Painty(ペインティ)
タリス(東京都渋谷区)
木村 征子 副社長
-アルコール飲料を飲みながら絵を描く-そんなアメリカ発祥のアクティビティ「Paint and Sip(ペイントアンドシップ)」をご存知だろうか。ブームはすでに世界中へと拡散、日本でも日を追うごとに注目度が高まっている。いち早くこれに着目し、2017年8月に「Painty(ペインティ)」として日本で事業を開始。現在、直営とフランチャイズで9店舗を運営しているタリス(東京都渋谷区)の木村征子副社長に、「ペイントアンドシップ」の魅力や今後の事業展開などについて話を聞いた。(※2020年6月号「注目のNEW FCビジネス」より)
ストレス発散に繋がるアート交流会
アメリカで2007年頃に始まったとされる「ペイントアンドシップ」。お酒を飲みながら、講師の手本を参考にして絵を描くという新しいスタイルのアクティビティは、〝第2のヨガ〞と呼ばれるほどの一大ブームを巻き起こし、全米を飛び出し、すでにヨーロッパやアジアなどにも広がっている。アメリカだけでも1000を超える店舗が存在すると言われ、北米を中心に活動する最大手の「ペインティング・ウィズ・ア・ツイスト」(運営:Painting with a Twist:ルイジアナ州)は、フランチャイズで300店舗以上を展開している。全米全体では、毎日5000ヶ所以上でイベントが開催されているそうだ。
お酒を飲みながら絵を描くイベントが、なぜこれほど大きなブームになっているのか。日本におけるペイントアンドシップの第一人者として、「ペインティ」を主宰するタリスの木村征子副社長は、「ストレス社会において、癒しに対するニーズが増えていることが追い風となっている」と話す。どうやら、美術鑑賞やアートを作ることで得られるアートセラピー効果を求めて参加する人々が多いようだ。もちろん、インスタに代表されるSNSが若者たちの間で流行していることも無関係ではないだろう。
全米だけでも、市場規模はすでに相当な額に達していると推測される「ペイントアンドシップ」だが、日本で本格的なブームが訪れるのはこれからだ。その火付け役となるべく、2017年8月に恵比寿で試験的にイベントを初開催したのを皮切りに、積極的な事業展開を進めている「ペインティ」は、昨年12月にフランチャイズ募集をスタートした。現在、直営・FCを合わせて9店舗を展開している。
「ペインティ」の運営形態は、既存の飲食店の空き時間を利用してイベントを開催する〝飲食店型〞と呼ばれるモデル。自前の店舗が必要ないため、少ない初期投資で開業できるのが特徴だ。全米で展開する「ペイントナイト」(運営:yaymaker:マサチューセッツ州)は、この方式で年間100億円の売上を上げていると言われる。ちなみに、先述したペインティング・ウィズ・ア・ツイストは自前で用意した店舗でイベントを行う〝スタジオ型〞と呼ばれるモデルの事業者。他にも「ピノッツ・パレット」(運営:Pinot’s Palette:テキサス州)などが、このモデルで多店舗展開している。
30代女性中心に延べ4000人が参加
初期費用は加盟金30万円と研修費30万円、人数に応じた備品代が10万円〜。加盟対象は個人・法人を問わない。主に50歳代以上男性や美大出身の主婦の副業を想定している。埼玉県大宮市の50歳代の加盟店オーナー(メーカー勤務)は、最初、SNSで「ペインティ」の存在を知ってイベントに参加。「アートクラフトを生活の身近にする」というコンセプトに共感し、加盟を決断したという。現在初開催に向け準備を進めている。
イベントを開催するための飲食店の開拓と講師(オーナーが務めることも可能)の募集はオーナーサイドで行う。飲食店の開拓はハードルが高いように思われがちだが、営業時間外でドリンクの売上が上がるほか、店舗のPRにもつながるなどメリットが大きいため、比較的容易に見つけることができるという。講師についても、美大卒の経験を活かせる数少ない場であることや、1イベントにかかる時間が2時間と短く、主婦が家事と両立しながらできることなどから、探すのに苦労することはないそうだ。
利用者のほとんどは30代の女性。集客は、本部が運営するウェブサイトでの告知の他、オーナー自身がSNSなどを活用して行う。これまでの参加者は、すでに延べ4000人を超えているという。
収支モデルは、自分で講師をして25人(チケット単価3980円)のイベントを月に16回行った場合、売上は159万2000円。決済手数料や30%のロイヤリティなどを差し引いた約62万円がオーナーの利益となる。同じパターンで講師を雇った場合は、さらに人件費9万2000円を差し引く計算だ。
今後について木村副社長は、「絵画教室のように絵を上手く書くことが目的ではなく、〝お酒を飲みながら楽しく絵を描きましょう〞というのが、このイベントのコンセプトです。新しいレジャーとして世に広めていくことができればと考えています」と話す。これから欧米のような一大ブームが巻き起こるかどうかは、「ペインティ」の活躍ひとつにかかっていると言っても過言ではない。