ICTを積極活用することで生み出すスマートな働き方 人材育成にも力を入れ、電気設備の技術を次世代に伝える 田所電気(香川県)

目次

  1. 迅速な対応ときめ細かなアフターメンテナンスに高い評価
  2. 「受注が順調に伸びる中で、労働時間を増やすことなく対応できているのは、ICTとデジタル機器のおかげです」
  3. グループウェアとメール管理システムを活用して社内のコミュニケーションを円滑に
  4. 担当メールを一目で把握できるので、協力会社や顧客からの要望や問い合わせに迅速に対応
  5. 外出中のメール対応の効率が格段に向上 仕事の属人化の軽減にも効果
  6. 本社にわざわざ立ち寄らなければならない業務を減らすことで、柔軟な働き方ができる環境を作る
  7. 複数の手段を組み合わせて情報の多層防御体制を構築
  8. 資格の取得にかかる費用を会社が全額負担 次世代の育成に力を入れる
  9. 働きやすい環境づくりを通じて女性活躍を推進
  10. これからもデジタル技術を導入して働き方改革を推進する
中小企業応援サイト 編集部
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香川県高松市に本社を置いて電気設備の設計、施工に取り組む株式会社田所電気が、業務効率化によるスマートな働き方の実現や情報セキュリティにICTを積極活用している。電気設備の設計、施工は生活に欠かせない電気を社会に行き渡らせる上で大きな役割を担う。社会のデジタル化、脱炭素化といった潮流が加速する中で、電気設備工事の需要は今後も拡大が見込まれ、ICTを活用する意義はますます高まっている。(TOP写真:CADを活用して電気設備の設計に取り組む様子)

迅速な対応ときめ細かなアフターメンテナンスに高い評価

ICTを積極活用することで生み出すスマートな働き方 人材育成にも力を入れ、電気設備の技術を次世代に伝える 田所電気(香川県)
田所電気の本社に飾られた様々な感謝状

田所電気は、1965年の創業以来、地域の電気設備の設計、施工に取り組んできた。60年近い歴史の中で磨き続けた迅速な対応ときめ細かなアフターメンテナンスは幅広い業界から高い評価を受け、四国全域の大型ショッピングセンター、工場、オフィスなど様々な施設の電気設備工事を受注している。事業内容は高圧受変電設備から照明やコンセントといった屋内配線設備、電気通信設備、自家発電設備、防災設備まで幅広い。地域のインフラ維持に果たしてきた役割は大きく、社内には様々な団体から贈られた感謝状が飾られている。

「受注が順調に伸びる中で、労働時間を増やすことなく対応できているのは、ICTとデジタル機器のおかげです」

ICTを積極活用することで生み出すスマートな働き方 人材育成にも力を入れ、電気設備の技術を次世代に伝える 田所電気(香川県)
田所電気の植村謙二代表取締役

田所電気は、植村謙二代表取締役が就任した2009年12月以降、スマートフォンから出退勤時間を記録できる勤怠管理システム、グループウェア、メール管理システムを段階的に導入し、本社以外の場所でも事務作業や情報共有ができる環境の整備に力を入れてきた。また、約30年前から電気設備の設計にCADを導入し、定期的にCADのバージョンアップを行っている。工事積算システムや工事現場の写真管理システムも導入し、設計、施工、報告書の作成といった一連の業務を最小限の時間でこなせるようにしている。

「繁忙期以外は定時で業務を終了できるように、効率的に働くことを心がけています。ICTやデジタル機器が進化したおかげで、柔軟な働き方が可能になりました。受注が順調に伸びる中で労働時間を増やすことなく対応できているのは、ICTとデジタル機器のおかげです」と植村社長は話す。

