大野 暉社長(30)
(画像=ビジネスチャンスより)

サイバーセキュリティクラウド
(東京都渋谷区)
大野 暉社長

3月26日、東証マザーズに上場を果たしたサイバーセキュリティクラウド(東京都渋谷区)。人工知能(AI)技術を活用した情報セキュリティサービスを提供している同社は、2019年12月期の売上高約8億1000万円だが、ここ3年間は年成長率94.1%と著しい。2020年12月期は、売上高11億2600万円を見込んでいる 。 (※2020年10月号「話題の会社を直撃」より)

大野 暉
大野 暉
おおの・ひかる
1990年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学商学部卒業。 高校・大学在学時より複数回の起業及び事業売却を経験し、2013年よりスタートアップ企業にて新規事業部長や社長室長を歴任。2016年サイバーセキュリティクラウド 代表取締役社長に就任。

「攻撃遮断くん」1万社超に採用 AI利用して自動的に攻撃を阻止

新型コロナウイルス感染拡大の影響がIPOにも広がった3月。新規上場した24社のうち初値が公開価格を上回ったのは、わずか6社という状況の中、26日に上場を果たした同社は、公募価格4500円の2倍強の9210円の初値を付けた。翌3月27日には、一時前日終値2470円高の1万3180円まで上昇、2日間で公開価格の3倍に大化けした。

4月21日には時価総額が1000億円に達した。株式市場では「ウィズ・コロナ」時代に大きな成長が期待されている。「周りからは上場のタイミングについて反対されました。しかし、今だからこそ上場するべきだと、説得しました。在宅勤務が増え、会社がもぬけの殻という状態はハッカーに狙われやすい。ビジネスでプラスに働く。当社の存在意義が大きくなるはずだ、と考えたのです」。

大野暉社長の見通しは見事に当たったのだった。

同社はウェブアプリケーションへの攻撃を検知・可視化・遮断するツールをクラウド型として提供する。コンピュータのセキュリティサービスには多くの企業が参入しているが、これはPCなどの端末に対するものがほとんど。ウェブ自体へのセキュリティは、企業もあまり目を向けていなかった。同社はこの分野に目をつけ、「新たな市場を開拓していく」 (大野社長)。

同社が展開しているサービスは「攻撃遮断くん」、「WafCharm 」と「AWS WAF ManagedRules 」の3つ。

主力商品「攻撃遮断くん」は、外部からのサイバー攻撃を遮断し、改ざん、サービス停止などからウェブサイトを守る。「多くのサイバー攻撃は過去のパターンの繰り返しのため、深層学習(ディープラーニング)を用いればAIで自動的にシャットアウトできます。現在約1万社に採用していただいていますが、これらのウェブサイトを守るなかで蓄積したデータを活用し、人間が行う監視業務をAIで代替します」(大野社長)。

■WAF(Web Application Firewall)のイメージ
■WAF(Web Application Firewall)のイメージ(画像=ビジネスチャンスより)

開発から運用、サポートまでを自社で一貫して行い、2016年のサービス開始から約3年半で累計導入社数・累計導入サイト数ともに国内トップシェアを獲得した。

AIによる防御パターンを自動アップデートできる高いセキュリティを特徴とし、新たな脅威にも、担当者不要で自動的な対応が可能だという。「導入効果は月次でお客様にレポートしており、サービスの継続率は98・9%と、高い満足度を獲得しています」(大野社長)。

サブスクリプション型のビジネスモデルのため、導入企業が増えれば増えるほど、売上が上がる仕組みだ。同様に1万超のサイトを守るなかでデータはどんどん蓄積されれば、同時にAIによる精度も高まるという訳だ。

残る2つ「WafCharm 」と「AWS WAF ManagedRules 」は、ともにAMAZON社が提供するクラウドプラットフォーム「AWS」に特化したセキュリティサービス。前者はAWSの提供するAWS WAFを利用する顧客に対して、AIによって学習し、AWSWAFのルールを自動運用するサービス。

後者は、セキュリティ専門のベンダーの提供するAWSWAFのセキュリティルールセットだ。

米国シアトルにある子会社では、そのAWSマーケットプレイスで購入できる、WebアプリやAPIをネットの脅威から迅速に保護できる独自のルールセットを販売60カ国超の1000以上のクライアントを獲得している。

高校時代から起業家 2016年にサイバーセキュリティクラウドの代表取締役社長に就任

大野社長は高校生の16歳の時、起業家人生をスタートさせた。「当時は広告代理店の下請けで若者を対象に市場調査を請け負っていました」(大野社長)。

会社はのちに売却し、早稲田大学を卒業後、「社会勉強のため」(大野社長)就職した。

3年後、2016年に同社へ入社した。

同社はもともと2010年に前身のアミティエとして設立された。2014年、サイバーセキュリティクラウドに社名変更した。「これからはWebセキュリティが当たり前になる」(大野社長)と考え、いずれはこの分野で起業しようと思っていた大野社長にとって、「サイバーセキュリティクラウドが手掛ける事業は、僕の考えと同じだと感じたのです」(大野社長)。

同じころ、教育事業大手の情報漏洩事故が発生。原因は明らかに、社内の情報管理の不徹底だった。「今後は外部からのサイバー攻撃が増えることは間違いない。攻撃に対して、きちんと対処していく必要がある、と改めて感じたのです」(大野社長)。

2016年11月に代表取締役社長に就任。社会的信用を高めるため、株式上場と米国に子会社を設立して海外展開を目指したのだった。

「攻撃遮断くん」は2018年には、タレントを起用したCMなど積極的なPR活動によって一般的な認知度を高めてきたが、「とはいえ、日本におけるセキュリティ対策への意識は、まだ浸透しているとは言えません。対策の遅れが、企業にとって致命的な脅威となり得ることを啓蒙し、事前対応へと導いていくことが、当社の重要な役割だと自負しています」(大野社長)