静岡市が主催するアクセラレーションプログラム「静岡市アクセラレーションプログラム」のデモデイが2月22日(木)に開催されました。
静岡市アクセラレーションプログラムは、成長意欲の高い事業者や起業家、外部パートナーとの協創活動によりさらなる事業拡大を目指す事業者へ集中的に支援を行い、静岡市経済の持続的な発展と新たな産業や雇用の創出を目的としています。サポート企業としてEXPACTも運営に携わっており、デモデイのアントレプレナーシップセミナーには、代表の髙地も登壇いたしました。
本記事では、採択企業である株式会社GooZENラボの代表である梨本祐介さんに、起業の背景や事業内容、これからの展望についてインタビューを行いました。
ぜひ、最後までご一読ください。
静岡市アクセラレーションプログラムに関する詳しい記事はこちら↓
https://expact.jp/shizuoka_acceleration/
デモデイの様子はこちら↓
https://youtu.be/GAHZU0HV_b0
ー本日はよろしくお願いいたします。まずはじめに梨本さんの経歴、キャリアについて教えてください。
静岡市出身です。一橋大学商学部で経営学を専攻し、コーポレートファイナンスを学びました。その後、大学院でMBAを取得し、外資系IT企業に就職。データサイエンティスト兼コンサルタントとして、ピープルアナリティクスや営業・マーケティング改革など、様々なプロジェクトに携わりました。管理職に昇格後は、約10名の若手チームを率いるとともに、新卒採用選考にも関与しました。
そして2023年、新たな挑戦として株式会社GooZENラボを起業しました。
ーかなり幅広く様々な業務を担当されてきたのですね。静岡での起業に至った経緯についても教えてください。
やはり”地元静岡を元気にしたい”という思いが強かったですね。
以下の図の、ショッキングなデータをご存知でしょうか。
実は、静岡県は四年連続で移住希望者ランキング一位に選ばれています。
ですが一方で、人口転出でいうと四十七都県でワースト八位でして、若者を中心に都内へ人口が流出しており、このギャップが大きいのが、静岡県の実態となっています。
静岡には隠れた優良企業がたくさんあるのですが、学生や転職活動をしている人にはその魅力を知ってもらうことができず、誰もが知る有名企業しか認知してもらえないという現実があります。 まずは、企業を知ってもらうというところからしっかりやっていく必要性があるんじゃないかという思いがありました。
ーかなりショッキングなアンケート結果ですが、就職の選択肢が増えることが解決の糸口なりそうですね。梨本さんの目指している世界観や、事業のビジョン、実現したい未来についても教えてください。
事業ビジョンとしては先ほどのお話にも繋がりますが、今は以下の図の、左側の世界であるAIやレコメンドに依存した世界がかなり大部分を占めていると思っています。
Amazonでおすすめの本が出てきたり、グルメサイトでスコアの高い人気のお店が紹介されるというのは、ある意味外れの少ない選択肢で安心できますよね。
ただ一方で、この右側の世界に、人生の幅を広げるような、ワクワクするような選択肢があると思っていて、この世界が今、かなり小さくなってしまっているのが現状だと思っています。
我々は、AIやレコメンドによる世界を無くしたいわけではなく、バランスがとても大事だと思っています。
できるだけこの右側の世界を広げていくお手伝いができないかなというのが、弊社の大前提であり、一番根幹にあるところになっていますので、ここをうまく広げていく活動を様々な領域でやっていきたいと考えています。
一番最初のステップとして、ピープルアナリティクスや採用に取り組んできたということもあり、図の一番下側の、関心のなかった業界での天職を見つけるという領域で色々と活動しています。
ーたしかに、わくわくします!では梨本さんがなぜ偶然性のほうが面白くて大切だと考えられるようになったのか、その理由をお伺いしたいです。
理由はいくつかあります。例えば採用活動に携わる中で、大手企業に入社される学生さんは皆さん優秀で、コミュニケーション力もある方が多いのですが、うちのカルチャーとは合わないよねっていう方も結構いるんですよね。
入社三年以内に辞める人が三割と言われる要因もそこにあると考えています。
やはり人気や知名度など、そういった先入観みたいなバイアスを皆さん持っていて、それがAIやレコメンドサービスによって更に加速しています。
ですがこの評価というのは、平均的な満足度でしかないわけです。
レストランでも星四のところはもちろん普通に美味しいですが、星二しかついてなくても、僕は好きだよみたいなケースってありますよね。
つまりAIやレコメンドサービスによって、選択肢はランキング上位層だけが占めていて、就職活動においても同様のことが起きてるというのが、僕が採用活動や管理職のマネージャーとして若手を育成している中で感じていた部分でした。
ではAIの対極にあるものって何だろう?と考えた時に、「偶然性」ではないかと気付いたんです。
ー採用活動をされていた梨本さんならではの気づきですね。HR領域以外での展望や、次のステップについてもお考えですか?
