第二次外食M&Aブーム(2016年~2020年)
2016年からの第二次外食M&Aブームは以下のような背景で発生しました。
2003年に政府はビジット・ジャパン・キャンペーンを立ち上げ、国を挙げて観光の振興に取り組み、観光立国を目指す方針を示しました。 それから10年たった2013年に訪日外国人客数が目標であった年間1000万人を突破すると、新たに2020年までに2000万人、2030年までに3000万人にするという目標が掲げられます。同年に2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定し、円安も追い風となり、2015年には訪日外国人客数1973万7000人を記録。 2000万人まであと一歩に迫ると同時に、大阪万博が開催された1970年以来45年ぶりに、入国者数が出国者数を上回った。縮小傾向だった外食市場はインバウンド需要の増加により、2013年増加傾向へと反転しました。
一方で国内人口減少に伴う人材不足、物件不足などで出店が鈍化していったのもこの時期です。更には消費者のニーズが多様化していったことにより、総合型の業態から専門性の高い業態が求められ、業態開発の難易度が上がっていきました。
この時代において、譲受け企業においてはポートフォリオを強化するためのM&Aが増加し、譲渡企業においても成長戦略型のM&Aという概念が普及していったことにより、M&Aが活性化していったのです。
①単一業態多店舗展開から多業態多店舗展開の主流化
ポートフォリオ経営の加速 これまでは、単一業態を国内に何百店舗展開するという単一業態多店舗展開が主流戦略でしたが、この時代は消費者のニーズが多様化し、移り変わりも早くなり、展開できる物件も限定的になったことに伴い、多業態多店舗展開のポートフォリオ経営を取り入れる企業が増加していきました。
単一業態多店舗展開は、業態に合った物件を取得するという、業態ありきの戦略であったものが、多業態多店舗展開は出てきた物件に対して、その物件にあった業態を展開するといった、これまでとは発想を逆転させたものです。
ポートフォリオ経営とは このポートフォリオ経営を積極的に取り組んでいたのが、クリエイト・レストランツ・ホールディングスであり、「グループ連邦経営」を掲げ、数多くのМ&Aを実行しました。
クリエイト・レストランツ・ホールディングスのМ&A
②成長企業における成長戦略型のM&A
当時のM&Aのイメージはまだまだ、後ろ向きなイメージが拭えなかった中で、30代~40代の若手経営者が自身の会社を成長させるために、大手との資本提携を目論む成長戦略型のM&Aという概念が普及していきました。
特に、外食経営においては店舗数が30店舗近くになると、人事・財務など管理コストが増大し、新規出店に偏った投資が困難になり、利益率が急激に減少していく傾向にあり、これまで培ってきた経営ノウハウだけでは、乗り切ることが困難な“崖”が経営者の前に立ちはだかることがあります。
30店舗の崖
そういった中で、2017年には立ち飲み居酒屋の急成長中ブランドの「晩杯屋」をМ&A当時25店舗展開していたアクティブソースと、関西の有名ラーメンチェーン「ずんどう屋」をM&A時に30店舗展開していたZUNDが、成長戦略型のM&Aを目論み、丸亀製麺などを展開するトリドールの傘下に入る選択を行いました。
両ブランドともM&A後に約2倍近く店舗数を増やすなど、1社単独では難しい世界観を大手の資本を活用することで実現させています。
③PEファンドによる中堅企業への投資が加速
それまでのPEファンドは比較的規模の大きな会社への投資が中心であったが、国内におけるPEファンドの数の増加などに伴い、中堅企業への投資が加速していき、外食経営のプロ化が加速していった時代であるともいえる。
PEファンドによる中堅企業への投資事例 出典:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成