内山 誠一社長
(画像=ビジネスチャンス)

ワールドフランチャイズシステムズ(兵庫県神戸市)
内山 誠一 社長

アパレル大手、ワールドグループがFC展開する女性アパレル小売店「SHOO・LA・RUE(シューラルー)」は、コロナ禍でアパレル各社が軒並み苦戦する中、軌道を戻しつつある。緊急事態宣言中は直営全店と一部FC店が休業したが、5月末頃から徐々に再開。6月第1 ~ 3週は、既存店売上が前年同月比100%超えとなった。同社の内山誠一社長は、好調要因として出店立地と商品力、そして商品供給力を挙げる。(※2020年 10月号「トップ直撃」より)

内山 誠一
内山 誠一
うちやま・せいいち
1975年10月生まれ、大阪府出身。1998年4月、㈱ワールド入社。卸事業の営業を担当した後、店舗MD、商品MDを経て、2012年1月に「グローブ」ブランド長に就任。
翌年に統括BU長を経て、2017年4月、㈱ワールドグループの執行役員に就任。同時にグループ事業持株会社化に伴い、新設の㈱アルカスインターナショナル社長に就任。2018年7月から「シューラルー」ブランド長、㈱ワールドフランチャイズシステムズ社長を兼任し、現在に至る。

ワールドグループは、「アンタイトル」や「タケオキクチ」「オペーク ドット クリップ」などおよそ50のブランドを持つアパレル業界1位。前期業績は売上高2362億円、営業利益123億円。2011年から子会社「ワールドフランチャイズシステムズ」指揮のもと、FC事業に取り組む。現在のFC展開ブランドは、「シューラルー」「グローブ」「ザ ショップ ティーケー」の3ブランド。

──新型コロナウイルス拡大により、7都府県では4月7日から緊急事態宣言が発令されました。解除された5月25日まで、多くのアパレル店舗は休業していました。

内山 ワールドグループでは、直営店は緊急事態宣言中ほぼ全店休業という形をとりました。FC店はオーナー様やテナントが入る商業施設の状況に応じて、休業や時短営業などで各店舗それぞれ対応しました。一部営業したとはいえど、お客様は当然少なく集客は難しい。そのため、期間中は商品投入や仕入れのコントロールに力を入れて過ごしました。

── 緊急事態宣言収束後は、どのように推移しましたか。

内山 シューラルーを中心とした郊外型ブランドは回復が早いです。6月の既存店売上高は、前年同月比90%後半でした。正確に言うと、1~3週は既存店全店で前年同月超えとなり、最後の週は大雨で崩れたという状況です。1~3週の客単価は前年並みで、客数は105~110%の間でしょうか。

──緊急事態宣言後も、根強い自粛傾向で客数減に悩むアパレル店は多いです。なぜシューラルーは好調だったのでしょうか?

スーパーセンターニシ ムタ人吉シューラルーFC店
スーパーセンターニシ ムタ人吉シューラルーFC店(画像=ビジネスチャンス)

内山 シューラルーは基本的に、NSC(ネイバーフッド型ショッピングセンター)やCSC(コミュニティー型ショッピングセンター)といった、地域に密着した郊外型SCに出店します。これまで都心に買い物をされていた方が百貨店や都市型店舗に行かなくなったとしても、地元では必ず食品を買いに行かれます。その近くにシューラルーがあり、短時間でショッピングを済ませたいというニーズに合ったのではないかと思っています。

また、シューラルーは『狭い坪数で丁寧に接客』というよりも、『広い坪数でお客様に自由に買っていただく』という、どちらかというと密になる業態ではない。それを踏まえると、郊外型のFCとしてシューラルーはこのピンチをチャンスに変えられると捉えています。

──ウィズコロナ時代に求められる条件が、シューラルーの立地条件に丁度はまったということですね。

内山 そうですね。加えてもう1つの要因としては、以前から強化してきた商品開発にあると思います。およそ1年半前から、MDの拡充やより広いターゲットに向けた品揃えを強化しています。たとえお客様に来ていただいても、店頭に欲しいと思える商品が揃ってなければ、当然売れませんよね。そこで近年は、「値段はできるだけ据え置きしながら、商品の質や原料を見直す」という取り組みを進めてきました。

たとえば、最近は「ワンマイルコーデ」と呼ばれる「自宅から1・6㎞圏内を外出できる、伸縮性のあるジャージ素材の服」がトレンドです。実はジャージ素材は、去年から注目されていました。その品揃えを粛々と進めてきたところにコロナが重なった。そこで、これまで開発してきた商品に「家でもリラックスして過ごせる」など、ニーズに合ったプロモーションを展開しています。商品力が少しずつ良くなっていることも相まって、お客様に選んでいただいているのかなと思っています。

──前々から準備していた商品力が集客につながったと。

内山 あとは、「適切な時にお客様が欲しいものを、適切な量で供給できるか」も重要です。供給量などを、マーケットに応じてアジャストしてきたのが大きい。

コロナ以前から、当社は働き方改革を見据えて、店頭端末関連の刷新を進めていました。今、全店にはGoog le Meetという会話ツールがあり、本部と店舗を結んでいます。今は店舗間の距離があるためなかなか巡回に行けませんが、このMeetを使って店長会などを実施し、各店舗の状況を随時把握しています。この活用で、これまで以上にコミュニケーションがとれると期待しています。 

──どれくらいの頻度で?

内山 本部会は毎週ですが、店長会は半年に一回くらい。今までは店舗が5~6地域に分かれて集まり、私は6日間程度を想定して各会を渡り歩いていました。しかし今は、オンラインなので短期間で済みます。

──オンライン商談が出てきたことで、仕事の仕方も変わりましたね。

内山 そうですね。近頃力を入れているのは、CRM(顧客関係管理)、いわゆる「強い顧客」をどう増やしていくのか。シューラルーでは、2月頃から「ステージ別サービス」というものを導入しました。ワールドグループのポイントサービスに入会頂き、ステージ別サービスを導入しているブランドで購入して頂くと、ステージ別サービスにご参加頂けます。お客様の購買頻度と金額に応じて「プラチナ」や「ブロンズ」といったステージと特典を付与するものです。

あとはMA(マーケティングオートメーション)ですね。一度購入されたお客様に対して、再来店を促す取り組みをこれまでは時間をかけてデータ抽出し、アナログ的にアプローチしていました。これを自動的に抽出してターゲットを絞り込み、アプローチしています。

検証データによると、半年に3回以上何かしら購入していただくと、次の再来店に繋がる確率は上がってきます。再来店を促す施策は重要だと考えます。

──中期経営計画「Road to 200」では、FC店の200店舗出店を掲げています。この計画は据え置きでしょうか。 

内山 上期は出店件数の下方修正をしましたが、下期はしていません。Road to 200の後ろ倒しは考えていないです。

FCでは、今まで出店できなかった区画が空いてきている。なぜかというと、生き残れなかった他業種の撤退が進んでいるからです。シューラルーが出るべき地域や商業施設の空きは、コロナの後になればなるほど出てきます。出店計画については、直営もFC両輪で厳選しながら進めていきます。

シューラルー以外では、ワールドグループが持つ主要1~2ブランドのFC化も進めています。それを想定すると、Road to 200は十分可能だと思っています。