(本記事は、飯田 剛弘氏の著書『令和上司のすすめ ―「部下の力を引き出す」は最高の仕事』=日刊工業新聞社、2020年9月19日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
フェアに付き合わなきゃ上司の資格なし
「十人十色」「百人百様」と言われるように、全く同じ能力を持ち、同じ考え方をする人はいません。すべての人がそれぞれ違う強みや弱みを持っていて、得意な分野も違います。多様なメンバーがそれぞれ持っているスキルや才能を活かし、役割を果たすので、上司はチームとして結果を出していけます。
日本でも働き方や価値観が多様化してきていますが、従来からある画一化された基準、例えば、学歴、年齢や国籍などで判断する人は今でも多いと思います。自分の設けた基準で物事を考えがちで、「常識」や「当然」「普通」という言葉を多用します。そして、その自分の基準に満たしていないと、相手のことを劣っていると考え、優位性を示しがちです。エゴからなかなか抜けきれません。あなたはどうでしょうか?
ある基準で劣っていても、違う基準で見ると優れていることはあります。例えば、あるマーケティング担当者は、ウェブに関する知識がほとんどありませんでした。ですが、プレゼンや文章を書くことが得意でした。このとき、「ある分野の知識が全然ないから、ダメでしょう」と評価はしません。インターネットマーケティングを得意とするメンバーと連携することで、チームとして大きな成果を出せます。一緒に販売の対象であるターゲットを定義し、メールやSNSの文章を書く作業は自分が、メディア選定や配信関係は相手が、というように役割を分担することでお互いの強みを活かせます。チームで協力し合うことで、一人ではできなかった大きな成果をもたらすことも可能になります。
多様性が増しているので、同一の基準でのマネジメントや評価は難しくなってきています。不公平な基準で評価されれば、相手のモチベーションを下げます。例えば、若いからという理由で挑戦するチャンスを与えなければ、その人のやる気を奪います。優秀な人材はどんどん辞めていきます。
私が韓国の営業チームと一緒に食事をしていたときです。私が年上で立場が上だったこともあり、乾杯の際、彼らは私よりも少し下げてグラスを合わせました。お酌をされたら両手で受け、飲むときは私の視線を避け、横向きになって飲んでいました。
韓国には年上の人を敬い、気を遣う文化があります。一方で、彼らはお互いに言いたいことを言い合えるフラットな関係の職場を好んでいました。「若いけど、いろいろ挑戦できる機会がある会社は好きだ」と言っていたことを今でも覚えています。
国を問わず、年齢や性別など関係なく、実力がある人が挑戦できるフェアな場を提供することは大事です。そして、フェアでいるためには、どんな実績を上げたのか、どんな役割を果たしたのかに重視することが大切だと改めて思いました。
多様なチームで成果を出していくには、相手に対して謙虚で思いやりを持つこと、そしてフェアに付き合うことは必要不可欠です。会社としてルールや基準を作るなどの対応も必要で、自分一人ではできないと思うこともあるかもしれません。ですが、仕事は「あなた」と「私」の関係です。相手との違いを認め、しっかりコミュニケーションを図りましょう。相手も納得できるような公平さを持って、チームとして共通の目標を目指しましょう。常にフェアで、会社にとって正しいと思う最適なことを実践していきましょう。
製造業の外資系企業FAROでは、日本、韓国、東南アジア、オセアニアのマーケティング責任者として、日本から海外にいるリモートチームをマネジメント。アジア太平洋地域でのマーケティングやプロジェクトに取り組む。人材育成や多様性のあるチーム作りにも力を入れ、1on1ミーティングは1,000回を超える。
2020年、ビジネスファイターズ合同会社を設立。現在、多様なメンバーと協働し、グローバルビジネスで結果を出してきた経験を基に、経営やマーケティングの支援、グローバル人材の育成やリモートチームのマネジメント支援(研修・講習・執筆)など多方面で活動中。
著書に『童話でわかるプロジェクトマネジメント』(秀和システム)、『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!』(明日香出版社)、『こじらせ仕事のトリセツ』(技術評論社)がある。
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