外資系で学んだすごい働き方
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(本記事は、山田 美樹氏の著書『外資系で学んだすごい働き方』プレジデント社の中から一部を抜粋・編集しています)

専門的スキルは、π型で高めていく

ビジネスプロフェッショナルとして、キャリアを伸ばすために行うべきことは、①スキルを高めること、②経験の幅を広げること。

この2点につきます。求められる具体的内容は、働いている業界、職務によって変わりますし、キャリアのステージによって変化していきますが、どのキャリアステージにいる人もスキルと経験を身につけていかなくてはならないという点は変わりません。

ビジネスプロフェッショナルとして常に考えておくべき点を、もう少し具体的に紹介しましょう。

人材価値を上げていくためには、専門となる分野を定めて、その分野のスキルを高めていくことにつきます。

ただ注意したいのは、日本人は一つのことだけを深く極めていきがちで、一つのことを極める「美学」を意識しすぎる方が多いということです。

磨き上げられた「匠の技」というのでしょうか。仕事においても一つのスキル、一つの専門性を深く突き詰めた「スペシャリストタイプ」への憧れが強い。

しかしこれは、キャリアの面から見ると、かなりリスクが高い働き方です。極めたスキルや専門分野が重要ではなくなってしまったら、あるいは全く必要でなくなってしまったら、人材価値は急下降してしまうからです。

現代は物事の変化のスピードが非常に速い。変化に対応しながら、人材としての価値を保ち生き残っていくためには、いくつかの専門、いくつかのスキルを持っておく必要があります。人材価値は、線の長さや、掘り下げた深さよりも、これまでの経験の幅と横の広がりも加えた、面積の大きさで測られるからです。

スキルについては、技術や経験の「深さ」、網羅する範囲の「広さ」という2つの軸があります。

しかし陥りがちな間違いは、薄く広くさまざまなスキルを知っているパターンです。英語では、「シンリースプレッド(thinly spread)」といいます。パンにバターやジャムを薄くのばした状態です。いろいろなことを知っているけれども、どれも入門レベルで、専門性が積み上げられていない。プロフェッショナルとしては、意味をなしえません。

また、日本人に多い一つのスキルを深掘りしていく先ほどのパターンも危ない。ザ・職人ですが汎用性がない。そのスキルが不要になった時には、リスクだけが残ります。

ベストなのが、多様なスキルを持っていて、複数の分野を深く極めたタイプ。英語でいうと、「ブレス&デプス(breadth and depth)」がある状態です。この状態になれば、素晴らしいですが、なかなかここには到達できません。幅広い分野のスキルを深く学ぶだけの機会も時間もそんなに多く持てないからです。

そこで私がおすすめする専門スキルの伸ばし方は、いくつかの専門スキルの柱を持ちながらも、広い分野の入門知識を持っている状態です。

円周率の「π」のような形というのでしょうか。ひげ親父のひげのように太い線が、横幅と深さ、両方あるようなイメージです。私の場合は、コンサルティング経験やMBAで培った幅広い業界・職種分野の知識と、財務会計、コミュニケーション、それと人事の専門性になります。

専門スキルが一つだけという人は、せめてもう2つ、3つ専門スキルの柱を育てるようにするか経験の幅を広げてみましょう。今いる部署内で別の仕事を経験させてもらう、組織横断的なプロジェクトに参画する。あるいは異動して別の専門分野を学ぶ、転職するなど、専門スキルと経験の幅を広げる方法を考えてみましょう。また周辺分野については広く浅くとも知識を持ち、理解できる領域を広げる努力もしてみましょう。

知識・スキルと経験の幅ができると、それらを組み合わせて、新しいビジョンやアイディアを出すことが容易になります。そうすれば、企画力や他職種との連携力が強化され、より付加価値の高い、よりイノベーティブなアウトプットを出せるようになります。高度なスキルに加えて経験のバリエーションがある人は、自分ひとりでシナジーが生み出せますし、他者と組んでも新しいアイディアや価値を創出しやすい。あくまで一つの専門スキルでキャリアを作っていくのであれば、社内、あるいは業界でも知られる第一人者レベルに到達する覚悟を持ってください。