法人を廃業した場合の課題
法人の廃業を選択した後、想定される課題は以下の通りです。
債務の解消はできない
債務が残っている場合、法人を清算することはできません。つまり法人を廃業するためには、法人の債務をすべて返済する必要があります。 したがって、法人の保有する資産で債務の返済ができない場合は、経営者個人の財産を切り崩して返済しなければなりません。
従業員や取引先に迷惑をかける
法人を廃業させると、従業員を解雇する必要があります。また、長年取引関係のあった企業も、新たに取引先を探す必要が発生してしまいます。 このように顧客をはじめ、従業員や従業員への家族、取引先などに対し多大な影響を生じる点を、経営者は強く意識しておかなければなりません。
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これまで培ってきた技術やノウハウが消滅する
会社が長年培ってきた技術や独自のノウハウ、会社のブランド力は、財務諸表に計上されていないものの、収益力の源泉として稼働する大きな力を持っています。 廃業を選択すると、これらは消滅してしまうか、あるいは従業員の転職によって他社に移転する恐れがあります。
法人の廃業と、個人事業主の廃業の違い
法人のほか、個人事業主が廃業するケースもあります。廃業の流れ、手続きにおいて両者は異なります。
例えば、法人が廃業を行うには、株主総会を開催し、株主の承認を得る必要があります。そして法務局で解散登記・清算人等を行い、最終的に法人格を消滅させます。一方、個人事業主の場合はこれらのステップが不要となるため、廃業届など手続きを行う必要はあるものの、法人の場合に比べてシンプルな流れとなります。
法人の廃業手続きの流れ
法人を廃業するための流れの中で、主なプロセスをピックアップして見ていきます。
株主総会の開催・解散決議
法人(株式会社)を廃業するためには、株主総会を開催して解散決議を行い、株主の承認を得る必要があります。 会社の解散のような重要事項を決議する場合は、株主総会の特別決議によって3分の2以上の同意を得るか、株主全員の賛成を書面決議で行わなければなりません。
株主総会で解散が決議されると会社の営業活動は終了し、以降は会社の持つ財産を整理するための清算会社に移行します。 それにともない取締役が退任するため、会社の清算業務を行う「清算人」の選任決議を行います。
清算人の選任方法は「定款に定めている者が清算人になる」「取締役が清算人になる」「裁判所が選任する」などがありますが、一般的には取締役が清算人にされるケースが多く見られます。
解散登記と清算人専任登記
株主総会で解散が決議されたら、解散決議から2週間以内に、法務局で解散登記と清算人選任登記を行います。 登記の申請書類は法務局のホームページからダウンロードし、必要事項を記載したうえで、管轄の法務局へ期限内に提出します。
登記が終了したら、登記簿謄本を添付して関係各所に届出書類を提出します。また、法人を廃業する際には、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場に税務上の届出書を提出しなければなりません。
この他、社会保険に関する書類は日本年金機構へ、雇用関係はハローワークへ、そして労務関係は労働基準監督署へ必要書類を作成して提出します。
財産目録と貸借対照表の作成、解散確定申告
清算人は、会社にどのような資産・負債があるのかを整理し、解散時の決算書類を作成します。具体的には財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会の承認を得ます。また、株主総会の解散決議から2ヶ月以内に、通常の事業年度開始日から解散を決議した日までを一事業年度とする確定申告(解散確定申告)を行います。
なお、これ以降は解散の日の翌日から1年ごとに、清算が終わるまでの間確定申告を行います。
公告・催告
会社が廃業によって消滅するとと、廃業の事実を知らずに清算手続きから外れてしまった債権者は、最終的に債権が回収できなくなってしまいます。こうした事態を防ぎ、債権者の権利を保護するために、会社法では官報に解散公告を2ヶ月以上掲載することが定められています。
またこれと並行し、会社が把握している債権者に対しては、書面などで個別の催告を行わなければなりません。なお、こうした債権者に対する公告と催告の手続きを「債権者保護手続き」と言います。
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清算事務と残余財産の分配
清算人は、清算業務を行う過程で債権を回収するとともに、会社が保有している資産を売却して現金化し、それを債務の支払いなどに充てる必要があります。こうしてすべての債権・債務が消滅したうえで残った財産(残余財産)がある場合は、持株比率に応じて株主に分配します。
こうして、会社からすべての資産・負債がなくなったら株主総会を開催し、決算報告書の承認を行います。
清算事務を終了、清算結了登記
株主総会で決算報告書が承認されたら、2週間以内に法務局で清算結了登記を行います。 こうして清算結了登記が終了すると会社の法人格は消滅し、会社の情報は登記簿謄本から閉鎖謄本へ移行されます。
また、残余財産の確定日から1ヶ月以内に清算確定申告を行い、同時に税務署などの関係各所に閉鎖謄本を添付のうえ、清算結了届を提出します。
以上で、法人を廃業する主なプロセスが完了します。