会社をたたむ際の流れ・手続き
会社をたたむと判断した後の流れを、手順に沿って解説していきます。
- 事前準備
- 取締役会・株主総会での決議
- 解散・清算人の選任と登記
- 会社解散の届出
- 会社解散の公告
- 決算書類の作成・確定申告
- 残余資産の整理
- 決算報告書の作成
- 清算結了の登記・確定申告
1. 事前準備
会社をたたむという意思決定が行われたら、会社の事業活動を終了するための準備を行います。
従業員や取引先企業への説明
従業員や取引先に対して、会社をたたむことになった旨やその経緯、廃業するまでの今後の予定について説明します。 特に従業員に対しては、「いつまで雇用が継続されるのか」や「退職金などの特別手当の支払いはどうするのか」など、丁寧に説明を尽くすことが大切です。
金融機関への説明
金融機関にも同様の説明を行うとともに、金融機関からの借入金が残っている場合は、その返済方法などについて説明します。 売掛金や未収入金などの債権の入金が、期日通り振り込まれていることを確認しつつ、買掛金や未払金などの債務の支払いも期日通り行います。
各種退会・解約手続き
会社が加入していた商工会や法人会などは退会し、生命保険や損害保険などの解約手続きも廃業日までに完了するように準備します。
2. 取締役会・株主総会での決議
業務を終了するための準備がある程度進んだ段階で、臨時株主総会を開催し、会社をたたむための「解散決議」を行います。 なお、この解散決議は普通決議ではなく、特別決議で行われなければなりません。 特別決議にあたっては、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の2/3以上の賛成が必要となります(会社法309条2項)。
(関連記事 株主総会の特別決議 →公開してたらいれる)
3. 解散・清算人選任と登記
解散決議が行われた後、清算人の選任決議を行います。 解散決議が完了すれば、会社の営業活動が終了して清算会社となります。それにともない取締役が退任するため、代わりに清算業務を執行する清算人を選出する必要があります。
なお、定款に特別の定めがなく、株主総会決議でも清算人選任の決議が行われなかった場合は、取締役が清算会社の清算人になります。 また清算人が複数人の場合は、代表清算人を選任しなければなりません。
株主総会で解散の決議と清算人の選任が完了した後、2週間以内に、解散登記と清算人登記を行う必要があります。
主な必要書類
もし2週間を過ぎて解散登記が行われない場合、法人住民税などの納付義務が生じ、法人税等の確定申告を行う必要があります。登記上では会社が存在し続けるため、会社の存在を利用したトラブルに巻き込まれる可能性が残るなど、さまざまな問題が生じるため注意が必要です。
4. 会社解散の届出
解散と清算人の登記が完了したら、「異動届出書」と「登記事項証明書」を作成・準備して、解散のための処理が必要な各公的機関公的機関に提出します。提出先は、主に以下の2つに分けられます。
税務署など確定申告に関するもの
法人の確定申告に関する書類はできるだけ速やかに作成し、以下の機関に提出します。
届出先 | 主な提出書類 |
---|---|
税務署 | 「異動届出書」 「事業廃止届出書(消費税)」 「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」 「青色申告の取りやめの届出書」など (会社の状況に合わせて必要なものを提出) |
法人の住民税・事業税を管轄する行政機関 (都道府県税事務所など) |
「異動届出書」 |
社会保険・雇用保険に関するもの
期日内に、それぞれの届出先に書類を提出する必要があるため、注意が必要です。
社会保険に関する書類:解散登記が完了してから5日以内 雇用保険に関する書類:退職日から10日以内 労働保険に関する書類:事務所を閉鎖してから50日以内
届出先 | 主な提出書類 |
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日本年金機構 | 「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」 「被保険者資格喪失届」など |
ハローワーク | 「雇用保険被保険者資格喪失届」 「雇用保険被保険者離職証明書」 「雇用保険適用事業所廃止届」など |
労働基準監督署 | 「確定保険料申告書」 「労働保険料還付請求書」など |
そのほか必要書類
5. 会社解散の公告
会社をたたむことを債権者が知らないままでいると、債権者の持つ債権が消滅してしまう恐れがあります。 そのため清算人、国が発行している官報という機関紙、もしくは個別の催告を通じて、会社を解散させる旨を公告をしなければなりません。ここで債権者に対して債権を申し出ることを呼びかけます。
官報で公告を行ってから2ヶ月以上は債権者の申し出を設ける必要があります。
6. 決算書類の作成・確定申告
最終的に会社にどれだけの財産が残るのかを確定させて株主への分配を行うために、決算書類の作成と確定申告を行わなければなりません。
会社が解散した場合、事業年度開始日から解散日までがひとつの事業年度とみなされるため、まずこの期間で決算書類を作成して解散日から2ヶ月以内に確定申告を行い、それにもとづいて算出された税金を納税します。
それ以降は、解散日の翌日からの1年間を1事業年度とみなし、こちらも同様にこの期間で決算書類の作成・確定申告・納税を事業年度の末日から2ヶ月以内に済ませます。1年以内に残余財産が確定すれば清算事業年度の確定申告は1回で済みますが、財産の処分や現金化などに時間がかかるようであれば、何度もこの清算確定申告を行わなければなりませんので要注意です。
7. 残余資産の整理
残余財産とは、清算手続きをして債権者に債務の支払いをしたあとに会社に残った資産を指します。 清算人が債務の支払いをすべて終え、残余財産が確定したあとには、会社の株主に残余財産を分配しなければなりません。
そして株主に残余財産を分配するには、それらをすべて現金にしなければなりません。
次のケースでは換金するまでに時間を要することが多いため、債権者と話し合いながら専門家のアドバイスをもとに計画的に支払いを進めなければなりません。
- 非上場企業の株式や立地が良くない土地などが資産に含まれている場合
- 現金や売掛金などの流動資産よりも固定資産の方が多い場合
これらの整理が済んで、残った財産を株主に分配すれば残余財産の整理は終了です。
8. 決算報告書の作成
残余財産の分配が終了次第、最後の決算報告書を作成します。この後に株主総会を開催して、株主の承認を得ます。
9. 清算結了の登記・確定申告
株主総会で清算結了の決算報告書が承認されてから2週間以内に、法務局で清算結了の登記を行わなければなりません。登記が完了すると法人は消滅し、会社の登記簿謄本は閉鎖されて、以後は「閉鎖謄本」と扱われるようになります。
またこの登記申請と並行して、最後の清算確定申告のための準備を行います。残余財産確定後の清算確定申告は、残余財産が確定してから1ヶ月以内に行わなければなりません。
こうして確定申告と納税を済ませて、最後に税務署等に清算結了届を提出すれば、会社をたたむ一連の作業が完了します。
主な必要書類