ひかり味噌・林恭子取締役コーポレートマーケティング本部長
(画像=ひかり味噌・林恭子取締役コーポレートマーケティング本部長)

みそ業界全体が縮小傾向にある中で、ひかり味噌は14年連続で売上を伸ばし続けている。

「おいしさと安心を徹底追求した食の提供に努め、世界中の人々の健康で楽しい生活に貢献する」。この使命を実現するため、2036年の創業100周年を迎えるときにどのような会社になっていたいかを描いた長期ビジョン「HIKARI100X」の中で、食品安全方針や環境方針と並ぶ重要な項目であるSDGsへの取り組みを示している。同社の差別化戦略と「願い・意志」を込めて、新たに定めた3つのSDGsの重点課題について、林恭子取締役コーポレートマーケティング本部長に話を聞いた。

ひかり味噌は2021年に、長期ビジョン「HIKARI100X」を策定した。コロナ時代を経験した上で、多様性が顕在化し、企業活動として持続可能性を追求するためにはSDGsの重点課題も再定義することが必要であると認識し、2023年に改めて3つの重点課題を選定した。食品業界の取り組むべき共通課題のCO2削減、プラスチック使用量削減、フードロス削減を基本方針とした同社独自の差別化戦略として定義したものだ。

1つ目に、『ダイバーシティ~人的資源の尊重と育成多様性の具現化~』を挙げている。林取締役は、「長期ビジョンのひとつとして、『真のグローバル企業の実現』を掲げている。海外へ向けたみその輸出に力を入れているが、海外事業の拡大だけでなく、持続可能なビジネスのためには、人材のダイバーシティが極めて重要だと感じている。外国人の採用にも積極的に取り組んでいる」と話す。

また、働き方にも言及し、「子どもができても、これまでと同じ仕事が続けられるような環境を整えていきたい。調味料メーカーなので、女性は戦力として重要であるのと同時に、お母さん世代はまさに私たちのターゲットになる。志の高い全ての社員が気持ちよく働ける組織にしたい」と語る。

2つ目の『持続可能なサプライチェーンの構築』では、「私たちは、いつも安定的に食を届けるという使命がある。そのため、原料の調達も、生産コストも安定的に維持しないと、同じ品質の商品を消費者にお届けし続けることはできない。安定した原料調達のためには、複数のサプライヤーを確保し、そのサプライヤーが事業を継続できるような健全な取引関係を結ぶ」とし、ビジネス環境の持続可能性にも目を向けている。

3つ目の『環境配慮型商品として有機みその供給量拡大』では、「環境負荷の少ない有機商品の開発に早くから取り組んできた。農薬や化学肥料に頼らない農法で生産することで、平穏かつ健全な自然環境と社会環境の実現に貢献したい」という思いを明らかにする。

〈2030年までに有機みそ生産量を5,000tに、「信州Green電気」に100%切り換え〉
ひかり味噌は、市場7割のシェアを誇る有機みその更なる普及に向けた活動にも力を入れる。「2030年までに有機みその生産量5,000t」を目標に掲げ、取り組みを実施している。

長野県飯島町の生産拠点である飯島グリーン工場では、2022年より長野県企業局が運営する、水力発電所で二酸化炭素を排出せずに発電された電気「信州Green 電気」を採用している。さらに、2023年6月からは長野県下諏訪町の本社における使用電力も「信州Green 電気」に100%切り替え再生エネルギーの利用拡大を積極的に進めている。

ひかり味噌は長野県黒姫で里山の再生に取り組んでいる一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団のオフィシャルスポンサーとしてサポートを続けている。2023年11月には、同財団と森づくり協定の提携を結んだ。アファンの森づくり企業タイアップの第1号となり、「生物多様性の回復を目指したアファンの森の森林生態系の再生活動を同財団と共創して推進していく」(同社)としている。

「今年から、社員も森に行って、森の再生・保全活動に参加する。生物多様性を学びながら、地域貢献活動にも参加できるこの社員参画を今後も続けていきたい。そして、この活動を消費者に示すことで、企業価値の向上につなげていきたい」(林取締役)。

業界で初めて、植物由来の素材と紙を採用したパッケージを使用するなど、プラスチック削減も推進している。今春、従来のものよりプラスチック使用量を35%削減したコンパクトサイズの即席みそ汁も発売した。「脱プラもどんどん進めていきたい。環境配慮型商品は、ときにコスト高になるが、企業の姿勢に共感してくれる消費者が増えているのも事実。こうしたSDGsの取り組みはいち早く取り入れ、活動レベルでは常にトップにいたい」と力強く語った。

〈大豆油糧日報2024年4月12日付〉