸ばす (ミック経済研究所)。

製造業の外資系企業FAROでは、日本、韓国、東南アジア、オセアニアのマーケティング責任者として、日本から海外にいるリモートチームをマネジメント。アジア太平洋地域でのマーケティングやプロジェクトに取り組む。人材育成や多様性のあるチーム作りにも力を入れ、1on1ミーティングは1,000回を超える。

2020年、ビジネスファイターズ合同会社を設立。現在、多様なメンバーと協働し、グローバルビジネスで結果を出してきた経験を基に、経営やマーケティングの支援、グローバル人材の育成やリモートチームのマネジメント支援(研修・講習・執筆)など多方面で活動中。

著書に『童話でわかるプロジェクトマネジメント』(秀和システム)、『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!』(明日香出版社)、『こじらせ仕事のトリセツ』(技術評論社)がある。

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