矢野経済研究所
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ECサイト運営における2024年度の顧客定着化施策に関する注力ポイントでは、メールマガジンなどの「メール配信」が圧倒的に高い割合に

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内インターネット通販(主に消費者向け物販分野)市場の調査を実施し、商品・サービス分野別、参入企業の動向を明らかにした。ここでは国内ECサイト運営事業者を対象に実施したECサイトの運営状況等に関する法人アンケート調査から、2024年度のECサイト運営における注力ポイント(集客、顧客定着化施策、ECサイト内における消費者の利便性(ユーザビリティ)、AI活用)について取り上げる。

2024年度のECサイト運営における注力ポイント

2024年度のECサイト運営における注力ポイント
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1.調査結果概要

経済産業省の「令和5年度電子商取引に関する市場調査」※によると、2023年の物販系・サービス系・デジタル系分野を含むBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、24兆8,435億円(前年比109.2%)となっている。このうち物販系分野は14兆6,760億円(同104.8%)であった。同年のEC化率が9.38%(同0.25ポイント増)となった物販系分野では、新型コロナウイルス禍の影響を受け拡大した2020年、2021年と比較すると緩やかではあるが、堅調に推移をしている。

インターネット通販(EC)市場は、前年に続き、食品のサブスクリプションサービスやネットスーパーを展開する企業のインターネット通販売上高が好調に推移している。経済産業省のデータ※では、「食品、飲料、酒類」のEC化率は、2023年で4.29%(前年比0.13ポイント増)と他の物販分野と比較すると低い数値である。しかし、同分野(食品、飲料、酒類)の2023年BtoC-EC 市場規模は2兆9,299億円(同106.5%)と着実に拡大しており、3兆円規模が目前に迫っている。ECにおける食品分野は、ネットスーパーを中心に拡大を続けているほか、消費者のライフスタイルにあったサブスクリプションサービスの利用も伸長している。こうした背景から、同分野は依然として大きなポテンシャルを秘めており、今後も成長が期待される分野と考える。

※出典:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」

2.注目トピック

国内ECサイト運営事業者法人アンケート調査~2024年度ECサイト運営における注力ポイント~

本調査に関連し、2025年5月~6月に国内のECサイト運営事業者58社(衣類・服飾雑貨、食品、化粧品、スポーツ用品、日用品、生活雑貨などのメーカー、及び小売事業者)に対し、EC(インターネット通販)事業における消費者への施策や運営に関する取り組みについて、法人アンケート調査を実施した。ここでは2024年度のECサイト運営における注力したポイント(複数回答)について、集客、顧客定着化施策、ECサイト内における消費者の利便性(ユーザビリティ)、AI活用の分野について一部の分析結果を公表する。なお、AI活用の分野については国内のECサイト運営事業者58社(同)のうち、回答のあった46社を対象とする。

<集客関連>
集客関連(複数回答)では、「リスティング広告」(67.2%)が最多で、次いで「SEO対策」(63.8%)、「SNSを活用した集客」(60.3%)と続いている。なお、本調査における回答事業者の取組事例(自由記述)として、タクシー広告を実施した事業者も見受けられた。

<顧客定着化施策関連>
顧客定着化施策関連(複数回答)では、「メール配信(メルマガなど)」(81.0%)が圧倒的に高い割合を占めた。次いで、「キャンペーン企画の実施」(58.6%)、「顧客データの管理・分析」(56.9%)で、いずれも5割を超えている。集客関連では「SNSを活用した集客」が3位であったのに対し、本項目では「SNS活用」が5位に位置する。本調査結果から、SNSは主に集客を目的とした施策であるのに対し、顧客定着化の観点では、メールマガジンなど従来から活用されているツールの方が効果的であると考える。

<ユーザビリティ関連>
ECサイト内における消費者の利便性(ユーザビリティ)関連(複数回答)では、「商品情報の拡充」(67.2%)、「サイト内コンテンツの拡充」(67.2%)が、いずれも7割近い割合となっている。次いで、「サイトUI/UXの向上」(58.6%)が続いている。本項目では、コンテンツ拡充(商品情報含む)とUI(ユーザーインターフェイス)※/UX(ユーザーエクスペリエンス)※の向上が主な施策であり、2024年度時点ではスマートフォンアプリの開発や活用に取り組んでいる事業者は13.8%と比較的少数であることがうかがえる。

<AI活用関連>
AI活用関連(複数回答)では、「商品レコメンド機能」(43.5%)が最多で、「顧客サポート(チャットボットなど)」(39.1%)が続く。「商品説明文の自動生成」(28.3%)も、3割近い割合を占めている。本項目では、商品面(レコメンド・説明文)や顧客対応での活用が主であり、2024年度時点ではAIの精度などの課題から、需要予測にはそれほど活用されていないことが示唆される。

※UI(ユーザーインターフェイス)とは、ウェブサイト内におけるボタンやレイアウトなどの見た目のデザイン的な要素をさし、UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、当該ウェブサイト内コンテンツから得られる利便性や満足感などの消費者体験全般をさす。

調査要綱

1.調査期間: 2025年4月~6月
2.調査対象: 通信販売事業関連企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接(オンライン含む)及び電話によるヒアリング、アンケート調査、文献調査併用
<インターネット通販市場/ECサイトの運営状況等に関する法人アンケート調査とは>
本調査におけるインターネット通販市場とは、インターネットをチャネルとする消費者向け(BtoC)の電子商取引(E-Commerce)をさし、主に物販、サービス、デジタルの3分野を対象とする。

また、本調査におけるECサイトの運営状況等に関する法人アンケート調査とは、2025年5月~6月に国内のECサイト運営事業者58社(衣類・服飾雑貨、食品、化粧品、スポーツ用品、日用品、生活雑貨などのメーカー、及び小売事業者)に対し、EC(インターネット通販)事業における消費者への施策や運営に関する取り組みについて、法人アンケートを実施した。ここでは2024年度のECサイト運営における注力したポイントについて、集客、顧客定着化施策、ECサイト内における消費者の利便性(ユーザビリティ)、AI活用の分野について一部の分析結果を公表する。なお、AI活用の分野については国内のECサイト運営事業者58社(同)のうち、回答のあった46社を対象とする。
<市場に含まれる商品・サービス>
【物販】①総合小売(通販、カタログ、TV・百貨店・GMS・CVS) ②家電・パソコン・関連商品 ③書籍、映像・音楽製品 ④食品、飲料・酒類、健康食品 ⑤医薬品、化粧品 ⑥ 家具・インテリア、雑貨、日用品 ⑦衣類・服飾雑貨等 ⑧スポーツ用品 ⑨自動車・二輪車、パーツ等 【サービス】⑩宿泊・旅行サービス、交通機関 ⑪飲食関連サービス ⑫興行チケット予約 ⑬金融サービス(ネット銀行・ネット証券) ⑭ネット専業生命保険 ⑮理美容関連サービス ⑯フードデリバリーサービス 【デジタル】⑰電子出版(書籍・雑誌) ⑱有料音楽配信 ⑲有料動画配信 ⑳オンラインゲーム

出典資料について

資料名2025 ネット通販市場白書
発刊日2025年06月19日
体裁A4 598ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

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