敵対的買収の事例
最後に、国内で行われた敵対的買収の事例をご紹介します。
コクヨによる、ぺんてるへの敵対的買収(2019年)
2019年11月、文房具大手のコクヨは、ぺんてるに対して敵対的買収を仕掛けました。 ぺんてるは非上場会社ですが、コクヨはぺんてるの筆頭株主であるファンドを子会社化したことで議決権37.45%を持っており、実質的には筆頭株主でした。そしてコクヨはさらに株式を買い進め、子会社化する目的でTOBを公表します。
コクヨはぺんてる株を1株4200円で取得し、議決権比率を50%超に引き上げると表明しましたが、ぺんてるは同じく文具大手のプラス株式会社にホワイトナイトを打診します。
コクヨの買い取り価格は1株3,500円で買い付けたプラスより高かったものの、保有分と合わせても45.6%と過半数に届きませんでした。非上場企業のぺんてるを子会社化するためには、ぺんてるOBや取引先が持つ株式を、コクヨが取得できるかどうかが焦点となりました。
当時のぺんてるの株主はOBや取引先が中心であったため、ぺんてるの経営陣がプラスに売るように説得するなどの背景もあり、一進一退の攻防が続いた結果、コクヨの敵対的買収は失敗に終わりました。
伊藤忠商事による、デサントへの敵対的買収(2019年)
2019年1月、伊藤忠商事が大手スポーツ用品デサントに対して、敵対的買収を仕掛けました。
両社は、デサントが過去二度にわたり経営危機に陥った際、伊藤忠が再建支援を行うほどの関係性でしたが、韓国への依存度が高いデサントと、中国市場での成長を目指す伊藤忠の間で経営を巡る対立が表面化します。
デサント側は伊藤忠側への連絡なしに伊藤忠出身の社長を退任させ、伊藤忠出身者以外の人物を社長に選任しました。さらにデサントの経営を巡る対立が激化した結果、伊藤忠はデサントに対するTOBを発表しました。
伊藤忠は株式の買い取り価格を市場価格の5割増しに設定し、TOBを開始します。もともと伊藤忠がデサントの株を買い進めていたこともあり、デサント側は有効な防衛策が打てないまま、3月にTOBが成立しました。
本件は、国内の大企業同士ではじめて敵対的TOBが成立した事例とされています。
フリージア・マクロスによる、ソレキアへの敵対的買収(2017年)
2017年2月、フリージア・マクロス株式会社の会長である佐々木氏は、システム開発のソレキア株式会社に対し、敵対的買収を仕掛けました。
ソレキア側からホワイトナイトの打診を受けた富士通は、TOB合戦に参加を表明し、佐々木氏が1株2,800円で買い付けるのに対し、1株3,500円、総額約25億円でのTOBを発表しました。しかし、結果的に買付価格の上昇により富士通によるTOBは不成立に終わります。その結果、佐々木氏は39.64%の議決権を取得し、筆頭株主になりました。
この事例は、ホワイトナイトを打ち破り、敵対的買収が成功した国内では珍しい事例とされています。