アークスのM&A戦略と考察
先述のM&A事例と、アークスの年商の推移のグラフを比較してみると、1987年7月に初めての資本参加を実施してから、2011年に株式会社ユニバースを買収するまでの約25年間は、全て北海道内のみでの買収を実施しています。 その後、年商3000億円を超えた2011年に株式会社ユニバースを買収し、初めての本州進出を実現します。
その翌年には、岩手県盛岡市に本社を構える株式会社ジョイス(現在の商号は株式会社ベルジョイス)を買収し、その約3年後には、宮城県に店舗を構える株式会社ベルプラス(現在の商号は株式会社ベルジョイス)を買収、そして2021年には、栃木県に本社を構える株式会社オータニの買収をしています。ユニバースの買収をきっかけに、東北、関東圏への進出を加速させていることがわかります。
アークスは2018年、株式会社バローホールディングス、株式会社リテールパートナーズと資本業務提携を締結し、「新日本スーパーマーケット同盟」を結成しました。そこでは、「八ヶ岳連峰経営」を掲げ、富士山のような大きな一つの企業体ではなく、八ヶ岳のように同じ高さが連なる山々が連携し、それぞれの経営資源・ノウハウを有効活用することで、その地域を代表するスーパーを目指すことを掲げています。
アークスの2022年の決算説明会資料でも、新日本スーパーマーケット同盟の連携強化による連続的な成長と、M&Aによる非連続的な成長の、両軸での経営を行うことで、八ヶ岳連峰経営の進化とアークスグループとしての成長を目指すことを掲げており、今後も資本提携を活発に実現していくのではないかと考えられます。
ヤオコーの会社沿革とM&Aについて
そこで対照的なのは、「株式会社ヤオコー(以下、ヤオコー)」です。 明治23年、埼玉県武州小川町(現在の小川町)で創業したヤオコーは、北関東をメインに店舗を拡大していき、1993年に東証二部に上場、1997年に東証一部に指定替えを実施しました。
そして2022年3月期、年商5000億円を超える大手スーパーとして、店舗を展開しています。
ヤオコーのM&A遍歴と考察
以下は、ヤオコーのM&Aの事例です。
- 2006年6月 ㈱日本アポドックのドラッグ部門を、㈱スギ薬局に事業譲渡
- 2008年9月 ワイシーシーの全株式をブックオフコーポレーションに株式譲渡
- 2015年3月 日本アボックをアルサフレッサホールディングスに一部事業譲渡
- 2016年6月 【神奈川県×スーパー】エイヴイ(以下、エイヴィ)を買収
- 2021年10月【千葉県×スーパー】せんどうと資本業務提携。43.18%を取得。同社を持ち分法適用関連会社化し、両者間で業務提携を開始 (株式会社ヤオコーのIR情報を基に日本M&Aセンター作成)
出典:株式会社ヤオコーのIR情報を基に、日本M&Aセンター作成
ヤオコーはアークスとは違い、過去に2件しか買収を行っておりません。 アークスとヤオコーの年商推移を比較したグラフを見ると、アークスのように急激に年商が伸びることはない一方で、創業からオーガニック経営を主軸として着実に売上を伸ばしていることがわかります。
また、アークスが本州への一歩を踏み出した時と同様、年商3000億円を超えたタイミングで、今まで行ってこなかった「買収」という大きな決断をしています。
今後は、これまでのアークスのように、会社規模の拡大を目的とした買収を実施しようとしているのかもしれません。