減価償却費の仕訳

決算書上、損益計算書(PL)では、減価償却費で表示することになりますが、 の表示に貸借対照表(BS)ついては「直接法」と「間接法」があります。

直接法とは

直接法とは、貸借対照表(BS)において固定資産に対する「減価償却累計額」を、固定資産の金額から直接控除する表示です。直接控除法とも言われます。

会計上、固定資産の取得価額を投下資本、減価償却費を収益獲得への貢献(投下資本の回収)と考えるため、直接法は、投下資本から回収部分を控除することで、未回収分を明示する表示方法と言えます。

なお、前述の無形固定資産については直接法のみの表示で、間接法の適用は認められていません。

A社は建物、機械装置、車両運搬具を保有しています。それぞれの取得原価と減価償却累計額は、以下の通りです。

【建物】 取得原価:800、減価償却累計額:500
【機械装置】 取得原価:500、減価償却累計額:400
【車両運搬具】 取得原価:200、減価償却累計額:100

未償却残高はそれぞれ300、100、100となることから、貸借対照表(BS)では下記のように表示されます。

間接法とは

間接法は、損益計算書(PL)で固定資産に対する控除項目として、減価償却累計額を表示する表示方法です。間接控除法とも言われます。

そのため投下資本である取得価額と、投下資本の回収額である減価償却累計額が表示されます。なお、減価償却累計額については、資産のマイナス科目として表示され、「科目別に表示」する方法と、「一括して表示」する方法があります。

上記A社の場合、貸借対照表(BS)上における科目別、一括での表示は以下の通りです。

間接法による決算書のイメージ

減価償却費の計算方法

減価償却は、固定資産の取得に要した原価の配分であり、「減価償却費の計算」と「決算書への反映」が必要となります。

市販商品のように、販売された分を確認し、その取得に要した原価のうち、費消部分(経済的価値の減少分)を損益計算書(PL)の売上原価として計上し、未費消部分を貸借対照表(BS)の棚卸資産として計上できればいいのですが、固定資産では行えません。

そこで会計上は、一定の仮定を置き、固定資産の原価のうち、経済価値が減少した分を算出します。 このような仮定の下で算出される金額が減価償却費であり、恣意的な利益操作を排除する観点から、計画的かつ規則的に固定資産の原価を配分することが必要となります。

減価償却費の計算要素には「取得価額」「耐用年数」「償却方法」などがありますが、税法ではそれぞれ細かい規定があり、損金算入限度額を定めています。

多くの企業はこれらの規定に準拠し、税法において損金算入が認められる限度額に達するまでの金額を「減価償却費」として計上しています。このような減価償却費の金額を「普通償却額(または普通償却限度額)」と言います。以降、「普通償却額」の計算について「定額法」と「定率法」を用いて解説します。

定額法とは

定額法は、固定資産の耐用期間中、毎期均等額の減価償却費を計算する方法です。

例えば6年間使用することができる設備を100万円で取得し、6年後には10万円で処分できると判断した場合の減価償却のおおよそのイメージは以下の通りです。 図表2:定額法による減価償却イメージ

主に建物や建物附属設備などを取得した場合に用いられる償却方法となります。

償却資産 償却方法
建物、建物附属設備、構築物 定額法
上記以外の有形固定資産 定額法または定率法(選定しない場合は定率法)
無形固定資産 定額法

※上記は平成28年4月1日以降に取得した償却資産の償却方法についての規定であり、平成28年4月1日より前に取得した償却資産については別途規定があります。 参考:「法人税法施行令」

後述の定率法と比較して減価償却費が大きく変動せず、決算書への影響が小さい点が特徴に挙げられます。定額法による普通償却額は、取得価額に償却率を乗じることで計算できます。


定額法
普通償却額=固定資産の取得金額×定額法の償却率

定額法の償却率は、以下の通りです。(耐用年数~10年、平成19年4月1日以降取得の場合) 参考:減価償却資産の償却率表(国税庁)

耐用年数 定額法償却率
2 0.500
3 0.334
4 0.250
5 0.200
6 0.167
7 0.143
8 0.125
9 0.112
10 0.100

事例で確認していきます。

建物附属設備を以下の条件で取得した場合
取得価額:100万円
耐用年数:3年 取得タイミング:令和5年10月1日

事業年度ごとの普通償却額の計算は、以下の通りです。

年数 普通償却額 普通償却額の累計額 未償却残高
1年目 100万円×0.334
=334000
334,000 1,000,000-334,000
=666,000
2年目 100万円×0.334
=334,000
334,000+334,000
=668,000
1,000,000-668,000
=332,000
3年目 333,999(※) 668,000+333,999
=999,999
1,000,000-999,9999
=1

※3年目の普通償却額は、取得価額に償却率を乗じた金額になっていません。これは税法の規定において、償却可能な金額が取得価額から1円を除いた金額と定められているためです。

上記事例により、定額法では、普通償却額は毎期同じ金額になっていることが確認できました。

図表6:定額法における帳簿価額と減価償却費の推移 そのため 大型の設備投資を定額法で計算する場合、初期の段階では損益計算書(PL)へのマイナスの影響は大きくない一方、多くの節税メリットを享受しづらいというデメリットが挙げられます。

定率法とは

定率法とは、固定資産の耐用期間中、未償却却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法です。主に機械装置、器具備品などを取得した場合に用いられます。

初期に多額の減価償却費を配分する効果があり、減価償却費は、毎期逓減することが特徴です。 定率法による普通償却額は、未償却残高に償却率を乗じることで計算できます。

定率法
普通償却額=未償却残高×定率法の償却率

定率法の償却率、保証率は、以下の通りです。(耐用年数~10年、平成24年4月1日以降取得の場合) 参考:減価償却資産の償却率等表(国税庁)

耐用年数 定率法償却率 保証率
2 1.000 -
3 0.667 0.11089
4 0.500 0.12499
5 0.400 0.10800
6 0.333 0.09911
7 0.286 0.08680
8 0.250 0.07909
9 0.222 0.07126
10 0.200 0.06552

事例で確認してみましょう。(厳密には償却保証額の計算、比較が必要ですが、事例では行っておりません。)

機械装置を以下の条件で取得した場合
取得価額:100万円
耐用年数:3年
取得タイミング:令和5年4月1日
年数 普通償却額 普通償却額の累計額 未償却残高
1年目 1,000,000×0.667
=667,0000
667,000 1,000,000-667,000
=333,000
2年目 333,000×0.667
=222,111
667,000+222,111
=889,111
1,000,000-889,111
=110,889
3年目 110,888(※) 889,111+110,888
=999,999
1,000,000-999,9999
=1

※3年目の普通償却額について、取得価額に償却率を乗じた金額とはなっていません。これは税法の規定において、償却可能な金額が取得価額から1円を除いた金額と定められているためです。

図表7:定率法における帳簿価額と減価償却費の推移

事例により、1年目の普通償却額が最も大きくなり、2年目以降は逓減していることがわかります。 そのため定額法での償却計算による場合とは異なり、投資初期に多額の節税メリットを享受できる一方、損益計算書(PL)へのマイナス影響が大きいというデメリットがあります。