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(画像=相続サポートセンター)

人が亡くなり相続が発生すると、遺産をどうするのかを決めなければなりません。

誰が何をもらい、何を負担するのかといったことです。

それが遺産分割であり、その場で決めたことを書面にしたものが遺産分割協議書です。

この遺産分割の場面でこそ、相続のトラブルが発生しやすいのです。

ここでは相続トラブルが発生しないようにするためにはどうすればいいのか、また遺産分割の書類で気をつけておきたいことを紹介します。

遺言はありませんか?

まず、人が亡くなったときに遺言があるのかを確認しましょう。

遺産分割と遺言の優先順位ですが、遺言が遺産分割に優先します。

遺言は亡くなった人が書いたものであり、書いた故人の意思が尊重されるからです。

ただ遺言に書いていない財産等は通常の相続となり、その遺産を誰が取得するのかは遺産分割の協議が必要となります。

また、公正証書遺言ではなく、故人が手書きで書いた自筆証書遺言は家庭裁判所の検認の手続が必要となります。

この検認の手続を経ないと遺言の内容は実現できません。

戸籍を集めていこう

次に亡くなった人の戸籍を集めていきましょう

戸籍は大体数通にまたがることが多いです。

コンピューターで処理された最近の横書きのものから一昔前の縦書きのものまで複数にまたがるのが通常です。

それらを川下から川上に遡上するように追いかけていきます。

なぜ、このようなことをするかというと、遺産分割協議は相続人全員でしなければならないからです。

一人でも欠けるとせっかく開いた遺産分割の協議は無効になります。

認知はしていないのか、養子縁組はないのか等、入念に調べていきます。

この辺の事柄は事項欄という箇所を確認していくと記載されています。

ただ横書きのものと違い、縦書きの戸籍謄本は字が手書きで読みにくいなど色々な事情があります。

市役所の窓口で戸籍を請求したときに、「これは何年から何年までのものか?」「何と書いているのか?」等尋ねると、たいてい丁寧に教えてくれますので書類を見落とさないようにしていきましょう。

遺産分割協議を始める前にすること

戸籍が一通り揃ったら遺産分割の協議です。

ここで大切なことは相続人全員に必ず連絡を取ることです。

中には心理的に連絡を取りにくい人もいるでしょう。

でも、その人を外して協議を進めるわけにはいかないので必ずコンタクトをとるべきです。

そしてこれは絶対に手順を間違えてはならないことですが、必ず同意を得てから遺産分割協議書の書類を用意すべきです。

連絡も同意も得ていないのに、いきなり遺産分割協議書の書類を相手に送りつけて実印を押印して印鑑証明書と一緒に送ってくれというのは、かなり失礼です。

それが仲の悪い親族である、あるいは疎遠なところであればあるほど、相続トラブルに発展していきます。

遺産分割協議とは

相続人全員が集まりましたら、いよいよ遺産をどう分けるかを話し合います。

遺産目録などを作成し、それに則って誰が何をもらうのか、誰が何を負担するのかを決めていくと話は比較的スムーズに進められるでしょう。

もし協議し忘れがあると、再び話し合いが必要になる場合があります。

この協議の場を設けるまでの間に、戸籍だけでなくどんな遺産があるのかも綿密に調べておきましょう。

遺産分割協議書を作成する

それが終わりましたら、取り決めたことを遺産分割協議書という書類に記載していきます。

不動産の名義変更の際には印鑑証明書が必要になります。

サインしていただいたら、その方の実印を押して印鑑証明書を用意してもらいましょう。

また、下記に主な遺産の移転について列挙しておきます。

ご参照下さい。

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相続人の中に未成年者がいてその親が遺産を貰うというような場合は、そのまま遺産分割協議書を作成すると利益相反したことになり無効になります。

要は、子供が権利を失って親が得したと法は判断するのです。

この場合、家庭裁判所で特別代理人を選んでもらう必要があります。

また相続人の中に認知症の人がいれば成年後見人を家裁で選任してもらう必要があります。

判断能力もないのにサインしても無効ですから、後で争われる余地が出てきます。

遺産分割協議書の作成ポイント

預貯金等は○○銀行○○支店口座番号○○○○等と記載していきます。

不動産は登記事項証明書や固定資産評価証明書の記載の通りに書いていきましょう。

未登記の建物等がある場合は、固定資産評価証明書の記載通りに書いていくと疑義が生じにくくなります。

この協議書に記載漏れがあると後でまた皆で集まって協議をしたり、協議書を作ることになりますので、遺産で抜けているものがないのか入念にチェックをして下さい。

また最後に「本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産は、○○が相続する」という文言を入れておくと、万一他に遺産が出てきたとしてもスムーズに処理することができます。

ただ協議の場で遺産は隠しておいて後でこの一文を持って隠していた遺産を独り占めするのはトラブルになり無効になる可能性があるので気をつけてください。

相続法の改正について

2020年には相続法が大きく変わります。

配偶者には短期居住権や長期居住権という賃借権に似た権利が生まれます。

また、自分で書いた自筆証書遺言は法務局で保管してもらえる制度ができます。

法務局で保管されていた遺言は家庭裁判所の検認手続が不要になりますので、遺産分割や財産評価のあり方も少しずつ変わっていくかもしれません。

なお、配偶者の居住権は2020年の4月1日から、遺言書の法務局での保管は2020年7月10日より施行されます。

どうしても協議がまとまらない場合

最後に相続人同士の仲が悪くて話し合いがまとまらない、または疎遠な相続人がいる、戸籍を調べたら知らない相続人がいて揉めそうという場合は弁護士に依頼して交渉を頼むか、家庭裁判所で調停の手続を行うというのも一つの方法です。

まとめ

遺産分割協議書は相続手続の重要な山場となります。

ここで失敗すると積み上げてきた全てのものが崩れてしまうことになりかねません。

書面ありきではなく相続人と連絡をとって話し合いをまとめてから書面を作り、その協議書には遺産をもれなく記載する、そのような手順を守ることで不要なトラブルを避けることができるでしょう。
(提供:相続サポートセンター