田所電気が積極的にICTとデジタル機器を活用する理由。それは、会社の成長と従業員のワークライフバランスを両立する「スマートな働き方」を実現するためだ。

「従業員と従業員の家族だけでなく、お世話になっている協力会社や取引先、地域社会の皆さんを幸せにする会社でありたいと思っています。成長を目指すことは企業にとって何より重要ですが、その結果、従業員の負担が大きくなるのであれば本末転倒です。仕事と私生活をバランスよく充実させなければ人生は豊かになりません。働きやすい環境を作るために新しい技術を活用して業務を効率化し、労働生産性を高めることを常に念頭に置いています」。香川県高松市内にある田所電気の本社で植村社長は、社長就任以来、大事にしている自らの思いを話した。

グループウェアとメール管理システムを活用して社内のコミュニケーションを円滑に

植村社長はスケジュール管理やメッセージ機能、ファイル管理機能を備えたグループウェアとメール管理システムを活用して、従業員とのコミュニケーションを円滑にしている。これらを活用すれば、いつでもどこでも従業員のスケジュールを確認した上で指示を出し、報告や相談を受けることができる。営業活動などで社外に出ることが多い植村社長にとってグループウェアとメール管理システムは、日々の仕事に欠かせないツールになっている。

担当メールを一目で把握できるので、協力会社や顧客からの要望や問い合わせに迅速に対応

ICTを積極活用することで生み出すスマートな働き方 人材育成にも力を入れ、電気設備の技術を次世代に伝える 田所電気(香川県)
メール管理システムを活用して届いたメールを確認する様子

2020年12月に導入したメール管理システムは、会社の共有メールアドレス宛に届いたメールを一括受信し、管理者が1通ごとに担当者を設定できる機能を備えている。「従業員一人ひとりが自らの担当メールを一目で把握できるので、会社全体で対応漏れといったミスを起こすことなく、より迅速に協力会社やお客様からの要望や問い合わせに対応できるようになりました」と植村社長。植村社長は外出中、空いた時間を使ってスマートフォンからシステムにアクセスし、その都度、メールで寄せられた協力会社や顧客からの要望や問い合わせに対応している。

外出中のメール対応の効率が格段に向上 仕事の属人化の軽減にも効果

「メール管理システムの導入で、外出中のメール対応の効率は格段にアップしました。定期的に本社に電話してメールの着信状況とその内容を従業員から聞いたり、本社に戻ってから溜まったメールに慌ただしく対応する必要がなくなったので大変助かっています。導入前と比べると感覚的には2倍ぐらい時間を有効活用できているように思います」と植村社長はうれしそうに話した。

「未処理」「処理中」「処理済」といったメールの対応状況も表示できるので、従業員全員でサポートし合いながら協力会社や顧客からの要望や問い合わせに対応できるという。メールに紐づいたコメントも記入できるので指示や相談も的確に行うことができる。担当者以外の従業員が対応する時も、履歴機能を使うことで過去の経緯を正確に確認できるので、仕事の属人化を軽減することにもつながっている。

本社にわざわざ立ち寄らなければならない業務を減らすことで、柔軟な働き方ができる環境を作る

現場で作業にあたる従業員も、空いた時間を使って自らが対応しなければならないメールの内容を確認し、その場で対応できるので、仕事を終えた後、メール確認のためにわざわざ本社に戻る必要がなくなり、現場と自宅との直行直帰がしやすくなった。停電の復旧作業など緊急に全社体制で対応しなければならない事案が発生した時は、ビジネスチャットを使ってすべての従業員に一斉に通知するようにしている。

「直接顔を合わせた方が職場の一体感を高める上で効果が高いことは事実ですが、グループウェアやメール管理システムを使えば、互いに必要な情報はやりとりできるので、すべての従業員が毎日会社に集まる必要はないと思っています。本社にわざわざ立ち寄らなければならない業務を減らすことで、柔軟な働き方ができる環境を作っています」と植村社長は説明した。

複数の手段を組み合わせて情報の多層防御体制を構築

田所電気が業務の効率化と共に力を注いでいるのが情報セキュリティだ。サイバー攻撃やコンピューターウイルスの侵入を防ぐUTM(統合脅威管理)、AI(人工知能)によるディープラーニング(深層学習)機能を備えたアンチウイルスシステム、外部からの不正通信の検知システムといった複数の手段を組み合わせた多層防御体制を構築している。

