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「行列のできる切削屋!」を標榜する有限会社ユニーク工業(群馬県太田市)は、部品切削加工の技術者集団だ。金属や樹脂部品の試作品、特殊形状の部品など“一品料理”のように1個からの加工も引き受け、多方面からの加工依頼が舞い込む。技術力をアピールするため、ホームページを更新したほか、設備面でも3次元CAD/CAM(コンピューター支援設計・製造)などICT技術を取り入れ、省力化にも余念がない。新工場建設も計画しており、さらなる飛躍を狙っている。(TOP写真:多様な作業をこなす5軸複合加工機)
10歳の頃から家業を継ぐ決意。工作機械メーカーで加工技術学ぶ
有限会社ユニーク工業は、羽廣(はびろ)保志代表取締役の父親が、旋盤機械1台で1975年に創立した。当初は主に群馬県内の顧客からの依頼で建設機械部品などの旋盤加工が中心だったが、母親ら親族も手伝ったことで徐々に建機以外のユーザーも獲得。加工設備もボール盤、フライス盤などに増やしていき、経営が軌道に乗った1989年に法人化した。ものづくりが好きだった羽廣社長は、小さい頃から遊び場としていた工場で働く父親らの姿を見て機械加工に深い関心を持ち、「10歳の頃から家業を継ごうと思っていた」というから、まさにものづくりの申し子ともいえる。
羽廣社長は大学卒業後の3年間、機械の基礎を学ぶため工作機械メーカーに勤務。そこで図面の書き方、部品の組み立て方、機械の構造や動き方などを習得し、1995年、25歳の時に幼い頃から目指していた父親の会社に入社した。
多品種少量生産を支える加工技術に自信。「機能追求」でコストダウンも図る
同社の特徴は、社名のとおりユニーク(独創的)であることだ。加工する部品は生産設備向けや保守部品などのため、受注する加工は1個から10個程度と、完全に多品種少量生産。しかも、業界を問わず、企業でなく個人からの注文にも応じるという全方位の姿勢だ。
あらゆる切削加工の要望に応じられるのは、加工技術に自信を持っているからだ。その自信の裏付けとなるのが、「これまでの経験で培ったデータの蓄積があるため」(羽廣社長)という。具体的には、ツール(工具)の使い方、製品へのこだわり、加工工程の決め方、という三つの要素からなる。
最適なツールを選び、その機能を万全に発揮させる。場合によっては、今まで使ったことのない工具の使い方をすることもあり、それが成功した場合は次の加工にも生かしていく。製品へのこだわりは、要求される部品の機能をみたすことはもちろん、極力コストを抑えるために不要な形状やデザインなどを排除していく。工程の決め方は、加工する部品のクランプの仕方を考えながら、可能な限り簡素な工程を選択していく。
部品の設計図を提出された場合でも、「要求される部品の機能を出せればいい」という考えから、発注者との間でコストダウンのために不要な部分を除く話し合いを進めることもある。
技術者が自ら加工工程を考える。「ものづくりが好き」で、大手企業からの転職者も入社
同社の技術を支えているのが現場技術者たちで、若手からベテランまでバランスの良い構成だ。製造現場の工作機械は数値制御化されているが、部品は複雑な構造をしているため、部品の向きを変えながらいくつかの加工工程が必要になる。この工程を間違えると求められる完成品ができないため、図面があったとしても、一人ひとりが適切な加工工程を考えていくことで成長していく。若手技術者には最初は簡単な部品加工から経験してもらい、ベテラン技術者のアドバイスを受けながら、5年程度たてば自分で工程を考えられるようになるという。
加工技術の習熟が早いのは、「ものづくりが好きな技術者ばかり」(羽廣社長)だからだ。入社2年目の若手は「考えながらものづくりをやりたい」と、大手企業ではなく同社を選んだ。5年目の技術者は大手電機メーカーを退社して入社した。その技術者は製造現場でものづくりを担当していたが、管理職となって現場を離れざるを得ず、ものづくりの現場を続けたいという意向から転職した。
