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(画像=JR-50/stock.adobe.com)

4月28日、YouTuberの制作マネジメントや活動支援を手掛けるUUUM株式会社は、吉本興業株式会社と資本業務提携を締結したと発表した。今後は、吉本興業に所属するタレントの YouTube チャンネルが、UUUMの支援を受けて運営されていく。Youtuber人気を背景に次々と人気クリエイターを世に送り出すUUUMと、お笑い界の王者、吉本興業が手を組んだ先にはどのような未来を描いているのか。そして、メディア発信の形はどう変わっていくのかを追った。

資本業務提携の裏には、両社の抱える経営課題の後押しがあった

今回の両社の資本業務提携の内容は、「吉本興業株式会社が持つ MCN 運営権の一部譲受」を主としたものだ。MCNとは「マルチチャネルネットワーク」のことで、複数の YouTube チャンネルと提携し、著作権管理やタイアップ広告営業、収益化など、クリエイター活動を様々な場面で支援するためのサービスのことである。これがUUUMに譲渡されることで、現在約800チャネルある吉本興業専属タレントのYoutubeチャネルは、UUUMと共同で運営されることとなる。

お互いのプラットフォームの相互活用とも理解されるこの提携の裏には、メディア産業全体の変遷に伴って両社が抱え始めていた経営課題がある。

UUUMの経営課題

まずはUUUMの収益の6割弱を占める「アドセンス収益」(Youtube再生から得られる広告収益) を四半期推移で見て見よう。再生回数は、2020年5月期第一四半期の約115億回をピークに、第二四半期は109億回、第三四半期は114億回と停滞している。さらに、アドセンス収益を再生回数で割った、「1再生あたりのアドセンス収益」を見ても、0.3円以下で横ばい状態だ。

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そもそも、「1再生あたりのアドセンス収益」は、プラットフォームであるYoutube側の規約に縛られてしまう部分があるため、UUUM側で改善することが難しい。となると再生回数の増加が課題となるが、ここに「Youtuberの参入競争の激化」という問題が立ちはだかっている。今やYoutuberの存在は全国に知れ渡った存在となり、UUUM以外のアーティスト事務所からの参入や、個人Youtuberが活躍してくることが多くなったのだ。

さらに追い打ちをかけるのが、人気YoutuberのUUUM離れだ。視聴数を稼げるタレントやクリエイターは、SNSを通してユーザーとダイレクトに繋がっているため、事務所を通さずとも自らコンテンツ発信し、収益を取ることが可能である。そのため、事務所に所属しているメリットが少なくなってしまうのだ。

このように、タレントの流出と視聴回数の低迷に苦しむUUUMとしては、あらゆる手段を使って収益基盤を強化すること、及び、視聴者を確保するコンテンツ力を欲しがるのは当然だろう。

吉本興業の経営課題

一方の吉本興業も、メディア産業の潮流の変化に伴う経営課題を抱えていた。もっとも顕著なのが、消費者のテレビ視聴時間の減少だ。博報堂DYメディアパートナーズが公表する「メディア定点観測」によると、メディア総接触時間に対するテレビ視聴時間の割合は、2006年の約51%から減少が続き、2019年には約37%にまで落ち込んでいる。

ユーザーのメディア接触時間は増加しているものの、携帯電話やスマートフォンによるデジタルコンテンツへの視聴にシェアを奪われているという状態だ。従来マスメディアを中心にコンテンツを提供してきた吉本興業にとっては、どのような媒体を用いて消費者にコンテンツを届けるかという戦略を見直す転換点に差し掛かっている。

また、タレントやメディア側の” 吉本離れ” が囁かれていることも、痛手となっているだろう。吉本興行所属タレントの闇営業問題を受けて、同社の経営体制の問題を指摘する機運が高まり、所属タレントとの関係悪化や、メディア側との取引関係の悪化などに発展するのではとも業界内では噂されている。

吉本興業の源となっている、6,000人以上もの所属タレントとのネットワークを失ってしまうことは、今後の同社の活動を大きく揺るがしかねない。所属タレントの活躍の場を何とかして確保し、広げていかない限り、自社の未来は無いと考えたのだろう。

提携により実現する「マスメディアとデジタルの融合」

今回の提携は、お互いの持つそれぞれの経営課題が、「マスメディアとデジタルの融合」をキーワードとして上手く繋がった結果だと捉えることができる。すでに、連携後の具体的な未来図は見えているのだ。

