誰かが亡くなると、遺族は葬儀の負担と、遺産相続の両方の準備・対応に追われて忙しくなります。
この記事では、死亡届の提出から葬儀の流れを解説するとともに、起こりうるトラブルについてご紹介します。
死亡届提出~葬儀までの流れ
人が死亡すると、死亡届を市区町村役場などに提出しなければなりません。
死亡届によって、死亡の事実が戸籍に記載されます。
死亡の届け出は、届け出義務者が死亡の事実を知った日から七日以内に提出しなければならないと定められています。
死亡届をした後、火葬許可証の交付を受け、遺体を火葬します。
火葬は、原則として死亡後24時間を経過した後でなければ行うことができません。
火葬についてはこのように法律で決まっていますが、葬儀については特に決まりはなく最近は葬儀のない直葬というスタイルもあります。
葬儀費用は、相続人で共同して負担というケースが多いですが、特に誰が負担しなければならないという決まりはありません。
また、葬儀のタイミングについても自由です。
多くの場合、火葬の前に通夜・葬儀をしますが、遺体を火葬した後に葬儀を行う地方もあります。
相続人同士でもめてしまう理由
さて、相続トラブルをざっくりと俯瞰してみると、親族間のコミュニケーション不足、価値観が共有・尊重できていない場合といった親族が原因となるもの、さらには故人の人間関係がもとになっているもの(前婚の家族や、愛人とその家族)、故人の経済関係(借金など)が原因となる問題に分かれます。
親族の人間関係がもともとよくない場合
親族間のコミュニケーション不足に起因する問題については、これまでの人間関係があまりよくなかったがために、相続の場面でももめてしまうということです。
誰でも、仲が悪い人とはコミュニケーションを取りたくないですし、取りづらいものです。
故人に起因する問題
故人に起因する問題については、残された家族がそもそも把握していないことがたくさん含まれています。
周囲に知られていない借金がかなりの金額あったという経済的な問題や、知らない子ども、知らない愛人など、実は複雑な家族関係であったことが、あとから出てくることがあるのです。
前婚の家族がいることなどは、事前にわかりそうだと考えられがちですが、例えば故人が自分は初婚であると周りに言っていたり、戸籍を取り寄せるのは故人がしていたので、他の人は戸籍を見たことがなかったりという場合は、前婚の家族がいることに気づくチャンスがかなり少なく、結局、遺産分割の時までわからないということはあります。
これらの問題はどなたの相続であっても起こりうることですので、事前にこういうトラブルがあるのだと把握しておくことが重要です。
いざというときに、どうしたらいいのか考えておくことで、万が一のことが起きても冷静に対応することができます。
それでは、起こりうるトラブルについて、故人の葬儀から時系列でみていきましょう。
葬儀編
葬儀の喪主が誰になるかでケンカ
最初にありがちなトラブルは、誰が喪主になって葬儀を仕切るのかという問題です。
喪主とは、葬儀を取り仕切る人のことです。
喪主に関しては法律上の用語ではなく、特に誰がならなければいけないという決まりもありません。
誰がしてもよいのです。
一般的な習慣として、喪主は故人の配偶者か、故人の子がなります。
似たような用語で、施主があります。
施主は、葬儀の費用を負担する人のことです。
施主についても、誰がならなければいけないという決まりはありません。
葬儀のやり方でもめる(宗派など)
葬儀には、宗教が関係してきます。
普段は無宗教として生活している人でも、葬儀の際は何かしらの宗教の形式によって行うことになります。
例えば、家族内で宗教が分かれている場合はどうなるでしょうか。
故人は無宗教だったとします。
故人の配偶者は新興宗教、故人の子の一人は仏教、故人の子の二人目はキリスト教だとしましょう。
要するに、遺族がそれぞれ信じているものが違います。
宗教によっては、別の宗教の葬儀に参列したり、ましては別の宗教の形式で葬儀をあげたりすることについて抵抗感のある人がいます。
故人の葬儀は、どの宗教で執り行うかということが問題になりそうですね。
法律上は、特に葬儀の形式についての規定はありません。
最近では、宗教がほとんど関係しない直葬という形式もあります。
ただし、信仰のある人にとっては、人の死にかかわる葬儀をどの形式でするのかということは大きな問題です。
信仰という心の問題でもありますので、もめると人間関係に後々回復できない亀裂が入ってしまうことがあります。
葬儀の費用負担でもめる
