買収は「敵対的買収」と「友好的買収」の2つに大別できます。日本における企業買収の大半は友好的買収によって行われますが、稀に敵対的買収が行われることもあります。本記事では、敵対的買収の概要、敵対的買収を仕掛けられた側の防衛策、企業事例などをご紹介します。
敵対的買収(同意なき買収)とは
敵対的買収とは、対象企業の経営権の獲得を目的に、経営陣や株主などの合意を事前に得ることなく行う買収を指します。英語ではhostile takeoverと表現されます。
経営陣や株主など当事者の合意を得ていないため「敵対的」と表現しますが、事前に当事者の合意を得て行う場合は友好的買収と呼びます。
なお、経済産業省が2023年8月31日に経済産業省が策定した「企業買収における行動指針」では、敵対的買収という言葉に代わり「同意なき買収」と定義されています。
出典:「企業買収における行動指針(経済産業省)」 用語の意義より抜粋
敵対的買収が行われる背景には、企業の成長戦略や競争力強化の動機、株主の期待、経営陣と株主との対立、市場状況などが挙げられます。
敵対的買収と友好的買収の違い
友好的買収の場合、買収後の引継ぎなど交渉条件は様々ですが、対象企業のオーナー経営者や役員は継続して残る場合も多く見られます。一方敵対的買収では、経営陣が退陣させられるケースは少なくありません。
友好的買収は買収後のスムーズな統合に向けて、両社による事前に入念な協議、条件の交渉を行う必要がありますが、買収成立後のn統合作業に向け、両社が協力し合える体制を構築しやすいなどのメリットがあります。
敵対的買収を行う方法
敵対的買収を成功させるためには、買収対象企業の議決権の過半数、つまり発行済み株式総数の50%超を保有する必要があります。株式を買い付ける方法は一般的に、株式公開買付け(TOB)によって行われます。市場取引の場合、株価が上がる可能性が高く、買収を仕掛ける側は大量の資金が必要になってしまいます。
TOBでは、対象企業の株式の「買付け期間・買い取り株数・価格」をあらかじめ公告したうえで、不特定多数の株主からの株式買い取りを行います。このときの買い取り価格は、市場価格よりも30~50%程度を高めに設定するのが一般的です。