(本記事は、岡田 洋介氏の著書『評価される人になる技術』=ぱる出版、2023年9月25日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
人事評価への「間違った認識」があなたの評価を下げている
私は、人事評価コンサルタントとして、人事制度の構築や導入の支援をすることが仕事です。評価の調整会議のアドバイザーとして、数多くの企業の現場に立ち会ってきました。調整会議では上司のホンネが飛び交います。そこでわかったのは、いくらきちんと基準をつくっても、評価するのは人だということです。基準の解釈は上司次第です。会議でも、表面上は評価基準をもとに部下の評価根拠を説明します。でも結局、自分のために働く社員を引き上げようとしていることがわかります。つまり、「えこひいき」です。
この経験も含め、私は人事評価がどのように決まるのかを研究するようになりました。頑張っても評価されない人もいれば、頑張らなくても認められる人がいます。そして辿り着いたのが、「人事評価への間違った認識」の存在です。
例えば、「人事評価は公平であるべき」というのが、人事制度設計の基本的な考え方です。これ自体は間違っていませんし、公平でないのはたしかに嫌ですよね。でも、ここに大きな罠が隠されています。「人事評価は公平であるべき」とは、経営者や人事部の人が考えることだという点です。当たり前ですが、不公平だと社員のモチベーションは下がりますし、不満や離職につながります。組織を健全に運営するには、公平性は非常に大事です。だからこそ、人事制度を不公平にしたいという経営者や人事部はいませんし、私も制度を設計する際には、公平性の確保を必ずアドバイスします。
でも、あなたはこの認識で人事評価を捉えてはいけません。
実は「人事評価は公平であるべき」と考えていることが、あなたが認められない原因なのです。なぜそうなるかと言うと、そこには「人事評価はデジタルに行える」「評価のバラツキはなくせる」という思い込みが隠されているからです。
会社に限らず、何かを公平に評価する際には、やっていることが同じ種類である必要があります。例えば、体操やフィギュアスケートはともに採点競技です。審査には複数の審査員が必ずつきます。審査のプロが採点しても評価が分かれるためです。同じ競技においてでさえこの状況です。いわんやビジネスにおいては、同じ部署でもいろんな職種がありますし、同じ職種でもやっている仕事はまちまちです。この状況で、公平性を確保することが無理なのはおわかりでしょう。
ちなみに、公平性を求めすぎると、「他者との比較」をするようになります。そして、他者比較をすると、上司から嫌われます。もっと辛いのは、同僚からも嫌われるようになることです。「他部署の◯◯さんより評価が低いのはなぜですか?」「同僚の◯◯さんはなんで私より上なんですか?」と言っている社員と、あなたは一緒に働きたいでしょうか?なぜこの思考法が嫌われるかと言うと、他人を蹴落とす思考法だからです。あなたにとって大事なのは、他人を蹴落とすことではなく、“あなたの評価を上げる”ことです。
人事評価コンサルタント、経営人事コンサルタント、組織開発コーチ(日本で約200名のORSCC有資格者)
早稲田大学商学部卒業後、日本ブレーンセンター(現:エン・ジャパン)に入社。約100名の組織が1500名規模の一部上場企業に急成長するまで、様々な軋轢やトラブルを組織内部にて経験しながら、20年に渡りその成長を支える。在籍時は、経営人事のトップコンサルタントとして、管理職教育を含む研修実績は延べ400開催以上、人事評価に関しては延べ100社以上の指導を行う。
2018年に独立。1万枚以上の評価シートを実際に指導する中で、評価されている社員がやっていることを整理。さらに現在は、日本では200名しかいない組織開発コーチングの有資格者(ORSCC)としての活動も行い、「心理的安全性」「共感的な対話」「自分と向き合う勇気」をテーマにした研修やセッションも数多く開催している。
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