正直まだ考え中なのですが、仕事選びは活動の頻度と重要性という軸で見た時に、そんなに頻繁にやることじゃないですよね。
基本一度に一社しか就職しない訳ですし、三ヶ月に一回転職活動するというわけではないので、意思決定の頻度というのは少ない。一方で、一回の意思決定は人生を左右する重要な意思決定な訳です。
これに対して逆サイドの領域、意思決定の頻度は多いですが、一回一回の意思決定はそこまで重要じゃない。つまりちょっと間違えちゃってもうまくいかなくても、別にいいよねという領域があると思っています。
例えば偶然お店を見つけて、仮に美味しくなくてもそこまで大きな痛手にはなりませんし、たまたま穴場の美味しいお店見つけましたとなれば、それはそれで価値があると思っているので、そういった意味で仕事選びと真逆の領域にも挑戦したいという気持ちがあります。
ー新たな領域での挑戦も面白そうですね!現在展開されている具体的なサービスの内容と特徴についてもお聞かせください。
現在GooZENというサービスを提供しています。
こちらは就活生や求職者向けに企業の紹介動画を配信するアプリですが、サービス内容としましては、三十分の企業紹介動画を日替わり配信していて、毎日様々な企業に登壇いただきます。
「偶然性」がどこにあるかといったところについては、登壇企業のお名前とかを伏せた状態で、学生にして視聴してもらうことで、企業と学生の偶然の出会いを演出しています。
配信を見ていただくと、企業と学生がそれぞれ繋がることができて、学生はインターンシップをいつやるのかといった情報を受け取ることができたり、また企業の採用担当者の方と一対一でラインのような形でコミュニケーションを取れるような機能も提供しています。
ーこの「偶然性」に着目したサービスを始められたきっかけについても教えてください。
きっかけとしては、地方の中堅中小企業は、従来の求人サイトに掲載しても、学生が検索して初めてヒットするので、知らない企業は検索してもらえないから知ってもらえないという悪循環になっていると気付いたからです。
このような問題を解消するために、配信企業の情報を事前に告知しないという「偶然性」を取り入れることで、学生は先入観なしに企業の魅力を知ることができ、企業にとっては知名度に関係なく、学生と繋がれるというWin-Winな関係を作っていきたいというのが、このサービスのコンセプトになっています。
ー学生さんと企業側、両者にメリットのある素晴らしい取り組みですね!今後の展望についても教えてください。
今後は、高校を卒業して就職する方にもアプローチしていきたいと考えています。
高校生は実は就職活動がかなり限られていて、学校の斡旋で出てきた求人しか見れなかったり、内定を取れた時点で二社目を受けないと言う状況があります。
先ほど、大学生は三年以内の離職率が三割と言いましたが、高校生は四割だと言われています。さらに高校生が就職して、最初に勤めた会社の満足度を十点満点で評価してもらったところ、0点をつける方が全体の四分の一ぐらいいたという調査結果もあります。
それだけミスマッチがあるというのが実情だと思っているので、どうにかここに食い込んでいきたいと考えています。
ー就職の理想と現実にはかなり乖離があるのですね。解決は急務だと感じます。HR領域に特化したGooZENラボですが、今後の採用計画などはありますか?
