会社の廃業を選択した場合、従業員の解雇やそれに伴う手続きなど、注意すべき点が複数存在します。本記事では、会社の廃業を選択した場合に従業員へ行うべき対応や、注意点を解説します。
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会社を廃業する場合は、従業員を解雇する必要がある
廃業とは、経営者が自らの意思で自主的に事業を止め、最終的に法人を消滅させることを指します。 会社を廃業するためには株主総会での解散決議や資産・債務の整理を行う必要があります。様々な事務手続きを行い、会社の財産を清算したうえで、最終的には税務署や法務局で閉鎖手続きを行います。
会社を廃業すると法人が消滅してしまうため、会社と従業員との間で交わした雇用契約は継続できません。したがって会社を廃業する場合は、従業員を解雇する必要が生じます。
会社を廃業する場合は「整理解雇」となる
従業員が会社を退職する場合、その退職は大きく2つに分けられます。1つは「自己都合退職」、もう1つが「会社都合退職」です。 会社を廃業するために従業員に辞めてもらう場合は、会社都合であるため後者になります。
解雇には主に次の3種類があり、会社を廃業に伴う従業員の解雇は、整理解雇に該当します。
種類 | 概要 | 理由 |
---|---|---|
普通解雇 | 整理解雇、懲戒解雇以外の解雇 (労働契約の契約が困難な事情がある場合に限る) |
会社都合 |
整理解雇 | 会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇 | 会社都合 |
懲戒解雇 | 従業員が重大な規律違反や非行を行った場合に懲戒処分として 行うための解雇 |
自己都合 |
参考:東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 解雇編」
ただし、整理解雇が企業側に乱用されると従業員との労働契約に抵触する恐れがあるため、会社都合による整理解雇はどのような場合にでも認められるわけではありません。整理解雇が法的に成立し、解雇が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
①人員削減の必要性
人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること
②解雇回避の努力
配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと
③人選の合理性
整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること
④解雇手続きの妥当性
労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと
出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール(3.整理解雇)」より抜粋
これらすべての条件を満たすことで、会社都合による解雇が不当解雇ではなく整理解雇として認められることになります。
万が一、これらの条件が満たされていない段階で従業員を解雇してしまった場合は、訴訟などの問題が生じる可能性があります。そのため、経営者は事前に十分な確認・検討をしておく必要があります。