クラウド型業務支援システム導入で従業員のデジタル対応力強化 ICT活用で石材加工業界の活性化にも取り組む はやしばら(香川県)

目次

  1. 庵治石で知られる石材の町で、石材に特化した卸売業を営む
  2. 国内外の石材業者と幅広いネットワークを構築 中国の拠点を通じて世界中の石材を仕入れる
  3. 従業員は商談、石材加工のデザイン、ブログの執筆まで多彩にこなす
  4. 新しいクラウド型の業務支援システムが、長年の課題になっていたシステム業務の属人化を解消する切り札に
  5. 自社の業務内容に合わせたアプリケーションを10種以上作成
  6. 機能を拡張するソフトウェアを使って顧客の利便性向上につなげる
  7. ホームページは週1回のペースで更新 親しみやすさを大事にして幅広い話題を取り上げる
  8. 先祖を供養する機運の醸成、墓石の再利用、石材加工業界の活性化に取り組むRENO(リノ)プロジェクトを展開
  9. ICTを活用してこれからも会社のデジタル対応力を強化する
中小企業応援サイト 編集部
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香川県高松市牟礼町に本社を置く石材の総合商社、はやしばら有限会社が、専門的な知識がなくても自社の業務内容に合わせたアプリケーションを作成できるクラウド型の業務支援システムを導入して業務の属人化解消に取り組んでいる。今後の業務の広がりに対応するため機能を拡張するソフトウェアの活用も検討中だ。またシステム業務に携わることができる従業員を増やすことでデジタル対応力の強化を図る。(TOP写真:はやしばらが導入しているクラウド型の業務支援システム。様々なアプリケーションを自社で作成することができる)

庵治石で知られる石材の町で、石材に特化した卸売業を営む

クラウド型業務支援システム導入で従業員のデジタル対応力強化 ICT活用で石材加工業界の活性化にも取り組む はやしばら(香川県)
はやしばらの本社前に展示している石材加工作品
クラウド型業務支援システム導入で従業員のデジタル対応力強化 ICT活用で石材加工業界の活性化にも取り組む はやしばら(香川県)
高松市牟礼町では町内で様々な石材加工作品が並んでいる

御影石と呼ばれる良質な花崗岩の産地として知られる香川県高松市東部の庵治町、牟礼町には約250の石材業者が集積している。各町内では至る所に地元産の庵治石を素材にした様々な作品が並ぶ。日本を代表するこの石材の町で、はやしばら有限会社は、石材に特化した卸売業を営んでいる。

国内外の石材業者と幅広いネットワークを構築 中国の拠点を通じて世界中の石材を仕入れる

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はやしばらの本社に展示している世界各国の石材のサンプル

はやしばらの強みは、国内外の石材を扱う業者との幅広いネットワークだ。国内では、庵治石や瀬戸内海の大島(愛媛県)を産地とする大島石を中心に全国の石材を扱っている。墓石などの製品をオーダーメイドで加工するだけでなく、顧客の希望に応じて原石、角磨き、切削材、延石、板石など様々な形態で出荷するきめ細かいサービスを提供している。海外では、中国の遼寧省大連市、福建省厦門市に構えた拠点で、中国、インド、欧米など世界各国の石材を仕入れ、提携工場で加工を行っている。

石材の用途は墓石、庭灯籠、彫刻作品、花器など多岐にわたる。はやしばらは、本社で国内、中国、インド、ヨーロッパなど様々な産地の石材のサンプルをそろえ、顧客からの多様な相談に応じている。

従業員は商談、石材加工のデザイン、ブログの執筆まで多彩にこなす

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CADを活用して墓石をデザインする様子
クラウド型業務支援システム導入で従業員のデジタル対応力強化 ICT活用で石材加工業界の活性化にも取り組む はやしばら(香川県)
はやしばらで扱っている石材加工作品

はやしばらが取引をしている墓石や庭灯籠などを扱う石材の小売業者は、西日本を中心に50を超える。本社勤務の従業員は、それぞれが担当する小売業者との商談をはじめ、石材の仕入、在庫管理、CADを活用した墓石のデザイン、ホームページに掲載するブログの執筆といったマルチタスク(複数の業務)をこなしている。

新しいクラウド型の業務支援システムが、長年の課題になっていたシステム業務の属人化を解消する切り札に

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はやしばらでシステム関連業務を担当する池田義廣さん

財務、販売、顧客、在庫などの様々な情報を一元管理するはやしばらのシステムは20年以上前、市販の販売管理システムをベースに独自で構築したものだ。システムを構築した池田義廣さんが保守・管理を含めたシステム関連業務を担当している。

池田さんは以前から、自分以外にシステム業務に携わった経験を持つ従業員がいない状況を改善したいと思っていた。「システム業務の属人化は、企業として望ましいものではありません。先のことを考えると私以外にシステムをメンテナンスできる人材を育てなければならないのですが、日々の仕事をこなしながら専門知識を学んでもらうのは簡単ではないため、なかなか手をつけられずにいました」と池田さんは振り返った。