サービスの方向性は今後多少変わっていく可能性がありますが、「偶然性」というコンセプトを軸に事業展開していくつもりなので、新しい視点で考えられる意欲の高い方に入ってきていただきたいと考えています。
また、学生向けのサービスなので、若い方で挑戦してみたいと思っている方もウェルカムです。
想いに共感してくれる方と、「こういうのやってみたら面白いよね」とコミュニケーションを重ねながら一緒にプロダクトを作っていく事ができるカンパニーを目指しています。
ー静岡市アクセラレーションプログラムについてもご質問させてください。本プログラムに応募したきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
アクセラの存在については、今入居している静岡市産学交流センターの方から教えていただきました。
ビジコンにも出たことがありますが、一時的な知名度アップといったワンショットの効果がメインなので、そこからどのように継続して、認知度をどう上げていくかといった継続性という観点だと中々難しいところだと思っています。
一方でアクセラレーションプログラムは伴走型の支援ということで、そこはビジコンとは違う良さだと思いました。また、静岡市の第一期のプログラムということで、スタートアップへの支援の流れを一緒に作っていきたいという思いもありました。
ー実際にプログラムを受けられてみていかがでしたか?
このアクセラアプログラムでは大きく三つのことに取り組めたという認識です。
まず一点目はメンタリングですね。EXPACTさんとビタミンさんから月二回くらいのペースでメンタリングをしていただきました。様々な意見を言っていただくことで、気づきや多様な視点から考えられるようになったと感じています。
起業経験者や支援をされている方からのフィードバックは、非常に有益でした。
二点目はゼロワンブースターさんにやっていただいたOpen Dojoですね。こちらは起業というか、スタートアップをやる上での基礎知識や心構え、検討すべきポイントを全七回の中で改めて体系立てて整理できたと思っています。
三点目が一月中旬に実施させてもらったテストマーケティングです。
今回は、アクセラプログラムの協賛企業様に追加で動画の撮影にご協力頂き、同じく協賛大学様には学生向けにサービスの告知をお願いしました。アクセラプログラムに採択されたことで企業や学生集めがかなり進んだ部分があり、無事テストマーケティングを実施することができました。親御様向けのLIVE配信も五日間にわたって開催し、参加者のフィードバックや感想を得られたことは非常に価値があったと感じています。
ー三点目が特に大きな変化という感じがしますね。プログラムの参加前後での変化についても教えていただけますか?
そうですね。やはりテストマーケティングを実施できたことによって、様々な気づきがありました。頭で考えていたことが、実際にお客様に使ってもらい、フィードバックをいただくことで、どこが良くて、どこを改善していくべきなのかというのが、サービスという観点でより明確になりました。
また、静岡市のバックアップもあり、様々な企業様からもお声掛けをいただきましたので、認知度・知名度の向上という点でも非常に大きな成果だと感じています。
ーでは最後に、今後静岡市アクセラレーションプログラムへの参加を検討される方に一言お願いします。
このプログラムは、アクセラ自体の良さと、静岡市に協力していただけるという両方のメリットがあり、行政がバックアップしている企業なのだというお墨付きは、創業間もない企業が初速を上げるというところでも後押しになる部分だと思っています。
参加をご検討される皆さんにも是非挑戦して頂きたいです。今年も倍率が結構高かったですし、今後はさらに上がるのかなと思いますが、しっかり準備する価値はあるので、本気でやりたい方にすればこんなにいい機会はないですね!
ー就活を取り巻く環境を変化させるという意味でも、自治体との連携は不可欠だと思いますので、今回のアクセラプログラムを通じて地域一丸となり変化を起こすことができそうだと感じました。今回のインタビューはここまでとなります。ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?AIやレコメンドサービスの普及によって、世界は広がったと感じますが、実際には「偶然性」という選択肢が失われているという梨本さんならではの気づきにはハッとさせられましたし、就職は人生を大きく左右する選択だと思うので、この偶然の出会いこそが、これからの時代の新たな選択のキーになると感じることが出来たインタビューでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
[会社概要]
【会社名】株式会社GooZENラボ
【URL】https://goozenlab.com/about/
【設立年月】2020年9月
【代表者】梨本祐介
【所在地】 〒420-0857
静岡県静岡市葵区御幸町3番地の21
ペガサート6階