矢野経済研究所
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12月20日、ダイハツ工業は64車種、3エンジンの認証試験で不正行為があったと発表、OEM供給車も含め全車種の出荷と生産を停止した。4月のドアトリム、5月のポール側面衝突試験に加えての新たな不正発覚に対して、調査を担当した第三者委員会は「不正対応の措置を講ずることなく、短期開発を推進した経営の問題」と断じた。操業停止の長期化は避けられずサプライチェーンと地域経済に与える影響は大きい。

不正が急増したのは2014年以降、トヨタ向けのOEM供給が増えた時期と一致する。トヨタも同日付けのリリースで「2013年以降、小型車を中心にOEM供給車を増やしており、これがダイハツの負担となっていた可能性がある」としたうえで「ダイハツの再生を全面的にサポートする」と表明した。トヨタグループでは日野自動車や豊田自動織機でも品質不正が発覚しており、親会社トヨタ自動車のガバナンスがあらためて問われる。

とは言え、ダイハツの不正は1989年から、日野自動車は2003年頃から、豊田自動織機も2008年頃から、と各社の不正はまさに常態化していたと言っていいだろう。もちろん各社そして親会社のガバナンスに課題はあるし、生産計画、生産体制、生産管理の在り方も問われる。これらはまさに “経営の問題” である。しかしながら、果たして “個” に帰すべき問題はないか。

組織や権威に委縮し、媚び、それをもって自己を正当化する風潮がまん延していないか。低位安定に甘んじ続けたこの30年、至る所で “内向き化” が進行し、多くの “個” もそこに安住した。それは自己防衛であり処世術であるのかもしれない。しかし、そうあり続ける限り、身内に閉じた世界から抜け出すことは出来ない。ダイハツに固有の問題ではない。私たち一人ひとりがそれぞれの立場において、停滞する現状に巣くう不正や不合理に抗うことが改革と再生への第一歩であり、唯一、それが正気と成長を取り戻す近道となる。

今週の“ひらめき”視点 12.24 – 12.28
代表取締役社長 水越 孝