上司を敵に回さず評価を高めるには? 関係悪化の悪循環から抜け出す方法
(画像=ponta1414/stock.adobe.com)

(本記事は、岡田 洋介氏の著書『評価される人になる技術』=ぱる出版、2023年9月25日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

上司の苦手分野にこそチャンスあり

仕事柄、社員研修などで多くのビジネスパーソンと接する機会がありますが、上司への不満や愚痴を聞かないことはありません。かく言う私も、以前は不満や愚痴を言っていました。気の許せる同僚や友人の前だけで口にするのであれば、ストレス発散の1つとして有効かもしれません。不満や愚痴を言うことが全て悪いと言うつもりはありませんし、どうしても上司のことを好きになれない、嫌いだと感じることもわかります。

しかし、「上司を敵に回すのはもったいない」と言い切れます。あなたの評価者である上司を敵に回したとしても良いことは何一つありません。本章で何度も伝えているように、あなたは上司から贔屓にされる存在になる必要があります。応援される立場になることを目指す必要があります。敵に回った上司は、あなたを贔屓にすることもなければ、応援することもありません。上司との関係性の鍵は、あなたが握っています。まずは、あなたから距離を近づける必要があります。自ら距離を近づけてくれる上司もいますが、それでは上司任せというか、上司依存です。あなたには、どんな上司がきても評価されるようになってほしいと願っています。自ら近づくことができれば、応援したいと思ってもらいやすくなります。反面、上司の悪口や不満を言うと敵になりやすくなります。

ここで覚えておいてほしいのは、上司もひとりの人間だということです。苦手な分野やうまくできないこともたくさんあります。あなたの周りに、完璧だと思える人がどれくらいいるでしょうか。人は努力しないと粗探しをしてしまいます。自分が嫌だと思った部分は意識しなくても感じます。反面、良いところはその人に興味や関心を持ち、努力してじっくり探さないと見つからないと言われています。ましてや苦手意識があると、嫌な部分ばかりが目につきますし、新たな不満を見つけてしまいます。まさに悪循環です。

そこで、上司の良いところ探しをするのがオススメです。良いところを見つけられれば、人として上司を見ることができますし、良好な関係づくりのきっかけになります。

また、苦手分野のリストアップというアプローチも有効です。これはかなり強力なアプローチですし、実践がしやすいとよく言われます。

まずは、上司のダメなところをリストアップしてみましょう。そして、上司のダメな点を、そのまま上司の苦手分野であるという風に考え方を変えてみてください。「なぜ、うちの上司は○○ができないんだ」を「うちの上司○○が苦手なんだな」と置き換えるのです。できないことに焦点を当てると怒りの感情に発展しやすくなりますが、上司の苦手分野を受け入れると理解が深まり、不思議と上司の行動を許せるようになります。

次に、その苦手分野の中で自分がサポートできることは何かを考えます。苦手分野を自覚している人もいれば、自覚していない人もいます。上司はこれまでの頑張りを評価された結果、今のポジションについています。ですので、良いところは必ずあります。そして、強みと課題はセットです。弱みを克服するというのは、強みをなくすことに近く、そう簡単ではありません。そこで、あなたはその上司が持つ苦手分野の中で、自分の強みを発揮してサポートできるものがあるかどうかを探してみてください。

具体的なサポート例には以下のようなものがあります。

例)

上司が得意なこと: クリエイティブ、アイデアが豊富
上司が苦手なこと:順序立てて整理する、細かく整える
あなたがサポートできる面: 上司のアイデアを具体化する、順序立てて整理する

上司が得意なこと:戦略的、論理的思考
上司が苦手なこと:共感力、心の機微を感じ取る力
あなたがサポートできる面:対人関係で感情的な部分をフォローする

上司が得意なこと:共感力、人の心を感じ取る力
上司が苦手なこと:分析力、言語化
あなたがサポートできる面:中期的な戦略策定、上司が発した言葉を言語化する

強みの裏返しが苦手分野となることが多いため、あなたが上司と正反対の性格や仕事の進め方の場合には、その行動自体が上司をサポートする形になります。上司と対話を行う中で、上司が苦手としている面を自分がサポートしますと宣言すれば、上司にとってのあなたは必要不可欠な存在となります。単にできていないことに焦点を当てて不満を言うのではなく、サポートする姿勢に自分を転換させるだけで、あなたの存在価値がグッと高まります。

上司の苦手分野が自分の苦手分野と重複している場合は、他の苦手分野にも焦点を当て、相対的に自分ができることを見つけることも大切です。上司から頼みにくいことを代わりに同僚へ伝えるなど、部下だからこそできることもあります。自分は上司のどこをサポートできるだろうかという視点で接してみましょう。

ちなみに、上司の苦手分野が全く見つからない、不満がないという場合はラッキーです。上司の得意分野と苦手分野があなたのそれらと似通っているということなので、自ずとあなたは他者よりも評価されやすい存在となります。

評価される人になる技術
岡田 洋介
株式会社アクティベーションコンサルティング代表取締役
人事評価コンサルタント、経営人事コンサルタント、組織開発コーチ(日本で約200名のORSCC有資格者)

早稲田大学商学部卒業後、日本ブレーンセンター(現:エン・ジャパン)に入社。約100名の組織が1500名規模の一部上場企業に急成長するまで、様々な軋轢やトラブルを組織内部にて経験しながら、20年に渡りその成長を支える。在籍時は、経営人事のトップコンサルタントとして、管理職教育を含む研修実績は延べ400開催以上、人事評価に関しては延べ100社以上の指導を行う。
2018年に独立。1万枚以上の評価シートを実際に指導する中で、評価されている社員がやっていることを整理。さらに現在は、日本では200名しかいない組織開発コーチングの有資格者(ORSCC)としての活動も行い、「心理的安全性」「共感的な対話」「自分と向き合う勇気」をテーマにした研修やセッションも数多く開催している。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます