2019年のクラウド基盤サービス市場は、前年比134.5%の7,800億円
~オンプレミスからのクラウド移行、コンテナ、マイクロサービスへの需要が拡大し、マルチクラウド化も進展~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場を調査し、市場規模推移・予測、クラウドベンダ動向、新サービス普及状況等を明らかにした。
クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)市場規模推移と予測
1.市場概況
既存情報システムのクラウド移行が引き続き市場を牽引する形で堅調に推移しており、2019年の国内クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場(事業者売上高ベース)を前年比134.5%の7,800億円と推計する。
ハイブリッドクラウドは、最早一般化した。プラットフォームを適材適所に使い分け、またリスクを分散させる目的などから、2019年はコンテナやマイクロサービスへの需要が拡大し、IaaS/PaaSのマルチクラウド化が進展を始めた。このトレンドは今後も続く見込みである。
2.注目トピック
金融業における利用が拡大
2019年には金融業におけるサービス導入および利用が拡大し、大手保険会社や証券会社でAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureなどを採用する事例が増加した。またメガバンクや地方銀行などでもクラウド基盤サービスを活用し、その適用範囲を広げようとしている。
最近は、勘定系システムの基盤にパブリッククラウドを採用する事例も増えつつあり、これらのシステムが稼働後、何も問題がなければ勘定系システムの基盤にパブリッククラウドを採用する流れが起きるとともに、これまでセキュリティを理由にパブリッククラウドを敬遠してきたユーザー企業等におけるサービス利用も増加し、クラウド基盤サービス市場の成長スピードは加速すると考える。
3.将来展望
2020年は政府情報システムにおける「クラウド・バイ・デフォルト原則」を背景に、公共分野におけるクラウド基盤サービス利用の拡大が期待でき、各クラウドベンダも注力業種のひとつに挙げている。もっとも、公共分野は民間と比較すると検討から導入までに要する期間が長い、あるいは地域特有の事情があるなどの理由から、これらに理解のあるパートナーの確保がポイントになる。
また、今後はオンプレミスからのクラウド移行だけではなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目的としたサービスの活用や、IoT、AI、5Gなどの普及が進み、大量のデータ管理やその分析が必要になると考える。海外でクラウド内のデータが漏えいする事故があったことなどを受け、クラウド内のデータ管理に注目が集まった。2020年以降は、国内でもクラウド内のデータ管理が注目され、データ管理に関するノウハウを持ったクラウドベンダが台頭していくと考える。
市場規模が拡大したことにより、成長率こそ低下していくが、市場は高い成長を継続し、2023年のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場(事業者売上高ベース)は1兆6,700億円に達すると予測※する。なお、2017年から2023年までのCAGR(年平均成長率)は25.4%で成長する見通しである。
※なお、本予測では新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮していない。