コングロマリットの注意点
コングロマリットを形成する際の主な注意点は、以下の通りです。
企業価値が低下するリスクもある
複数の事業を展開することで、主力事業に経営資源を集中させることは難しくなります。また、想定していたようなシナジーが発揮できず、複数の事業が共倒れに終わる可能性も考えられます。 その結果、市場での競争力、株価も低下し、資金調達が難しくなってしまう状態を「コングロマリット・ディスカウント」と呼びます。
ガバナンスの低下に注意する必要がある
各事業の独立性が高く、親会社が各社すべての事業に精通していない場合、経営を適切に監視・指導できず、ガバナンスの低下を招く可能性が考えられます。 ガバナンス低下の結果、不正や品質低下などの事態が起きることを回避するため、ガバナンス強化の対策を入念に講じる必要があります。
また、各社が独立しているため、コミュニケーションを取る機会が十分になく、グループ全体の情報が伝わりづらくなる可能性もあるため、経営陣はグループ内のコミュニケーションの取り方に気を付ける必要があります。
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短期的な経営戦略に不向き
メリットで述べた通り、様々な市場でビジネスを展開していくため、短期的にシナジーや成果を生み出すことは困難です。中長期的なビジョン・戦略で事業を進めていくことが求められます。
コングロマリットとコンツェルンの違い
企業の集合体を表す言葉として「コンツェルン」があります。これは「グループ(Konzern)」を意味する言葉で、持ち株会社などを頂点にして子会社群・孫会社群を形成し、市場の独占を目的とする企業体を指します。
コングロマリットが事業の多角化を目指すのに対し、コンツェルンは市場を支配・独占することを目的としています。
日本では戦前の「財閥」がコンツェルンに該当しますが、GHQにより解体され、その後独占禁止法によって持ち株会社の設立は禁止されました。しかし、この法律はM&Aを通じて組織再編を行うための障害となっていたため、1997年に改正され、持ち株会社の設立が解禁されました。
コングロマリットと、その他多角化戦略の違い
企業の多角化戦略は、コングロマリットの他、以下に分類できます。
①水平型多角化戦略
水平型多角化戦略は、既存の顧客基盤やブランド価値を活用し、関連する市場で異なる事業領域に進出する戦略です。
例えば、食品小売業界で成功している会社が、新たに食品配達サービスを提供する事業を始める場合、これは水平型多角化です。
既存の事業で得られたノウハウを転用するため、リスクを抑えてシナジー効果の創出が期待できるでしょう。
②垂直型多角化戦略
垂直型多角化戦略は、既存事業の川上または川下の領域に進出し、成長拡大を狙う戦略です。
例えば、農業機械の製造会社が、農産物を販売する小売事業に進出する場合、これは垂直型多角化です。
既存の顧客のニーズが掴みやすいアドバンテージがあるため、リスクを抑えて展開することができるでしょう。
③集中型多角化戦略
集中型多角化戦略は、既存の技術・ノウハウを活かした新商品を、新たな市場に投入する多角化戦略です。
集中型多角化は、既存の強みをさらに発展させ、市場での競争優位性を追求するために使用されます。
デジタルカメラのセンサーを医療技術に転用する例などが、この集中型多角化戦略にあたります。既存の技術と関連性の高い商品を製造するため、開発費削減などのシナジー効果を生みやすい戦略といえるでしょう。