「中小企業を狙ったサイバー攻撃が増加している状況下、お客様、社会に迷惑をかけないために情報セキュリティに力を入れるに越したことはありません。入口、内部、出口の三つのポイントで情報セキュリティの強化に取り組んでいます」と植村社長は話す。また、地震や台風などの災害や火災などでパソコンやハードディスクが破損した時に備え、クラウドを活用したBCP(事業継続計画)対策も行っている。

資格の取得にかかる費用を会社が全額負担 次世代の育成に力を入れる

ICTを積極活用することで生み出すスマートな働き方 人材育成にも力を入れ、電気設備の技術を次世代に伝える 田所電気(香川県)
田所電気のオフィスの様子

蓄積してきた電気設備に関する技術を次世代に継承していくために、人材育成にも力を注いでいる。田所電気では従業員の半分が1級電気工事施工管理技士、6割以上が第一種電気工事士の資格を所有している。電気工事以外に、エネルギー管理、太陽光発電施工、情報ネットワーク施工、蓄電池設備整備など複数の資格を取得している従業員も多い。

これらの資格の取得にかかる費用は会社が全額負担している。受検費用だけでなく資格取得後のセミナーの参加費用も負担するなど、様々なサポート制度を設けている。電気工事の未経験者をプロに育てる独自の研修ノウハウも蓄積している。「電気工事を行う上で何より大事なのは知識と技術です。従業員に資格取得を奨励するのは、能力の証明になることはもちろん、しっかりとした知識と技術を身につけてほしいと思っているからです。社会のインフラを維持する上で大きな役割を担う電気工事に取り組む人材を育てることで、地域に貢献していきたいと考えています」と植村社長は話す。

働きやすい環境づくりを通じて女性活躍を推進

ICTを積極活用することで生み出すスマートな働き方 人材育成にも力を入れ、電気設備の技術を次世代に伝える 田所電気(香川県)
田所電気は「かがわ女性キラサポ宣言企業」、「子育て行動計画策定企業」として香川県から認証を受けている

田所電気は、女性の活躍を推進するために積極的な取り組みを行う「かがわ女性キラサポ宣言企業」、「子育て行動計画策定企業」として香川県から認証を受けている。今後、設計や現場作業に携わる女性の採用にも力を入れていきたいという。定年を60歳から65歳に延長するなど高齢者が活躍しやすい環境も整えている。2023年12月にホームページを開設し、仕事の内容や施工事例、SDGsの取り組み、業務内容を、写真を豊富に使って発信している。

これからもデジタル技術を導入して働き方改革を推進する

ICTを積極活用することで生み出すスマートな働き方 人材育成にも力を入れ、電気設備の技術を次世代に伝える 田所電気(香川県)
アルコールチェックと車両管理を連携したアプリケーションを試用する様子

デジタル技術の導入はこれからも進める。今後、クラウド型の会計管理システムや従業員のアルコールチェックと車両管理を連携したアプリケーションの導入も検討している。「働く人に『働きがいのある会社』と思ってもらえるように、基本給と休日の両方を増やしていきたい。これからもデジタル技術を活用してスマートな働き方改革を進めていきます」と植村社長は明るい表情で話した。

ICTを積極活用することで生み出すスマートな働き方 人材育成にも力を入れ、電気設備の技術を次世代に伝える 田所電気(香川県)
田所電気の本社の外観

様々な分野でデジタル技術を活用している田所電気。ICTとデジタル機器を活用して労働生産性を高めるだけでなく多様性を重視した働き手を増やすことで、デジタル社会を構築する上で不可欠な地域の電気設備をこれからも支え続ける。

企業概要

会社名株式会社田所電気
本社香川県高松市東山崎町196番地9
HPhttp://www.tadokoro-denki.com/
電話087-847-6037
設立1973年7月(創業1965年)
従業員数14人
事業内容  高圧受変電設備、屋内配線設備(照明・コンセント)、電気通信設備、自家発電設備、防災設備などの設計・施工及びアフターメンテナンス