自主規制ルールの運用が今後の鍵

ーM&A仲介協会の自主規制ルール策定にあたって、横井さんは中心メンバーとなって取り組んでこられたとのことですが、経緯と今後の期待を教えてください。

横井さん:日本M&Aセンターは、M&A仲介協会の幹事会社のうちの1社です。自主規制ルールの検討は、2023年の夏前くらいから倫理規程の話が持ち上がり、その後、本格的な3規程の整備へと発展していきました。日本M&Aセンターは、法務やコンプライアンスなどの専門的知見のある人材が多いこともあって、スピーディに進めるため、自主規制ルールの取りまとめを行うことになりました。

実際に引き受けてみると、この仕事は大変な作業で、間違いなく人生で最も難易度の高い仕事の1つでした。M&A仲介協会に加入している各社だけでも、立場も考え方も異なります。さらに実効性のあるルールにするため、協会の中だけではなく、行政やこの業界に知見を持たれている先生方など、非常に多くのステークホルダーとの意見交換を重ねました。ここまで多くの方々に関与していただけたのは極めてありがたいことなのですが、一方で調整も無限に続き、何度か無理かもしれないと感じる瞬間もありました。大きな論点で各社間の意見の調整を行い前進していると思っても、別のステークホルダーの承諾が得られないことが数えきれないほどありましたし、多様な意見に触れるうちに、私自身の考えが変わったりすることもありました。完成した自主規制ルールは膨大な量ですが、一つ一つの条文に大変な思い出があり、無駄な表現は一つもありません。最終的には本当にギリギリの状況で決着がつきました。

ちなみに、日本M&Aセンターの中では本件に対するスタンスは一貫していました。自主規制ルール策定の必要性をしっかりと理解し、全面的に支持してくれた三宅社長や竹内取締役のバックアップがあったからこそ、なんとか乗り切ることができたと思います。社内で多くの仲間が協力してくれたことにも感謝しています。

今後は、業界各社が手を取り合って策定した自主規制ルールを、実効的に運用していくことが求められます。このルールをしっかりと守っていけば、業界は良い方向に変わっていくはずです。まだまだ課題も多いですが、私は非常に期待しています。

M&A研究・産学官連携推進室長/法務部長 横井伸さん