第三次外食М&Aブームは到来するのか?

2021年はコロナショックの影響で外食業界のM&Aは激減したものの、2022年はコロナ前と同水準程度に回復傾向にあります。

未だかつて経験したことのない、環境下におかれた外食業界において、何をすべきか?ということが定まっていなかったため、M&Aなどの大型投資は控えめな傾向であったが、2022年に入りジリ貧な環境下からの脱却を目論み新しい時代への体制構築を目的としたM&Aが行われるようになり、今後も増加傾向に入るではないかと推測されます。

2022年に行われた事例をいくつかピックアップします。

①既存事業の深堀に向けたサプライチェーンの強化

  • 【売り手】建部食肉産業(食肉加工)×【買い手】木曽路
  • 【売り手】綜合食品(水産卸)×【買い手】SANKO MARKETING FOODS
  • 【売り手】松屋栄食品本舗(調味料・総菜)×【買い手】ブロンコビリー

など、自社の主要業態のサプライチェーンの強化を行い、商品力の強化と内部コストの削減などを行うことで、既存業態やこれから展開する業態のコアコンピタンスを高める動きが活発的に行われていった。

②既存領域の拡張とポートフォリオの見直し

鳥貴族ホールディングスがサントリーホールディングス子会社の全国約500店の「やきとり大吉」を展開するダイキチシステムの譲り受けを行いました。

鳥貴族ホールディングスは、「焼鳥屋 鳥貴族」と「やきとり大吉」はともに焼き鳥を中心とした飲食店だが、出店立地・主要顧客層が異なるため両ブランドの共存できるとしています。

今回の子会社化で小~中商圏における店舗網を確保することができ、さらには焼き鳥飲食店の運営に係るあらゆる共通点、同社のフランチャイズノウハウ、両社の独立制度などを生かしたい考えのものとM&Aが実行されました。

更に、クリエイト・レストランツ・ホールディングスは日本たばこ産業の子会社のベーカーチェーンを運営するサンジェルマンの譲り受けを行った。

クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、2021年7月に掲げた中期経営計画において「アフターコロナを見据えたポートフォリオの見直し」を第一の柱と定め、「日常」、「定番」、「地域密着」をキーワードに新たなポートフォリオの獲得を目指しており、それに伴いサンジェルマンの譲受を行いました。

このような既存領域の拡張とポートフォリオの見直しに向けたM&Aは今後も増加していくのではないかと考えられます。

③食のベンチャー企業のイグジット

コロナショックが与えた影響は必ずしも負の影響だけでなく、コロナショックが追い風となり急成長する企業も出現した。

その背景として、フランチャイズビジネスへの問い合わせ件数の増加、中食市場の拡大などが上げられ、このような時流を捉えた企業は短期間の間でビジネスを拡大させていった。

そういった中、この波を単発で終わらせるのではなく、永続的なものへと昇華させるために、自社単独で攻め切り急成長させていくのではなく、大手やファンドの資本を受け入れ守りの体制を構築するための食のベンチャー企業のイグジットも2022年は目立っているのです。

例えば、フルーツ大福弁才天を展開する「弁才天」がPEファンドに株式の過半数を譲渡した事例や、デリバリーブランドを複数展開する「バーチャルレストラン」がUSEN-NEXT HOLDINGSの子会社となった事例など、共に創業して数年でのM&Aと、非常に短い期間であるものの、急成長している現状に甘んじることなく、更なる安定的な成長を目指して、外部の資本を活用するといった取り組みが行われた。

時代の移り変わりが激しい現代においては、このようなアーリーイグジットの事例は今後も加速していくのではないかと考えられます。

コロナの終焉・インバウンド需要の回復など、これから市場が明るくなる要素を多分に含んでいる外食業界においては、市場の回復に伴い、この勢いで第三次М&Aブームが起こるのではないかと想像をしています。

いかがでしたでしょうか? 食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたらお問い合わせを頂ければ幸甚です。 買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。 また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

著者

高橋 空 高橋たかはし そら

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 食品業界専門グループ

1991年9月、神奈川県生まれ青山学院大学経営学部卒業後、株式会社船井総合研究所にてフードビジネス専門のコンサルティングに従事した後、日本M&Aセンターに入社。食品業界専門グループにて、食のベンチャー企業のイグジット支援から創業100年を超える老舗企業の事業承継支援まで幅広くM&A支援に携わる。