「生成AIの登場により、人の仕事は奪われる」そのような言葉が聞かれるようになりました。
しかし、使い方によっては仕事を進める上での強い味方になります。
では実際どのように活用できるのか、また使用の際にどのような点に注意しなければならないのでしょうか。
本連載では、生成AIの中でも主にChatGPTが人事や採用業務にどのような革新をもたらすのかについて、生成AI家庭教師として企業にコンサルティングを行う佐野創太氏に数回にわたって解説してもらいます。(文:佐野創太)(編集:日本人材ニュース編集部)
前回の記事はこちら▼
【第1回】ChatGPTはプロ人事になり得るか〜生成AIが得意な仕事、苦手な仕事とは?〜
【第2回】新卒採用の面接ヒアリングシートを、ChatGPTで10分で作成~忙しい採用担当は生成AIで先回り~
目次
選ばれる会社になるためのアイデアは、生成AIが生み出してくれる
「本当はたくさんのアイデアの中から厳選したいんです」
デジタルマーケティング会社で採用をしているAさんが、悩みを明かしてくれました。「アイデア枯渇ループ」とでも言える悩みです。具体的にはこうです。
「もっとインターンシップや説明会の表現にこだわりたいけど、締め切りが迫ってきて勢いで決めちゃっている。求人票や採用HPだってそうです。選ばれる会社になるには細部にこだわらなきゃいけない。わかってはいるんですけど時間がないんですよ」
採用広報の表現をもっとこだわりたい。おもしろいアイデアで求職者を惹きつけたい。選ばれる会社になるには、クリエイティブになる必要がある。そんな思いを持った採用担当者の方が、新卒採用にも中途採用にも増えています。
しかし、Aさんのように「現実的には無理」と諦めてしまうことが多いのが現状です。採用チームは少人数なことが多いですし、「ひとり採用担当」も多いです。「アイデア枯渇ループ」は受け入れるしかないのでしょうか?
ここで朗報です。いまは採用活動をクリエイティブにできるツールが溢れています。状況が変わったのです。生成AIブームの火付け役でもあるChatGPTを使えば、例えば「インターンシップのタイトルを5分で20個以上出す」ことが可能です。
たくさんのアイデアの中から、厳選して、磨きをかけて、求職者を惹きつけることができるようになっています。生成AIを使えば、選ばれる会社になることができるのです。
本日のテーマは「ChatGPTで採用活動をクリエイティブにする」です。選ばれる企業になるために、生成AIに「アイデア枯渇ループ」を断ち切ってもらいましょう。コピペすればすぐに使えるプロンプト(ChatGPTに入力する指示文章)も公開します。
プロンプト公開〜採用活動をクリエイティブにする思考法〜
ChatGPTを効果的に活用することはつまり、採用チームにクリエイティブパートナーを迎え入れることと同じです。
大手広告代理店出身のコピーライターがいたら…イベント会社の企画職出身者がいたら…貴社の採用活動はどう変わるでしょうか?
求職者の目に留まり、応募者の心を掴むことができるでしょう。
「貴社が第一志望です」と本音で思っている候補者が集まってくることが、ChatGPTを使ったクリエイティブの力です。
私が生成AI家庭教師として企業のAI活用をサポートする中で、実際に活用して効果の出た事例をご紹介します。
「アイデア枯渇ループ」を一緒に抜け出したAさんとの事例です。
「インターンシップのタイトルを無限に生成する具体的な方法」を通じて、貴社の採用活動をアップデートする箇所を見つけるヒントにしてください。プロンプトを見れば、生成AIをうまく使う思考法もコピーできます。
Aさんの会社ではChatGPTを使ってインターンシップのタイトルを生成したところ、応募者数が前年比で30%増加しています。でも、かけた時間は1時間かかりません。10分で候補案を出して、チームで30分話して決定したものです。
Aさんは「たくさんのアイデアの中から厳選することがようやく叶いました。しかもかなり時短できています」と効果を実感しています。これまではひとりで締め切り直前に出しており、効果検証も後手に回っていました。
ここから具体的なプロンプトと生成されたアイデアをご紹介します。少しも難しいプロンプトエンジニアリングは使いません。今すぐコピペして使っていただけます。
こちらにまとめます。
<コピペで使えるプロンプト> ・プロンプト1:あなたは大手広告代理店のコピーライターです。インターンシップのタイトルを考える思考スタイルを7つ出してください。例えば水平思考などです。 ・プロンプト2:次に記載する情報Aを学習してください。 ・プロンプト3:良いインターンシップのタイトルをつくるポイントを3つ教えてください。 ・プロンプト4:そのポイントを使って、情報Aに適したインターンシップのタイトルを7つの思考スタイルごとに3つ出してください。 |
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実践〜5分で20個以上のアイデアをChatGPTに出させる流れ〜
【ChatGPTに聞けば、タイトル迷子から卒業できます!】