ものづくりの奥深さを実感させられるのが、羽廣社長も思いつかなかった加工方法をベテラン技術者から提案されることもある、とのエピソードだ。「私だけのワンマン経営ではそこまでいかない」と、同社の技術力の底力が見て取れる。
ホームページは同社の技術力を不特定の人にアピールできる。Q&Aの活用で、企業だけでなく個人からも問い合わせ ホームページは貴重な営業戦力に
ジャンルを問わずに部品加工を引き受けてきた同社。以前は自動車の生産設備向けの部品加工が45%程度と多かったが、コロナ禍や自動車の電動化による減産を受け、「リスクヘッジすることが重要」(羽廣社長)と、特定の業界に頼ることは危険と考え、現在は半導体や医療機器関連など多方面の部品加工を手掛ける。
多方面への展開のための同社の営業手法もユニークだ。新規顧客の50%は、BtoB(企業間取引)のマッチングサイトとホームページ経由だという。特にホームページは同社の技術力を不特定の人にアピールできるため、2017年にはホームページを開設、2023年9月には3回目のリニューアルを行った。新しいホームページではユーザーからの想定Q&Aを多く掲載するなど「敷居を低くして」(羽廣社長)、まずは問い合わせをしやすいように工夫したところ、企業だけでなく個人からも反応があるなどの効果を発揮した。
残りの50%は、大阪府にある営業支援会社に依頼。その企業はインターンシップ中の学生が、羽廣社長のアドバイスを受けながら電話で顧客を開拓している。取引が実現できそうなユーザーが出てくれば、羽廣社長が具体的な商談に入るという手順。
生産現場でのICT化も進める。工場内のパソコンを無線LANでつなぎ、ソフトウェアやデータを共有化できるようにした。3次元のCAD/CAMは毎月一定額を支払うサブスクリプション方式で導入。クラウドを利用するため情報共有も容易で、「すごく重宝している」(羽廣社長)という。今後は、3D-CADの活用と工程の見える化を行いさらなる効率化を進めている。
コマ大戦で数度の優勝。地域のものづくりネットワークにも参画
羽廣社長は、全日本製造業コマ大戦を運営するNPO法人の理事も務める。コマ大戦とは、参加者が自作したコマを使い、直径25センチの土俵上で喧嘩コマをして戦う。中小企業のものづくり振興、加工技術向上のために2012年に始まった。もちろん、自らもコマを製造し、東日本大会で優勝するなど数度の優勝を経験し、現在でも全国大会の優勝を目指しているという。機械加工技術を発揮するだけでなく、参加者との情報交換もでき、実際に仕事につながるケースもある。近年は高校生の参加も多く、機械加工が好きな若者のリクルートにも役立つことが出来たらと思っている。
一方、群馬県と栃木県にまたがる両毛地区の製造業の経営者で構成する「両毛ものづくりネットワーク」にも参画。情報交換だけでなく、実際の仕事の受発注につながる場合もあるという。
製造現場のIoT化も検討。隣接地に新工場建設を計画
実は、ユニーク工業3代目となる羽廣社長の子息も2014年に入社し、現在製造現場で働いている。3代目は自動化に前向きで、製造現場のIoT化を図り、ロボットで加工するなど加工工程の革新を検討しているという。
敷地面積約130平方メートルの現在の工場には、5軸加工機、旋盤、マシニングセンターなどの工作機械11台が所狭しと並ぶ。設備ありきの企業のため、羽廣社長は、3年後には本社工場の隣接地に新工場を建設し、さらなる設備の近代化や自動化を見据え、技術力の一層の向上を描いている。
企業概要
会社名 | 有限会社ユニーク工業 |
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住所 | 群馬県太田市山之神町589-3 |
HP | https://www.unique-kogyo.co.jp |
電話 | 0277-78-6185 |
設立 | 1989年 |
従業員数 | 13人 |
事業内容 | 工作機械による部品加工、小ロット対応・特注パーツ製造、試作開発部品の製作 |