UUUMは今回の提携の目的を、「メディアのデジタルシフトに伴う、オンラインとオフラインを融合した新しいメディア発信の形」を目指すことだとしている。吉本興業は主にテレビやラジオといったマスメディアの世界でお笑いを提供してきた一方で、UUUMは、HIKAKINやはじめしゃちょーといった著名Youtuberを、インターネット上の世界で輩出してきた。両社が提携することで、それぞれのクリエイターやタレント達が、オンライン・オフラインの双方のプラットフォームで活躍できる機会が与えられ、消費者に対して新しい形のエンターテインメントを提供できるというわけだ。

とりわけ、両社にとって重要なキーワードとなるのが、「動画コンテンツ」であろう。マスメディアではもちろん、デジタルの世界においても今後はますます、より多くの情報量を伝えることのできる動画を活用した情報発信が、メディア産業全体や企業のブランディングという文脈において重要な位置づけとなってくるのだ。

動画コンテンツ配信はなぜ良いのか

では、なぜ「動画コンテンツ」が注目されるかについて見てみよう。広告主やブランディングを行いたい企業にとっては、特にデジタルの世界でこの動画コンテンツを有効に活用することで、訴求効果が格段に高まる。

ユーザーのターゲティングが可能

デジタルの世界において、ユーザーはPCやスマートフォン等の媒体を用い、ブラウザを通じてコンテンツを視聴することになる。すると、ユーザー個人のweb上における行動履歴から、ユーザーごとの趣味や嗜好を探ることが可能となり、ニーズに沿ったリアルタイムなコンテンツ発信が可能となる。これは、マスメディアでは実現できなかった大きな特徴である。

ユーザーの好みやトレンドに応じた発信が可能となるため、テレビ等のマスメディアによる情報発信と比べてユーザーの目に留まりやすく、ブランド認知効果や、広告を経由した商品購買のコンバージョン率も高くなりやすい。

短時間で多くの情報量を提供できる

文字や画像を用いたコンテンツと比較して、動画はより多くの情報量を分かりやすく凝縮させることができる。”動くものほど人間の目に留まりやすい”という性質も相まって、それまで文字や画像だけでは認識されなかったコンテンツも、動画にすることで、より多くの人の目に触れる可能性が高まるのだ。

さらに、短時間の動画であれば、ユーザーは集中しのめり込んで視聴するため、非常に高い訴求効果も期待される。動画の構成やビジュアルを工夫し、インパクトのある情報を提供することで、SNSを通じて一気に拡散されることもあるだろう。

ただし、あまりに長い動画を載せるとユーザーが離脱してしまう恐れも高まるため、適切な動画時間を見てコンテンツを作り上げることも重要だ。

5G時代の到来で、動画コンテンツの価値が高まる

動画コンテンツの威力を今後ますます拡大させることとなるのが、5G技術だ。超高速かつ低遅延なインターネット通信を可能とする5G技術は、我々のインターネット体験を飛躍的に高めてくれるだろう。それは、企業のブランディングや広告配信においても様々なメリットがもたらされることを意味する。

5Gの世界が具体的にどのような新しいサービスを生み出せるかについては議論の最中ではあるものの、位置情報や画像認識情報などの複数得られる情報をリアルタイムにかけ合わせたり、企業側とユーザー側がインタラクティブ (双方向) にやりとりできる仕組みを応用したりするなど、マーケティングやブランディングのシーンで応用できる技術は多い。

さらには、近年やや軽視されてきたテレビの存在も、その価値が飛躍的に向上するとも言われている。あらゆるデバイスがインターネットに接続されることで、それまで情報の発信媒体としてだけの存在だったテレビに新しい役割が生まれ、その価値が再認識されるかもしれない。

メディア産業の変遷と動画コンテンツ時代の到来へ

こうして見ると、今回のUUUMと吉本興業との提携は、コンテンツ発信におけるマスメディアとデジタルとの融合を、「動画」という技術を軸に加速させていくためのスタートラインに当たるのではないかと見ることもできる。マスメディア界のお笑いの王者である吉本興業と、デジタル界のタレント配信の先駆者であるUUUMが、今後どのような形でメディアの世界を変えていくのかに注目したい。

また、今回は動画を活用した企業のマーケティングやブランディングの魅力についても紹介した。今後ますます重要な位置を占める動画の役割を再認識し、企業の情報発信戦略にぜひ役立ててほしい。

文・森琢麻(M&Aコンサルタント)

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