生産性向上は、既にどの企業においても重要な経営課題で、大なり小なり取り組みを行っているはずです。しかし、芳しくない成果に留まるケースも多いのではないでしょうか。本稿は生産性を飛躍させるためにメスを入れるべき、根本的課題について解説します。
生産性が上がらない理由
ほとんどの企業が生産性向上の必要性を理解しています。そして何らかの取組みを行っています。にも関わらず、満足できる成果が上がらないという問題を抱える企業が多くあります。それはなぜでしょうか。
生産性向上の成果がでない企業には、共通点が見られます。無策であるか、根性論に終焉しているという点です。
生産性向上を掲げながらも、その策を経営陣が持ち合わせていないか、示せていないかで、「自分で考えろ」というのが無策です。「努力が足りない」「考えが足りない」というのが根性論です。
無策や根性論の中で、一人一人の社員が個人レベルで絞り出した結果では、会社の業績にインパクトを与えるほどの生産性の伸びは期待できません。
なぜなら、個人の創意工夫レベルでどうにかできるところにボトルネックはないからです。
生産性を上下げする根本的な要因は、その企業が生産性を上げる組織構造になっているかどうかという点にあります。つまり、構造上の問題なのです。
組織構造のどこにメスを入れるべきか
では、生産性を上げられるような組織構造にするために、一体どこにメスを入れるべきなのでしょうか。
生産性を高めるアプローチには大きく2つあります。戦術的アプローチと戦略的アプローチです。
戦術的アプローチとは、やるべき仕事をいかに時間やコストを掛けず高い成果を出すかということを考え、実践する方法です。一方で、戦略的アプローチとは、そもそもやるべき仕事から見極めるという方法です。
戦術的アプローチで上げられる成果はいくら努力しても、たかが知れています。1割、2割向上というのが通常で、2倍も上がれば御の字というところではないでしょうか。
しかし、戦略的アプローチが有効だった場合の成果は10倍、100倍、場合によっては1,000倍以上という大きな数字を叩き出します。
既にお察しの通り、メスを入れるべきは戦略的アプローチに関する組織構造です。
生産性を飛躍させる組織構造の見直し方法とは
では、戦略的アプローチに関する組織構造とは、具体的にはどういうことでしょうか。どのようにして、組織構造を見直せば良いのでしょうか。
具体例でイメージしてみましょう。例えば、「取引先から仕事を受けた」という状況を想定します。
この仕事の今までのやり方を見直し、メールのやり取りをチャットにしたり、紙を無くしペーパレスにしたり、属人的なやり方から標準化したりマニュアル化する、というのは戦術的なやり方です。生産性への影響は多少ありますが、業績に影響するほどの改善は考えにくく、現場にかかる負担も大きいのが現実です。
これを、この仕事を受けるべきかということを考える、仕事の受け方の作戦から練っていくのが戦略的アプローチです。
前者はとりあえず仕事を受けて、そこからどうするか考える、後者は仕事を受けるかどうかから考えているという違いがありますが、どこから考えるかによって、取り組む前から既に天と地ほどの差がついています。
この大きな差が、もし競合他社と自社との間でついてしまっていたらと考えると…本当にゾッとする話です。
では、この後者にフォーカスして、戦略的アプローチ、つまりその仕事を受けるべきかという判断を出来る組織構造にする方法を考えていきましょう。
組織構造とは、事業部制や機能別組織、ピラミッドやティール組織かどうこうということではありません。
戦略的アプローチの行動を促す仕掛けを作り、社内に散りばめるということです。この例で考えると、下記のような具体例があります。
組織構造見直しの具体例
・受けるべき仕事かどうかを議論する場を作る。(会議体)
・受けるべき仕事かどうか決定する場や方法を決める。(意思決定)
・受けるべき仕事とそうでない仕事の判断基準を作る。(ルールや共通の価値観)
・過去の仕事の受け方の事例や判断の経緯などを情報共有できる仕組みを作る。(情報活用)
・仕事の受け方を評価する。(人事評価)
・仕事を受け方の判断をできる人に育てる(人材育成)
いかがでしょう。自社でやるべき組織構造の見直し策も、少しイメージが湧いてくるのではないでしょうか。
まとめ
生産性向上はどの企業にとっても重要な経営テーマとして位置付けられていますが、取り組みのレベルには天と地ほどの差があり、この差は加速度的に開いてしまうものです。
気づいたときには時すでに遅しとならないためにも、一刻も早く無策や根性論がベースとなった個人レベルの取り組みから脱却し、生産性を左右する最大の要因である組織構造に向き合うべきです。
組織構造の見直しというと、大それた策のような気もしますが、内容は前述の通り現実的です。戦術的アプローチで業務を標準化するよりも、戦略的アプローチで会議体を作る方が企業にとっては容易なケースもあり、決して理想論ではありません。
同じ生産性向上の取り組みを続ける企業なら、どこに着目するかの視点の違いだけです。一度視点をずらせば、どの企業でも生産性を飛躍させる大きな伸びしろがあるはずです。
是非この機会に、希望を持って有効な取り組みにフォーカスし、貴社の生産性を飛躍させてください。
この記事の効果をさらに高める12分トレーニング
すぐに行動に移すことで、この記事を読んだ成果は飛躍します。そこで、インプットの生産性を高めるための12分トレーニングを準備しました。お時間ある方は是非。
用意するもの
・メモできるもの(スマホでも、紙とペンでもOK)
・時計(ストップウォッチ)
ステップ1…1分
自社で今すでに取り組んでいる生産性向上の戦術的アプローチの取り組みについて【1分】で書き出してください。
ステップ2…2分
上記の書き出した取り組みに対する戦略的アプローチを【2分】で書き出してください。
ステップ3…1分
それが出来ればさらに【1分】使い、それを組織構造に落とし込む策を思い当たる限り書き出して下さい。
ステップ1~3を3回繰り返す。
上手くいかなくても大丈夫です。書き出した内容の質よりも、この方法を実践することに目的があり、3回も行えば、すでに思考の型を習得できつつあります。この方法で考えれば、会議で何人も集まって何時間も議論したり、生産性に関する本を何冊も読むより、はるかに生産性の高い生産性向上の糸口を見つけられるはずです。
是非、実践してください。
(提供:税理士法人M&Tグループ)