矢野経済研究所
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8月18日、金融庁はフィンテックベンチャーのJPYC株式会社(代表取締役 岡部典孝)を改正資金決済法にもとづく“資金移動業者”として登録、円建てステーブルコインの発行を承認した。JPYCは裏付け資産の透明性や即時償還性をはじめとする厳しい法的要件をクリア、日本円と1:1で連動するステーブルコインを発行する国内初の事業者となる。

JPYCは、トークンの発行体がカストディ業務(顧客の資産を預かること)を行わないことを前提とするスキームでビジネスを設計、本人確認手続きをマイナンバーによる公的認証サービスに一本化するなど、シンプルで信頼性の高いシステムを実現した。購入者は銀行振り込みで円を支払うと1円に対して1JPYCのトークンがデジタルウォレットに送付される。

この6月、米ドル建てステーブルコインUSDCを発行するCircle Internet Group(サークル社)がニューヨーク証券取引所に上場、公開価格31ドルに対して一時263ドルまで急伸、大きな話題となった。現在、国際デジタル金融市場はUSDCやUSDTなどドル建てのステーブルコインが市場を占有、取引規模は既に40兆円に迫る。これに対して中国も人民元に連動したステーブルコインの発行を準備、決済通貨における人民元の劣位挽回を目指す。

法定通貨と連動するステーブルコインはそれゆえ通常の商取引や日常の支払いに置き換えることが可能だ。クレジットカードやQRコード決済のように加盟店網を構築する必要もない。したがって店舗の利益は増える。割高な国際送金手数料も軽減される。経済活動全体に与えるインパクトは小さくない。今、世界ではデジタル経済圏における覇権を巡る競争がし烈化しつつある。ブラジルの即時決済システムPIXも南米から欧州、インドへの拡大を目指す。こうした状況を踏まえ、当社も緊急レポート「ステーブルコインが変革する金融市場の未来と社会・経済活動に与える影響度分析」(仮題)の発刊を準備中である。ご期待いただきたい。

今週の“ひらめき”視点 8.24 – 8.28
代表取締役社長 水越 孝