最初のプロンプトのポイントは3つです。コツはChatGPTの「役割を明確にする」、「思考のスタイルを列挙させる」、「成果物の具体例を示す」だけです。
具体的には以下のプロンプトになります。
<プロンプト1>
あなたは大手広告代理店のコピーライターです。インターンシップのタイトルを考える思考スタイルを7つ出してください。例えば水平思考などです。
<GPT-3.5(無料版)>
GPT-3.5(無料版)だと思考スタイルを出すだけでなく、早急にタイトルを考えてしまいました。インターンシップの概要などを入れていないので、当然レベルは低いです。
インプット前にアウトプットすることを防ぐためには、「指示した内容だけ生成してください」などと入れるとアウトプットに急がなくなります。
GPT-4(有料版)だと思考スタイルを出すだけに留まってくれました。生成AIの活用のコツは「一回で生成させないこと」です。良質なインプットがあって、良質なアウトプットが生まれます。人間と同じですね。
<GPT-4(有料版)>
次にインターンシップの概要を学習させます。生成AIは適切なインプットによって、適切なアウトプットを出します。まさに“Garbage In, Garbage Out”(ゴミを入れたら、ゴミが出てくる)の考え方です。
<プロンプト2>
次に記載する情報Aを学習してください。
#インターンシップ概要
「実践型のデジタルマーケティングインターンシップ」を開催する。実際の顧客のマーケティング課題をインプットし、どんなマーケティングプランを立てるかを社員にプレゼンし、フィードバックを受ける
#実施する企業情報
顧客のデジタルマーケティングをコンサルティング、実務支援をする企業
#対象の学生
マーケティング、最新のITツール、トレンドに興味がある学生
情報系を専攻していたり、プログラミングの経験がある必要はない
#目的
インターンシップを通じてマーケティングの中でもデジタルマーケティングに興味を持ってもらい、以降の説明会に参加してもらえるようにする
GPT-3.5(無料版)はインプットしたことだけを返事してきました。
<GPT-3.5(無料版)>
GPT-4(有料版)はインプットしたことに加え、インプットした内容の復唱、さらには追加情報を求めてきました。ChatGPTと対話を繰り返すことで、アウトプットの品質を上げることができます。
<GPT-4(有料版)>
タイトルの質を上げるために、インターンシップのタイトルを作成するためのポイントを聞いてみましょう。
<プロンプト3>
良いインターンシップのタイトルをつくるポイントを3つ教えてください。
<GPT-3.5(無料版)>
<GPT-4(有料版)>
ここから実際に成果物を生成していきます。7つの思考スタイルごとに生成するので、すぐに大量のタイトル案が出せます。
<プロンプト4>
そのポイントを使って、情報Aに適したインターンシップのタイトルを7つの思考スタイルごとに3つ出してください。
<GPT-3.5(無料版)>
<GPT-4(有料版)>
ChatGPTを採用活動に使う「成果物」以上の狙いとは
たったこれだけの流れを辿るだけで、アイデアを短時間で大量に生成することができます。
インターンシップのタイトルだけでなく、カジュアル面談の名前をつけたり、自社を強烈に印象付けるキャッチコピーも同じ流れでつくれます。生成AIの使い方を知るだけで、選ばれる会社になるためのクリエイティブを手にすることができるのです。
とはいえ、出てきたアイデアを改めて眺めると「そのままは使えないな」と思うはずです。私も出版したりWebメディアの編集長をしてきた経験があるため、「ブレストするレベルだな」と感じます。顧客からも「そのレベルなら使わなくていいんじゃないですか?」と聞かれることもあります。
しかしあえて申し上げます。だからこそ、生成AIを使ってください。ChatGPTで出したアイデアを見て「まだまだ」「そうじゃないんだよ」「もっとこうしてくれよ」と苛立ちにも似た感情に気づくはずです。それは「欲」です。「採用活動をもっと良くしたい」という良くです。
その欲はさらに高品質のアイデアをつくり、さらには社内にも浸透させる原動力にもなります。これまでなんとなく発信していた採用の情報が、求職者の印象に強烈に残るコンテンツに生まれ変わります。
ChatGPTを「成果物を出すためのツール」とみなせば、ただの便利なツールです。多くの企業はセキュリティだったり導入のコストだったりに躊躇して使わないでしょう。しかし、生成AIの最大の効果は、ChatGPTを使って生み出される欲や時間です。欲や時間が増えれば、現場の人間をもっと巻き込めるかもしれない。経営陣をさらにその気にできるかもしれない。その先に「選ばれる会社」の輪郭がはっきりし、いずれは「なんとしてでも入社したい企業」というブランドだってできるはずです。
採用活動を通じて会社をより良くしていきたい。そんな真摯な思いを抱いている採用担当者の方に、生成AIを受け取っていただければ幸いです。
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