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はやしばらのオフィスの様子

この状況を打開するため2023年9月に導入したのが、プログラムの専門的な知識がなくても自社の業務内容に合わせたアプリケーションを作成できるクラウド型の業務支援システムだ。アプリを作成して日報、販売管理、在庫管理、顧客管理、案件管理、スケジュール管理といった様々な業務に活用することができる。データベース機能、プロセス管理機能に加え、コメントの書き込みといった社内の情報共有機能も充実している。

「ドラッグ&ドロップで直感的に操作できるので非常に扱いやすく、数週間ほどの試用で、従業員みんなが使いこなしていける見通しを立てることができました。仕事で実際に使いながら少しずつ慣れていってもらえたらと思っています」と池田さんは話した。オンライン上でサービスが提供されるクラウド型なのでメンテナンスやバックアップの手間を軽減することにもつながっている。

自社の業務内容に合わせたアプリケーションを10種以上作成

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クラウド型業務支援システムを使って様々なアプリケーションを作成した

池田さんはクラウド型業務支援システムの導入後、販売管理、実績表、在庫管理表、図面管理、見積など10種類以上のアプリケーションを作成した。アプリケーションには以前のシステムで使っていたデータをそのまま取り込むことができたので、当初想定していたよりも簡単に作成することができたという。「検索機能を活用して必要な資料をすぐに見つけることができるので、問い合わせへの対応も以前より迅速にできるようになりました。私しかできなかったシステムの保守、管理の仕事を他の従業員に任せていく道筋をつけることができました」と池田さん。

機能を拡張するソフトウェアを使って顧客の利便性向上につなげる

クラウド型業務支援システムには機能を拡張するソフトウェアが豊富にそろっている。現在、ライセンスを持っていない社外の人と情報を共有する機能を持ったソフトウェアの活用を検討している。「クラウド上にお客様ごとにカスタマイズしたワークスペースを設けて、石材の受発注やデザインの確認、打ち合わせ、提案を機動的にできるようにしたいと思っています。システムを活用することで、お客様の利便性も向上させていきたい」と池田さんは話した。

ホームページは週1回のペースで更新 親しみやすさを大事にして幅広い話題を取り上げる

クラウド型業務支援システム導入で従業員のデジタル対応力強化 ICT活用で石材加工業界の活性化にも取り組む はやしばら(香川県)
幅広い情報を発信しているはやしばらのホームページ

2021年11月にリニューアルしたホームページは注目度を高めるため、1週間に1回のペースで情報やブログを更新するようにしている。石材の在庫情報や石材に関連したニュース、「むれ源平石あかりロード」といった地元のイベントなどの幅広い情報を親しみやすい文章と写真で発信している。問い合わせに対応するためのチャットボットも導入している。ホームページはアプリケーションを活用して情報の更新を容易にするなど工夫しながら今後も内容を充実させていきたいという。

先祖を供養する機運の醸成、墓石の再利用、石材加工業界の活性化に取り組むRENO(リノ)プロジェクトを展開

クラウド型業務支援システム導入で従業員のデジタル対応力強化 ICT活用で石材加工業界の活性化にも取り組む はやしばら(香川県)
RENOプロジェクトの情報を発信するホームページ

はやしばらは、2020年から地域の石材を扱う企業と連携し、先祖を供養する機運の醸成、墓石の再利用、石材加工業界の活性化に取り組むRENO(リノ)プロジェクトを展開している。リノプロジェクト専用のホームページを設け、活動内容をはじめとする様々な情報を発信。全国に広がる石材会社のネットワークを活用して、お参りしやすい場所への墓の引っ越し、古くなった墓のリノベーション、墓じまい、墓石への追加彫刻、手元供養、墓の保守・点検といった様々な相談に応じている。

「経済最優先の風潮や都市への人口集中で故郷を離れて生活する人が増えたことで、お墓参りや先祖の供養に対する意識は変化しています。そのような状況下、お墓参りの意義や亡くなった人に感謝の思いを持つことの大切さを広く発信したいという思いで取り組んでいます」と池田さんは話した。

ICTを活用してこれからも会社のデジタル対応力を強化する

はやしばらは、今後、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の技術を活用して帳票作成などの定型的な業務や情報収集を効率化することも検討している。ICTを積極的に活用することで、専門知識を持たなければ難しかった業務のハードルが下がり、一人ひとりの従業員のマルチタスク能力を拡大することができる。はやしばらの取り組みから中小企業の新しい可能性が広がっていることを感じた。

企業概要

会社名はやしばら有限会社
本社香川県高松市牟礼町牟礼2657-5
HPhttp://hysbr.com/
電話087-845-7103
設立1995年5月
従業員数8人
事業内容 国内石材・輸入石材卸売業、中国・韓国・アメリカ・ヨーロッパ・日本の原石・インド・ベトナム製品の販売