民事再生のメリット
民事再生の主なメリットは、以下の通りです。
経営陣を刷新せずに、事業を存続させられる
最も大きなメリットは、倒産を回避し、事業の存続、再建を目指せる点です。 また、民事再生では監督委員がいるものの、経営陣を刷新する必要はないため、経営権を維持したまま再建を図ることができます。
債務の圧縮と弁済期間の延長ができる
民事再生で再生計画が認可されると、債務の金額を大幅に圧縮するとともに、弁済期間も延長できます。 再生計画案における弁済期間は、最長で10年とされています(民事再生法155条3項)。
再生や事業継続に必要な資金・契約を維持できる
民事再生の申立てが金融機関に通知されると、通知後に口座に入金された預金と、金融機関の債権との相殺が禁止されます。そのため、手元に会社の再建や事業継続に必要な資金を維持しつつ、手続きを進めることができます。
民事再生のデメリット
民事再生を検討する上で注意しておきたい主なデメリットは、以下の通りです。
企業の社会的信用・ブランドイメージが低下する
民事再生は会社の再建を目指す手続きですが、倒産手続きであることに変わりはありません。 そのため、民事再生の手続きを開始することで、会社の社会的な信用性やブランドイメージの低下は避けられません。ダメージを最小限に抑えるために、後述のプレパッケージ型民事再生を活用する、という選択肢も考えられます。
担保による財産を回収される可能性がある
前述の通り、民事再生の申立てが金融機関に通知されると、預金や財産の相殺はできなくなります。しかし担保権つきの債権に関しては、権利行使が認められるため、会社の財産を担保にしていた場合は、財産を回収される可能性があります。担保権の行使を防ぐには、債権者との個別の交渉が必要です
債務免除課税や、手続きの費用が発生する
民事再生による債務の圧縮は、債務の一部免除とみなされます。そのため、債務の免除額によって債務免除課税が発生します。 再生計画を推進するには、税金が発生することも考慮しておかなければなりません。
また、手続きを進める中で裁判所の予納金(予め一括納付するお金)や、弁護士費用などが発生します。それぞれの金額は、民事再生の申立てを行う裁判所や弁護士によって異なります。
民事再生を行う3つの方法
民事再生を実行するには、主に3つの方法に分けられます。
①自力再建型
自力再建型はその名の通り、他社の力を借りることなく自社の企業努力で債務を返済し、再建を目指す基本的な方法です。
②スポンサー型
自力再建の対になるのが、外部から資金的援助を受けるスポンサー型です。他の企業や金融機関、ファンドなどがスポンサーとなり貸付、出資を行います。
民事再生の申立て後にスポンサーを選定する場合には、公平性を担保するために入札によって選定するのが一般的です。
一方、あらかじめスポンサーを決めておき、申立てと同時にスポンサーによる支援を発表する「プレパッケージ型」の方法もあります。この場合、スポンサー企業の信用性を背景に、申立て会社の社会的信用の低下を最小限に抑えられます。
ただしプレパッケージ型民事再生では、スポンサー企業を入札によらずに選定するケースが多いため、選定の経緯や資金額によっては公平性を欠くものとして、裁判所の認可を受けられない場合もあります。
③清算型
倒産手続きを行う企業が営む事業自体に価値がある場合には、破産によって事業を清算してしまうのではなく、「清算型の民事再生」によって事業を存続させる道方法があります。 清算型は、事業譲渡や会社分割などにより、事業を別の会社に移し、申立て会社を清算する手法です。
清算型の民事再生では、譲渡益を債務の返済に利用します。申立て会社が最終的に清算される点では破産手続きと共通していますが、事業自体は存続する点が、破産手続きとは異なります。
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