「所有と経営の分離」のデメリット

所有と経営の分離の主なデメリットは、以下の通りです。

意思決定スピードが低下する可能性がある

株主には経営者を選ぶ権利が与えられていますが、日々の具体的な経営の内容を、株主が主体的に決定するわけではありません。一方で、会社の根幹に関わるような重要事項を決める際には、必ず株主総会を開催し、株主に判断を委ねなければなりません。

株主総会の開催には、時間もコストも必要です。また経営者と株主の意見が対立すれば、最終的な決定までにどうしても時間がかかってしまいます。所有と経営の分離が進むと、こうしたプロセスがさらに複雑化するため、重要な意思決定に必要なスピード感が損なわれてしまう可能性があります。

経営者と株主の間で対立が発生する可能性がある

所有と経営の分離が進むと、経営者と株主の役割が明確になり、経営効率が良くなります。この点は経営者にとっても喜ばしいことですが、上述のように重要な意思決定を行う際には、必ず株主に意見を伺わなければなりません。

経営者の考えが常に株主に受け入れられるとは限られません。ときには対立し、企業経営がストップしてしまう恐れもあります。最悪の場合、経営陣は株主から退陣を迫られる場合もあるでしょう。また経営者と株主との対立は、経営の空白期間を作ってしまうため、会社の業績にとっても悪影響を与えてしまいます。

経営者のモチベーション低下につながる

所有と経営の分離が進むと、株価は上がり配当金も出やすくなります。株主にとっては喜ばしいことですが、経営者にとっては必ずしもそうとは言いきれません。なぜなら、経営者として得られる経済的なメリットが役員報酬などに限定されるため、会社の業績を上げるためのインセンティブが働きにくくなり、経営者のモチベーションが低下してしまう恐れがあるからです。

経営者のモチベーションが低下すると企業全体のパフォーマンスが下がるため、長い目で見ると、株主も不利益を被る可能性があります。

敵対的買収の対象となるリスクが増える

所有と経営が分離され、自社の株式が市場で売買されるようになると、資金調達という点では有利になりますが、それに応じて不特定多数の株主が自社の株式を持つようになります。

そのため、会社経営に参加するつもりがないにもかかわらず、短期的に株価を上昇させて売却益を得ようとする濫用的買収者が登場し、敵対的買収の対象となってしまうリスクが増えてしまいます。

こうしたリスクを避けるためには、必要とされる買収防衛策をあらかじめ導入しておかなければなりませんが、多大なコストがかかるという新たな懸念点も生まれます。