会社売却における価格算出方法

会社を売却価格の算出には「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つの主な評価アプローチがあります。

アプローチ 概要 メリット 注意点
コストアプローチ 現在の正味財産に着目 ・シンプルで客観的
・実態BSの把握が可能
・収益性を加味しにくい
・相場を反映できない
マーケットアプローチ 類似会社の株式市場での相場に着目 ・取引相場に近いトレンドを反映できる ・類似会社選択が困難
・中小企業の大半は、上場企業との違いが大きい
インカムアプローチ 将来の収益性に着目 ・投資判断という意味で最も理論的 ・将来利益予想や割引率の決定が困難で恣意性が入りやすい
・評価理論が難解

価値評価の算出について詳細は関連記事をご覧ください。

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会社売却の流れをわかりやすく解説

M&A仲介会社のサポートを受けて、会社を売却する際の一般的な流れについて見ていきます。

個別相談

会社の売却を検討される場合、まずはM&A仲介会社などM&Aの専門家への相談をお勧めします。 他にも税理士や公認会計士、地方銀行や信用金庫、事業引継ぎ支援センターなどがありますが、多くが無料で相談を受け付けています。

日本M&Aセンターはお客様の会社売却を経験・実績豊富なコンサルタントや士業の専門家によるチームでご支援します。詳しくはお問合せ下さい。ご相談は無料、秘密厳守で対応いたします。

M&A仲介会社との契約

ここからはM&A仲介会社と話を進めていく前提でお伝えしていきます。まずパートナーとなる仲介会社と提携仲介契約を締結します。 提携仲介契約を締結することにより、本格的なM&A仲介のサポートがスタートし、具体的なお相手探しが始まります。

必要資料の提出

企業評価や貴社の魅力を伝える資料づくりを行うための必要資料を準備します。決算資料、契約関係、従業員データなど必要な資料は多岐に渡ります。 資料収集は時間を要することがあるため、M&Aコンサルタントと相談しながら、早い段階で準備を進める必要があります。

株式評価額の算出・企業概要書の完成

提供した資料に基づき、M&Aにおいて譲渡価額交渉のもとになる株式価値評価(譲渡価額の目安)が算出されます。算出には前述のアプローチ方法などが用いられます。

また、売却先候補を探すために企業概要やその他会社の情報をまとめたものが「企業概要書」です。売却先候補への提案資料として用いられます。自社の魅力や事実がしっかり伝わっているか、しっかり確認しましょう。

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ノンネーム資料の作成

売却先候補にM&Aの関心の有無を幅広く確認するために「ノンネーム」という匿名の資料を利用します。譲渡企業を特定できないような形で、売却先候補に広くM&Aを提案することに用いられます。 売却先候補が貴社についてM&Aの対象になると判断した場合、秘密保持契約を締結した後、より詳細な情報が開示されます。

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売却先の選定(マッチング)

仲介会社と協力して、売却先を絞り込んでいきます。仲介会社は自社のネットワークなど活用して、候補先と考えらえるマッチング名簿を作りあげます。これを「ロングリスト」と呼びます。

このロングリストをベースに実際にどこへ提案していくのか絞り込んでいきます。絞り込みを終えたマッチングリストのことを「ショートリスト」と呼びます。仲介会社はこのショートリストをベースに打診を始めていきます。

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トップ面談

企業概要書の内容から売却先候補が買収の意思を示した場合、トップ同士の会談が行われます。企業概要書では見えなかったお互いの経営者としての人間性や、経営理念等を把握し、相互理解を深める場です。

候補企業とトップ面談を行った場合、面談後に売却先候補企業より意向表明書が提出されますので、それらをもとに1社に絞り込んでいきます。

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条件調整

譲渡価額や社員の処遇、契約の時期など大まかな条件を調整します。売却先候補に直接伝えにくいことがあっても、M&A仲介会社が間に立って調整します。譲渡企業と売却先候補企業両社の利益が最大となるように調整を行っていきます。

基本合意書の締結

両者間で大枠の条件が固まったら、当事者間で「基本合意契約」を締結します。基本合意はM&Aにおける山場の一つです。ここまでは2~3社と話を進めることができますが、ここからは独占交渉権が発生し、1対1で交渉を進めることとなります。

売却価格やスケジュールなどの大まかな条件、M&A契約予定日、デューデリジェンス(買収監査)に関する内容などについて、取り決めます。基本合意契約は最終契約書の叩き台ともなるので、ここでできるだけ具体的な内容で取り決めを行う必要があります。

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デューデリジェンス(買収監査)

会社の価値やリスクについてデューデリジェンス(DD、買収監査)が行われます。デューデリジェンスとは、M&Aに際して譲渡企業の財務内容等を確認するための、売却先企業による調査のことです。

売却する会社の事業リスクや、財務状況の調査が行われ、事前の情報と照合します。通常、外部の弁護士や税理士などの専門家が調査を行います。デューデリジェンスの対応においても様々な資料が求められるので、仲介会社と協力して収集していきます。

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最終契約の締結とクロージング

デューデリジェンスが終わると、最終契約の締結です。デューデリジェンスの内容を踏まえて、契約内容を最終調整します。最終契約書に調印し、株券や重要物品の授受、決済などを行います。

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ディスクロージャー(社員や取引先への情報開示)

会社の売却が成立してほっと一息つきたいところですが、重要な仕事があります。それはディスクロージャー、開示です。譲渡企業と売却先企業両社の関係者等に対し、発表を行います。

幹部社員への事前開示方法、インサイダー取引防止のための注意点、従業員への発表のタイミングと話し方など、いつ・誰と・どのように行うかを決める必要があります。コンサルタントに相談し、効果的な発表を行うようにしましょう。

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PMI

買収後の統合を、PMI(Post Merger Integration)と呼びます。M&Aは成約して終わりではありません。その後の統合がうまくいってこそ「成功」と言えるM&Aになります。PMIを円滑に進めるためには、基本合意の段階など早い段階からどのようにPMIを行うのか検討を始めることがおすすめです。

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