
先週に続き参院選を取り上げる。今回の選挙の候補者数は522人、そのうち女性は152人、シェアは29.1%、政府が掲げてきた「2025年までに国政選挙における女性候補者比率を35%に」との目標には届かなった。しかしながら、当選者数125人のうち女性は42人、構成比は33.6%、はじめて3割を越えた。改選者における女性比率が政策決定に影響を与え得る最低限の数値と言われる“30%”に達したことは“男女共同参画”の視点において一歩前進である(参議院全体における女性比率は非改選を含めた参議院議員248人に対して女性73人、割合は29.4%)。
6月12日、スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が“ジェンダーギャップ指数2025”を発表した。148か国中トップはアイスランド、これにフィンランド、ノルウェー、英国が続く。米国は42位、韓国101位、中国103位、日本はアンゴラとブータンに挟まれた118位だ。同財団は「高所得国ほどジェンダーギャップの縮小がみられる。グローバル経済の不確実性が高まる中、ジェンダーギャップの解消は経済の原動力となる」と指摘する。因みに日本の指数0.666は“下位中所得国”に相当、教育、健康はトップクラスであるが、政治参画と経済参画の数値が足を引っ張る。
さて、今回、過去最高となった女性議員比率に大きく貢献したのは女性議員7名を当選させた新興右派政党である。「少子化の原因は行き過ぎた男女共同参画にある」、「将来の夢はお母さんという価値観を取り戻す」と公言する党首が率いる政党の躍進は、女性の政治参画という数値要件の向上に貢献したものの社会的価値観の変容を伴う“ジェンダー平等”はむしろ遠ざかったと受け止めるべきかもしれない。そして、それが民意のトレンドであるとすれば、今、日本社会は大きな転機を迎えつつあると言える。
復古主義、伝統主義への女性(=弱者と言ってもいい)の側からの支持、同調、あるいは迎合はそうした権威と既得権の庇護のもと、その内側に入り込むための最短ルートである。とは言え、例えそうしたところで多くの一般女性は既得権の外側に取り残されたまま、古い価値観にもとづく道徳に縛られ、人生の選択肢は狭められる。社会の分断は進み、やがて階層化される。すべての可能性を認め、開放すること。そのための制度を整えること。“停滞”に抗う戦略の有効性はこちらにあると筆者は考える。
今週の“ひらめき”視点 7.27 – 7.31
代表取締役社長 水越 孝