障がいを持つ子の親が安心して旅立てる社会へ。ソエルテが推進する新しい障がい者支援の形
一般社団法人ソエルテは、知的障がい児や発達障がい児の自立を目指し、各々の特性を生かすことができる環境づくりを進めています。相談窓口の開設、行政とのパイプ役、就業情報の収集・親愛信託などを行っています。本コラムでは、一般社団法人ソエルテ統括事務局長の佐藤美幸さんに、現在の活動や今後の展望について伺いました。

障がいを持つ子の親が抱える問題

障がいを持つ子の親が安心して旅立てる社会へ。ソエルテが推進する新しい障がい者支援の形

私の仕事では、家族との繋がりが希薄だったり、身寄りがない高齢者から相談を受けることがあります。中には、「障がいを持つ子供の将来が心配」という声も聞かれます。

多くの親御さんは、子供の介護に追われる毎日のため、将来を見据える余裕がありません。「国が面倒を見てくれるだろう」と考える方も少なくありませんが、実際には受けられる支援は限られています。障がい者の世界は狭く、必要な情報や支援が十分に届いていないのが現状です。

発達障がいや知的障がいなど、障がいの種類によってさまざまコミュニティがあり、一括りにすることは難しいという意見も多くあります。しかし、親としては子供が社会に出て成功体験を積むことを望みます。そのためには、一般的な考え方や社会的な体裁を受け入れる必要があります。

平等に扱ってほしい気持ちもわかりますけど、何か困ったときには障がいを理由に言い訳が通じるのかというと、必ずしもそうでもないので難しいところです。

ダウン症、知的障がい、自閉症など、さまざまな障がいを持つ子供を抱える親御さんが、「この子を残しては死ねない」と悩むのであれば、私たちはその手助けをしたいと考えています。ソエルテは、障がい者が抱える後見人の問題を解決し、彼らの将来を支援するために設立されました。

障がいを持つ子供の親が安心して旅立てるための環境づくり

障がいを持つ子の親が安心して旅立てる社会へ。ソエルテが推進する新しい障がい者支援の形

ソエルテの目標は、障がいを持つ子供の親が安心して旅立てるような環境づくりです。具体的には、後見人に頼らずに財産管理や生活支援ができる体制を整備し、親が亡くなった後も子供が安心して生活できるようサポートします。

また、私たちは「18歳の壁」というのを多くの方にお話しています。18歳になると障がいを持っているお子さんにとって高いハードルやリスクが伴います。法的に代理人を立て、親が元気な間はソエルテがサポートをし、財産管理・信託機能、そして後見人の問題を含め、その人の人生をどう送るかを共に考えます。

代表理事には障がいを持つ子供の親と持たない親がバランス良く就任しています。障がいのある子供を持つ親の気持ちを理解しつつ、同時に一般的な社会の考え方を伝えていくのが重要です。

ソエルテでは現在、障がい者のアーティストによる名刺や作品の販売、農業体験の機会提供などの活動を行っています。中でもクリエイターがオリジナルの文字と絵を描く「ソエルテ名刺」事業は、作品のインパクトが強く、手にした人に喜ばれています。

このようにソエルテでは柔軟な発想を持ち、親御さんとの信頼関係の構築を心がけながら、障がい者が自立して稼ぐ力をつけることもサポートしています。

メタバース活用による障がい者の居場所づくり

障がいを持つ子の親が安心して旅立てる社会へ。ソエルテが推進する新しい障がい者支援の形

日本には約100万人の障がいを持つ子供たちがいるとされており、彼らを取り巻く環境は多くの課題に直面しています。障がい者支援団体が数多くある中で、提携して協力し合うことで、問題解決をより迅速に進めることができると考えています。

横のつながりを重視し多くの方に知ってもらうために、「感謝祭」などのイベントを定期的に開催しています。たとえば、前回は東京タワーでイベントを行い、オンラインでの参加者も多数集まりました。障がい者支援施設からの物販協力もいただき、絵画と写真のコンテストも行いました。次回は4月に開催を予定していて、さらに多くの方に私たちの活動を知ってもらいたいと思っています。

今後はこうした地道な実践に加えて、メタバースなどのオンラインの世界で障がいを持つ人の居場所づくりに挑戦していきたいと考えています。リアルの世界で活動が難しい人でも、メタバースなら自由に活躍できるかもしれません。現実とオンラインを行き来できる社会を実現し、障がいの有無に関わらず、誰もが生きやすい環境づくりを目指していきます。