さて、やっと葬儀の形式面で遺族が納得したところで、今度は費用負担でもめることがあります。
実は、葬儀の費用はどこから出すべきかという問題について、法律は特に何も決めていません。
判例も見解が分かれていて、故人の財産から出す説、喪主が出す説、共同相続人で負担するという説、慣習で決めるという説があります。
費用負担でもめるパターンの代表例は、他の相続人の意見を聞かずに、喪主が勝手に盛大なお葬式を挙げてしまった場合です。
当然、他の相続人は納得がいきませんから、費用負担なんてしたくないと言います。
そして、喪主は思ったよりも費用がかさんでしまったので、自分だけで負担するのはおかしいと思っています。
お墓編
遺骨の引き取りでバトル
葬儀が終わると、遺骨を墓に納めます。
この場面では誰が遺骨を引き取るのかで争いが起こりがちです。
特に、結婚を複数回している場合は要注意です。
法律上では相続ではなく祭祀を誰が承継するかという問題になります。
内縁の妻(相続権がない)と、故人の子(相続権あり)が争った事件(高知地裁平成8年10月23日)では、裁判所は内縁の妻に祭祀承継を認め、遺骨の承継を認めました。
逆に、誰も引き取りたくなくてもめるという場合もあります。
お墓の場所・値段でもめる
故人が生前にお墓を用意していればいいのですが、もしない場合は遺族で用意することになります。
故人の故郷か、遺族が通いやすい場所か、遺族といってもばらばらに住んでいる場合は誰の家から近いのかなど、場所についての意見がまとまらないことがあります。
さらに、場所は決まったとしても今度はお墓の値段について高すぎる、安すぎる、負担分が大きいなどのトラブルが発生しがちです。
誰がお墓を承継するかでもめる
先祖代々の墓に入る場合、墓を新に用意する必要はありませんが、今後は誰がお墓を継ぐのかという問題が起こります。
お墓の管理は時間も体力も必要なので、誰も負担したくないと思うかもしれません。
もし誰も引き継がないのであれば、お墓をどうするか考えなくてはなりません。
永代供養墓に改葬するなどの手段もありますので、誰も引き継ぐ人がいなくても実は大丈夫です。
もめるケースとしては、親族間で押し付けあってしまう場合です。
「○○は長男だからお墓を継ぐべきである、継がないなんてありえない」という考え方をする親族がいる場合、永代供養墓にお骨を移すのは難しくなります。
十分に話し合う必要があります。
遺産分割編
不動産の分け方でバトル
基本的に、遺産相続は故人の書いた遺言書に沿って行います。
ただし、遺言書の内容と別の分け方で遺産分割をしてはいけないというものではありません。
全財産を相続人のうち、一人に挙げてほしいなど、極端な内容の遺言書についても遺言としての内容の自由を認めています。
また、相続人全員で協議をし、遺産分割の方法が遺言と違う内容になってしまったとしても、相続人全員で協議し、合意されたものについては、遺言書の通りにしなくても良いです。
実際の遺産分割でよくあるのは、目立った財産が不動産しかないという場合です。
その不動産を欲しい相続人の間で話がまとまらない、相続人のうち一人が実際に住んでいて、協議がまとまらず住み続けられなくなることもあります。
故人の預金関係のトラブル
ある人が亡くなると、預金口座は凍結され、預金口座は故人のものではなく、相続人全員の共有財産となります。
預金口座が凍結されてしまうとかなり困るという方は多いのではないでしょうか。
特に、手持ちがないのに葬儀費用を出さなければならない場合などはなおさらそう思うでしょう。
亡くなった直後であれば、キャッシュカードが使える可能性はあります。
しかし相続人の間で使い込みがあった、なかったという言い合いに発展してしまう可能性も否定できません。
先ほどもご紹介したように、故人の預金口座は共有物です。
他の人の承諾がないのに勝手に処分することはできません。
葬式は死亡後に行われるものなので、故人の預金から支出をカバーしたら良いのではないかという発想もありますが、法律的には葬儀費用は相続人間で負担すべきという認識が有力です。
まとめ
今回は、死亡届提出から葬儀の流れと起こりうるトラブルについてご紹介しました。
これらのトラブル以外でも、もちろん起こる可能性はあります。
トラブルは、事前に知っておき、対策を立てておくことで予防できます。
自分の家族にもトラブルが起こりうるかもしれないと思って、心構えをしておきましょう。
対策を立てておいたおかけで、感情的にならず、冷静に話し合うことができるでしょう。
(提供:相続サポートセンター)